愛していたのは……
私がクスクスと笑っている顔を見て、呆然と立ち尽くすユーリさん。
あら? どうしたのかしらと考えていれば、ユーリさんの口は僅かに動き声を出さずに確かにこう言ったの。
『く、れ、は……?』
私はその口の動きにドキリと胸が高鳴ったわ、どうして……前世でさえも両親以外では誰も知り得ないその名前を……ユーリさんが知っているの?
と、私は動揺を隠せなかった。……どうして、その名前を知っているの? と脳内ではあまりの戸惑いのあまり、その言葉以外は何一つ単語を思い出すことが出来なくなってしまった。
私は何も考えることが出来ず、硬直していると……今まで呆然と立ち尽くしていたユーリさんは駆け足で近寄った後、包み込むように抱きしめられた。
何故、私はユーリさんに抱きしめられているの? と考えながらも、忘れるはずもない“彼”の温もりに一筋の涙が片目から流れてくると、次から次へと涙はポロポロと流れてくる。
そんな私に対して、
「……会いたかった。もし会えたのなら今度は言おうと思ってた。……、愛してるよ。ずっとずっと君だけを想っていた」
“彼”であったユーリさんは私にそう囁いた。そんな言葉に私は、静かにゆっくりと……彼の肩に腕を回し抱きついた。
愛していたのは……私だけじゃなかった。一方通行な想いだと思ってた、だけどちゃんと……“彼”に愛されていたんだね。
と、考えながら私は、
「私も……ずっとずっと前から貴方だけを想い、貴方だけを愛しています」
私は愛想笑いじゃない、心からの笑みを浮かべながらそう言った。
そんな私達にユヅキくんは魔法で、祝福をくれた。……“彼”に愛されていることが勿論一番の幸せだけど、現世ではこの恋が誰かに祝福されているも私にとっては幸せなこと。
と、ユーリさんに抱きしめられながら私はそう考えていたのだった。