全ての始まり
週一ぐらい書いていく予定です。
そして第一話はまぁ見なくても良いかなと。
VRMMO
これは新世代体感型ゲーム機と呼ばれるGHD(栄光、英雄、夢)の発売から十年前、とあるシステムの発見に世界中が湧き上がる15年前の話。
欧州のとある深い森、古く大きな邸宅に二人の人影があった。男と女、共に20代後半で机を挟んで向かい合い、ひと時の他愛ない談笑を行っていた。
「・・・という訳で石の完成は近いわよ。素材さえあれば後10年はいらないわ」
「それはすごいな。こちらは基礎理論がようやく完成させたところだ。先は長い」
「それでもすごいじゃない、私も正直素材云々でまだまだ時間はかかるもの」
この会話が何よりも待ち望み、楽しんでいると声音からハッキリとわかる女性。名をエリザベス・ウル・カラブラスカ。
長い栗色の髪を持ち、スタイルも良く身長も180を超えるモデル体型であった。
「そうか、そうだな。時間がかかり、かかりすぎるのがな」
事務的に淡々と喋る男性、名を土御門・輝義。身長は170に満たず、東洋人独特の薄い顔立ちと痩身で殴れば簡単に折れてしまいそうな体躯。この場を百人が目撃し二人を見比べれば、誰もが釣り合わないと思う男であった。
「いいじゃない。時間かけて研究するのは大好きよ」
「そうか、その考えもまた是であり、共感はしない。成し遂げるには人生とはあまりにも短く、脆い」
「前から思っていたけど貴方日本人でしょ?有終の美とか散る美しさとか勤勉の美徳とかそういうのに対する理解は無いの?」
「日本人にも色々いる、君の目の前にいる男は効率主義の権化だ」
「何よ、少しくらい分かろうとしてくれないの?」
女、エリザベスは蠱惑的に瞳を緩めて微笑むが男は首を横に振るだけ。その態度に溜息をつきながらエリザべスはなおも男、土御門に目線を送る。
エリザベスは考える。何故、この男は大抵の男が理性を溶かして従順になる自分の微笑みを前にしてこうなのか。
女慣れしている?それは否。
土御門ほど研究一筋で女気がない男も珍しいし、そもそも私はその手の男を手玉に取るのは得意中の得意だ。
男色?それも違う。
土御門は男の友人すらいないし、そもそも土御門は私に引かれている。女に興味が無いなんてことは無い。ならばそう、やはり
『対等』
この関係が心地よくて、エリザベスが土御門に引かれる要因なのだ。
「君の賢者の石に対する熱意には共感しよう。素晴らしい」
「ありがとう、お世辞でも嬉しいわ」
「お世辞ではないのだがな」
「それでも、議会の老人達のみたいな事を言うのはやめてよ」
「あれと同列になるのは不快だ、前言をすべて撤回しよう」
「…ぶれないというのも困りものね。褒めた事まで無かった事しないでよ」
また溜息をひとつ。だがこの時間がエリザベスには何よりも楽しい時間なのだ。何より掛け買いの無い時間。目の前の紅茶に口を付け、人生で数えるほどしかない心から楽しめる時間を満喫する。
突然だが、エリザベス・ウル・カラブラスカは現代に生きる魔術師である。それも並大抵ではない。
魔術全盛期とうたわれる魔女狩りの始まる少し前、15世紀初頭にいた伝説的な魔術師達すら及ばないだろう位階に到達した魔術師である。
何の因果かこの魔術が衰退しきりまともに魔術を行使できる人間が60年近く生まれていない現代に生まれてしまった事以外、一切非の打ちどころがない魔術師であった。
そのエリザベス・ウル・カラブラスカと『対等』な土御門・輝明。
彼もまた同じ境遇で、同じ位階に到達してしまった陰陽師であった。そして今日の主催者はその男であり、そしてこんな時間を楽しむような感性を持っていないのも彼女は知っていた。
「で、私を呼んだ要件はなに?楽しい談笑がしたかっただけというのでも、別にいいのだけど、違うでしょ?」
「是なり」
「ではいったい?」
「……魔術は、陰陽術は、もはや滅びる以外ない」
「そうね、それには同意するわ」
エリザベスは頷く。彼女も現状を理解している、我々に未来がない事ぐらい。
「一般人、人が作る文明とはかくも凄まじい。私が転移でここから日本まで移動するためには多大な代償と準備期間がいる。集団転移などすれば十中八九死ぬだろう。にもかかわらず何の魔術的素養のない整備士達が飛ばすジャンボジェットの数々は、日に数万人という人間を遠距離まで飛ばす。自動車しかり、鉄道しかり、船舶もしかり」
「土御門、それは」
エリザベスが首を振りながら、その独白じみた言葉を遮ろうとするが、さらに土御門言葉が重なり続ける。
「そうだ。比べる相手が違う、そも比べる事が間違いなのだ。文明とは、築き上げられた文明とはかくも凄まじく、同時に理不尽なまでの暴力をふるう。いや文明は暴力を振るわない、ただ単純に我々が被害者面しているだけで、文明はただ築かれているだけにすぎん。まともに対抗する事すら叶わず、龍しかり、吸血王しかり、蜘蛛しかり。身を隠して無様に許しを請うが如く隠れねばまともに生きる事すら叶わん。前途の超越者、支配者と呼ばれた者たちですら文明には歯の立てようがない。不甲斐なさや不快感を覚える前に虚無感しか抱けない、何故このような時代に生まれてしまったのだ」
「土御門、」
「なぜこのような時代に生まれてしまったのだ、エリザベス・ウル・カラブラスカ。貴様もだ、せめてまともな才が無ければ諦められたであろうが、こうまで才があるとただただ悔しく、同時に虚しく、そして挑みたくなる。そう思わんか?エリザベス・ウル・カラブラスカ?」
「土御門、貴方まさか」
「エリザベス・ウル・カラブラスカ、もう一度聞く。突然ですまないが自分は今、相応の覚悟をもって君と相対している。挑まざるを得ないか否かだ。私は君と共に挑みたいと考えている」
エリザベスは突然の事で一瞬、ほんの数瞬思考が止まるが、彼女は優秀であり同時に現実的な物の見方が出来る女であった。再起動も早く、正論を述べる。
「無理よ土御門。文明とは挑む挑まない以前の相手であり、私たちは弱すぎる。それに議会の老人達も絶対に頷かないわ。下手したら殺しに来るわよ」
そう、それが現実であり、同時にこの会話の終着点であった。筈であった。目の前の男は既にそういう段階を等に超えており、つまり
「議会の老人か。なぁ、エリザベス、あいつらはあれ程文明に愚痴を垂れ流していたに関わらず、文明の象徴ともいえるカネをこれでもかという位に蓄えていたぞ。まったく俺たちをバカにしているとしか思えん。そう思わんかエリザベス?まぁもはや意思を持たぬ有機物であるがな」
「議会の老人達を、やったの?」
「貴様が自分の力量で出来ないと思うか?出来るだろう?貴様に出来て俺に出来ないと思うか?ただここに生まれた時から居たからこそ、してはいけないと、出来ないと思い込んでいただけだ」
「それは…土御門、」
否定はできない。だがもう否定云々ではない。土御門は人として、魔術師として道から逸れている。人として守るべき規範から逸脱している。
咄嗟に自己防衛の術式を展開し、同時に気付く。
目の前の男は何の防御礼装や術式を展開していないことに。
相手は自分に唯一匹敵する男である。私が武力を構えた事に気付かない男ではない。なのに何も構えていないのだ。
「土御門、」
私はもう土御門の名前を呼ぶことしか出来ていない。彼は今、命をかけて対話に臨んでいるのに…
「貴様に殺されるのならばそれはそれで良い。文明や老人達に殺されるに比べたら、十分に納得できる最後だ」
それから五分程、私はピクリとも動けなかった。土御門も一切身動きせず、ただ私を見ているだけ。その眼は文明という相対すら不可能な相手への挑戦する熱意と文明に対する虚無感に満ち溢れていた。
「私に、何をさせる気?」
結局、根負けした私が口を開く。
「賢者の石の量産化、最低でも一億程」
その土御門の言葉に私は再度絶句した。
この男は一体何を言っているのだ。賢者の石とは魔術師至高の一品、唯一の存在であるべき物だ。それを一山いくらの大量生産だなんて。
「無理よ」
「完全な賢者の石を量産しろという訳では無い。劣化型で尚且つ特化型で良い」
「何に対して特化させる気?」
「異世界への精神転移、および異世界でのアバター(化身)作成のみに特化させる」
「はぁ?」
もう恥や外聞も関係なく聞き返してしまう。今こいつはなんて言った、異世界へ精神を転移させ、さらにアバターの作成。それのみの石を大量生産?何をしようとしているのだ。
「ある種のゲーム機を作成しようと考えている。俺が生涯をかけて臨んでいる異次元への突破、侵入を全人類が気軽に体験できるよう、本来なら俺たちが掴むはずであった栄光、英雄、夢を。それらを手土産に文明に対して殴り込みを行う」
「そんな事してどうするのよ」
「文明に挑むのだ。異世界への転移が限定的とはいえありふれた物になる社会。このまま科学技術が進化していってもなお、永遠に来ないであろう事象を全人類が気軽に行える。土御門・輝明の名とエリザベス・ウル・カラブラスカの名を文明に刻み込むのだよ」
「無、無理よ。そんな事文明が受け入れるはずがない」
「過ぎたる化学は魔術の如し。この格言はまさしく正しい。だがその逆もまた真なり。過ぎたる魔術は科学の如し。賢者の石を一つの演算記憶装置の如く科学的に実証してしまえばいい。科学で分からないことは分からないで通してしまえばいい、後々誰かが辻褄を合わせる理論を公表するだろう。人類は未だに飛行機が空を飛ぶ理屈がわかっていないのだ、なのに世界には飛行機が飛び交っている。分からなくても文明は、それが有益であれば受け入れる」
「賢者の石を、科学的に実証するの?」
「辻褄を合わせる為に、理論をこねくりまわすのだ。その石に俺がゲーム機足るように刻印する。いや刻印する技術を作り上げ量産する。この俺が作り上げた異次元理論を安全性も踏まえて量産する、嫌になるほどやりたくない作業だ」
土御門・輝明が語る展望はあまりにも野蛮で、下卑で、エリザベス・ウル・カラブラスカの誇りを切り裂くもので、それは同時に土御門・輝明の誇りも切り裂いているものであって、魅力は一切無いけれども熱病にうなされるが如く凶悪なエネルギーに満ち溢れていた。
「カネなら議会の老人共がため込んでいた分がある。全部合わせれば2000億円近くの大金だ。お前の研究もこれで加速するだろうし、俺の方も早くなる。十年を目安にやるぞ、エリザベス・ウル・カラブラスカ」
その凶悪な熱量に私は抗えないでいた、いや、きっと何処かでこういう展開に憧れ夢想していたのかもしれない。エリザベス・ウル・カラブラスカもまた現状に諦念し虚無感を抱き、同時に文明に挑みたいと考えていた。
結局エリザベス・ウル・カラブラスカと土御門・輝明の違いは遅いか早いかの違いだけなのだろう。いや実際は少し違うのだが、それをこの場で表に出せる女でも無かった。
その日を境にエリザベス・ウル・カラブラスカの研究は劣化特化型賢者の石の量産にシフトし、土御門・輝明の研究は安全性を考慮した異世界への大量転移と石をゲーム機足り得るよう調整する事になっていくのであった。
五年後
30を超えた男女が二人、机を挟み書類を片手に向かい合っていた。
「石の量産は細かな調整が必要だけどほぼ問題ないわ、後は量産に必要な設備と資材と人員の確保よ」
「こちらも安全性にいまだ疑問は残るも、異次元への精神体における突入とアバターの構成はほぼ十全に行える。後は異次元におけるアバター性能の設定とシステム周りの刻印方法の調整だな。もっともあちらの世界に合わせるアバターである以上、魔力や異能をスキルというわかりやすい形に当てはめ、アバターの成長は経験値に合わせてポイントの割り振りという形で伸ばしてやればいい。現状の試作でもほぼ問題無かろう」
「早いのね、会社としての表立った顔はどうなっているの?」
「それも先月無事発足させた。もっともまだ無名のゲーム会社という形だがな」
「だったら、その会社名義で早速8人ほど雇って欲しい人材がいるの」
渡された資料を見ると何処かで見たような顔ぶれのが8人。うむ、なるほど、魔術を使えない程に才が無い、だが魔術師の家系に生まれた若者、それも性格が荒んでいないの者ばかりか。良い人選だ。
「雇おう、月収は日本円で25万円+出来高払いだ」
「さっそくそう伝えておくわ、こちらで研修を3か月行う間に大きな工房の用意を頼むわね」
「工房では無い、工場だ。大掛かりに隠れずに堂々と量産するのだ」
「…そうか、そうだったわね。ごめんなさい」
「議会の老人達の遺産がまだ1000億円以上ある、石の工場は任せろ」
エリザベスはまだ慣れていないのか、まぁ良い。この女は聡く優秀だ。この世に自分より優れたモノを持つ者は多くいるが、尊敬できる分野で自分より優れたモノを持つ者は限られる。そしてこの女はその一人だ。
「でもまさか、まさか本当に賢者の石を量産、それも文明の元で量産できるとは思っても見なかったわ」
「過ぎたる魔術は科学の如しだ、勝算は高かった」
「でもまさかよ。まさかあれほど憎んだ科学の本場で、学会に適当に捏ね上げた科学的な理論を元にした賢者の石の雛形で、石の存在を認めさせれたとは未だに信じられないわ。科学雑誌に私の顔写真と共に石の雛形が写るのだもの、笑っちゃうわね」
「それが科学であり文明というものだ。現在の学者では5人と理解できていない超理論、アインシュタインの再来とうたわれる。そうやって難しい、でも科学の先にあると分かれば人は途端に安心するものだ」
「それはそうなんだろうけど、でも魔力を適当に『第四振動』なんて名付けて、賢者の石は『第四振動増幅複合重金属』。それにつけた魔力刻印は『第四振動回路』なんて名称なんだから、笑わないで学会の老人達の相手をするのに骨が折れたわ。というかまさか、ここで議会の老人達へのご機嫌取りの技術が生きるとは思いもよらなかったわ」
「俺もまさか不要と思っていた帝王学がこのような場で生きるとは思いもよらなかったな。何が平和利用の為といって軍に来いだ。平和利用の為ならば、なおさらゲーム機で問題ないだろう」
「単純に自己利益と保身しか考えられないお猿さんなのよね。自分の立場が危ないと思えば遮二無二否定ばっかして耳を貸さない。新しい技術は金のなる木にしか見えなくて、それを独占する私たちが許せない。そんなのばっかし、人の本質の一面ね」
そうやって何故か楽しそうに俺の分の報告書にエリザベスは目を通していく。
「へー、やっぱり色んな企業、政府、軍、宗教、テロリストからのお誘いがあるのね。そして、それを全部手玉に取るアンタもなかなかの帝王学を収めているのね。普段のコミュニケーション不足からは想像もつかないわ。海千山千の政治家やコールガール相手に、対話で切り抜けるんだもん」
「今までは必要なかったからな。現状も必要最低限しか使う気もない」
「そう、勿体無い。その対話技能がホントに勿体無い」
帝王学などといった無駄の塊のような技術なんて本来頼りたくも無かったのだが、そうでもしないと身動きできないというのが完全に誤算であった。まったくもって芸は身を助けるとは含蓄ある言葉だ。
「ねぇ土御門?突然だけど最後の確認をしていいかな?土御門・輝明」
この言葉にほんの少し浮ついていた気分が急に引き締まる。何故か、5年前に自分が、土御門・輝明がエリザベス・ウル・カラブラスカをこの道に引き込んだ時の口調にそっくりだからだ。つまり覚悟がいる。
大きく息を吸い、吐く。ここからの返答には今まで培った人生と残りの人生を乗せよう。
「いいぞ、エリザベス・ウル・カラブラスカ。君には問う資格も権利も意思もある。拒むつもりは微塵もない」
「あーその土御門、別にそこまで命がけで会話を求めている訳じゃないんだけど、いや違うか。…違わないけど、何と言えばいいのかな、…貴方のブレなさがホントに腹ただしいはわ。というか結構な会話が出来るならそうして欲しかったわ、ホント」
なんだこれは、あの聡明な、打てば響くような返事をするエリザベス・ウル・カラブラスカがこんなに詰まるとはいったい何事か?心当たりが全くない。
「私は貴方の意思を疑った訳では無い。私利私欲に走り文明に名を残そうとする共犯者である事は重々承知だし、そのために残りの人生をすべて捧げている事も理解しているつもり。でも理解しても理性と感情は似て非なるモノで全くの別物なの。だから少しだけ聞いて、返事はいらないわ。いや違う。返事は最低限で良い、明確な返事を聞くと私は壊れるから、何もないのは耐えられないか」
そう言われて頷く。返事が不要というならそうしよう。
「私も確かに五年以上前から虚無感と凶悪な熱量に取りつかれていたわ。文明に挑戦することだってこれとは全く別の方法で200を超える方法を常に想定していたし、7種ほど個人で出来る範囲とはいえ準備もしていた。でも行動に移すつもりは微塵も無かった。何故だと思う?土御門・輝明。答えはあまりにも単純で明快で馬鹿馬鹿しくて哀れな乙女心丸出しでどうしようもなく無様なモノ。私はね土御門・輝明、滅びの運命は嫌ではあったけど最悪では無かったの。なにせあのまま何も無ければ、当世随一の技量を持つ貴方が私の夫になって魔術を盛り返すという名目で子供を作り育てるだけの人生に成っていたいた筈だから。どうしようもない魔術師として誇りもただの肉袋になるような人生、それを心底望んでしまえる女だったのよ。分かる?土御門・輝明。私にとっての最悪とは20年近く無駄に生きてようやく出会えた『対等』と離別する事。それだけが最悪であり、とどのつまり土御門・輝明の目の前の女、エリザベス・ウル・カラブラスカは土御門・輝明を愛しているの」
「…そうか」
「愛しているの」
「そうか」
「愛しているの」
「そうか」
「この上なく、際限なく愛しているの」
「そうか」
「貴方が望む事なら何でも出来るほどに、愛しているの」
「そうか」
「挑戦以外、愛も何もなくなってしまっている貴方を、愛しているの」
「そうか」
「受け入れてくれないことは知っているわ、それでも愛しているの」
「そうか」
「救われないのは知っているのわ、それでも愛しているの」
「そうか」
「愛しているの」
「そうか」
「愛しているの」
「そうか」
「……文明への挑戦は、止められないの?」
「止まらん」
「知ってた、それでも愛しているの」
「そうか」
「今回の定例会はこれでおしまいね、次はいつも通り3か月後に、それまでに工
場の方よろしくね。後できれば石の原料の調達も目途つけといて。この三か月はちょっと教育だけで動けそうにないから」
「そうか」
「じゃあね、土御門。それでも愛してるわ」
「そうか」
女は颯爽と出ていき邸宅には男が一人、瞑目しているだけであった。