その9 セイジ視点、調子のよくなかった日
セイジ視点その2。
――夢を見た。
白い空間、天井が白かった。
私は硬い寝台に横たわっていた。消毒用のアルコールのにおいがする……ここは病室だろう。
もう少し――風邪と侮らなければ、他人に控えるよう言われた酒を止めていれば変わっていたのだろうか……? まだ、体は動く。私はどうにか右手を空を掴むように上げた。そして、手の甲を近づける。その
手は……筋張っていて皺がとても目立つ手だった。
最悪な気分で目を覚ました。
今まで入院など一度もしたはずがないと記憶しているんだけどな。健康診断以外で病院に行った記憶がないしね。そういえば、この世界に来る直前の記憶も健康診断だったなぁ。VR技術を使用するには、15歳以上であることと健康診断でVRを使用しても問題ないか検査を行い調べなければならない。面倒だけど、壊れかけのリゾート地よりもVRで再現された癒しの景色のほうが私は好きなんだ。
朝の習慣を開始する。顔を洗って。髭を剃って……途中で怪我をしてしまった。Sジョブの格闘家は自身の魔力を使用して活性化させて傷を治すことが出来るので使用しておこう。現実で考えたらすごく寿命削られてそう。背に届いている髪をいつも通り適当に括り銃の手入れを始める、こっちも少々ぎこちない、今日は調子悪いなぁ。いつもよりも何か違和感を感じる。
調子は悪いが日課をこなさないのも気持ち悪い。ということで私は1階へ降りた。
「おお、お早うセイジ」
「ああ、亭主お早う」
「うん? 今日は機嫌が良かったりするのか」
「いんや、逆に銚子悪いんだよね」
朝食の準備をしている宿屋の亭主に声をかけいつも通り外へ出る。今日の武器は戦鉤だ。ジョブという概念がなくなったこの世界だから、今まで貯め込んでいた武器は全部使えるように試しているんだ。どうやら1キャラ目の姿をしているけど、1アカウントの知識や経験全部入りみたいだ。最近アイテムボックスの整理中に2キャラ目から4キャラ目まで変更できることを知ったんだ。カーラにバレて2キャラ目の状態でギルド証を見たらこんな表記になってた。
――――――――
カオリン(セイジ)
種族:異界種
ランク:橙
――――――――
直近討伐履歴:
なし
――――――――
どうやら、レベルがセイジよりも高かったせいかランクも高いらしい。ゲームだと確かこうだったはず。
――――――――
カオリン
種族:異界種
Mジョブ:軽剣士
Sジョブ:ガンナー
レベル:28
体力 :★★☆☆☆
魔力 :★☆☆☆☆
腕力 :★★☆☆☆
器用さ :★★★★☆
素早さ :★★★★★
守備 :★★☆☆☆
魔力効率:★★★☆☆
――――――――
成長は素早さ特化にしてる、紙装甲でもいいからとにかく快適さ重視!
ついでに3キャラ目も調べてみた。
――――――――
セイジ2(セイジ)
種族:異界種
ランク:黄
――――――――
直近討伐履歴:
なし
――――――――
3キャラ目は見た目のデータも全く同じで、名前は同名にするとエラー出ちゃうから適当につけた。ゲームだと表記はこうなる。
――――――――
セイジ2
種族:異界種
Mジョブ:マジックソルジャー(*)
Sジョブ:ガンナー
レベル:47
体力 :★☆☆☆☆
魔力 :★★★★☆
腕力 :★☆☆☆☆
器用さ :★★★☆☆
素早さ :★★★★☆
守備 :★☆☆☆☆
魔力効率:★★★★★
――――――――
ジョブの右にある変な*マークは中級職の証だ。レベル30で下級職から中級職に上がるんだ。下級職は『魔法士』で分岐はない。上級職なら分岐あるらしいんだけどね。メインキャラが一番弱いけど戦い向きじゃないから仕方ないよね。1パーティに1人は絶対必要な魔法職とザ☆地雷じゃね。
……それにしても、今日は調子が悪い。体は思った通りに動いてる、なのにいつも以上に違和感があるんだ。こういう時は二度寝しよう! 休日は1日8時間しか起きていない時とかあったし。私は朝食はいらないと亭主に伝え部屋に戻ることにしたんだ。
自分で書いてて「誰?」と思った。ちゃんとセイジ視点だよ。




