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魂は流転する、私はそう信じている。
魂は時間を超越する、私はその事を知った。
魂は世界を超える、私はそれを体験した。
魂は引かれ合う、私はそれを……信じたい。
「真理っ!しっかりしろ!マリィ!」
お兄ちゃん、何で必死な顔をしているの?さっきまで、久しぶりの一緒の買い物だって笑っていたのに。ほら、周りの通る人たちも変な顔をして見てる、恥ずかしいよ。
いくらまだ、14歳だからってもう中学2年生なんだからね?
「タ、カ。おにぃ……ちゃ、ん。恥ず……ぃよ」
おかしいな、上手く声が出ない。それに、体が重いし。そう思いながら、4歳と齢が離れている兄の様子を見つめる。
「誰か救急車!お願いしますっ!真理!?大丈夫だからな!」
「酷ぃ!あの車当たったの分ってて逃げてったわよ!」
「兄ちゃん、救急車呼んだぞ!」
ホラ、お兄ちゃんが騒ぐから、周りの人もOLさんも一緒に騒ぎ出しちゃったじゃない。あーぁ、せっかくの兄妹の土曜日デートが台無し。
お兄ちゃん、彼女も居なくて暇そうにしてたから、久しぶりに映画に誘ったのに。それに進路もどうするか迷ってたんでしょ?お母さん達に相談しづらくても話くらいは聞けるかなって妹心に思ってたんだけどな。
「もぅ、みんな、可笑し、す、ぎ」
「喋らなくて良い!!良いから!」
「なっ……」
何よそれ!って兄を怒ろうとしても、まともに声も出せなくなっていた。この時点で、さすがに私も何かおかしい事に気付く。必死に私を抱えている?兄。心配そうに見つめる周囲の視線は私を見ていた。それに、思う様に動かない身体、先程から眠くさえなってきていた。
「眠ぃ……おにぃ……」
「真理!寝ちゃだめだ!真理っ!救急車はまだですかっ!?」
「路地でわからないのかもしれない!ちょっと大通りまで行ってみる!」
見ていたおじさんが行ってくれたみたいだが、もうほとんど視界がかすんでお兄ちゃんの顔さえはっきりと見えない。あぁ、眠たいよ。良いよね?寝てもお兄ちゃんならおぶって運んでくれるよね?
「目を開けて!真理っ!寝ちゃだめだ!」
良いじゃん、後はお願いねお兄ちゃん。私は我慢せず眠気に全てを任せる。
「真理!目を開けてくれ!駄目だ!真理!……死なないでくれぇ!!!」
意識が暗闇に落ちていく中、サイレンの音と兄いちゃんの声だけが最後まで聞こえていた




