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「ユキアお姉ちゃん、タカお兄ちゃんは?」
ダリアは心配そうな気持ちを含む小声で聞いてくる。ああ、そうだった。ダリアたち双子の父親は、昔アロテアからの帰りに不幸な事故で亡くなったと聞いている。きっと私たちとタカさんが一緒に居ない事に気づいたのだろう。ダルもダリアの不安な声を聞くと、夢中な鷹の木籠から視線を向ける。
「タモトさんは、アロテアの街で少しやることがあって私達だけ先に帰って来たの」
「そうなんだ・・・・・・帰って、来るんだよね?」
「うん、あと5日くらいで仕事が終わったら帰ってくるって」
「わかった」
ダリアの隣に座るサニーもサオや双子の父親の事は知っているのだろうか、ダリアを優しく見ながら肩を抱いていた。いつの間に、これほど仲が良くなったのかサニーと劣らず兄弟や姉妹と見間違うほど打ち解けていた。
「サニーさんたちは手伝いをしていたんですか?」
「そうだよ。主に、食事の配達を回ってきて帰ってきたところさ」
「なあ、ユキア姉ちゃん。この鳥どうしたんだ?」
「タカさんが任された仕事に必要な大切な鳥よ。村の物だから木籠から出さないでね」
「そっか、誰かへお土産かと思った。飛んでるのは見れないのか、残念」
ダルは少なからずガッカリとした表情で、木籠の中の鷹を見つめていた。きっと、飛んでいる所を見たかったのだろう。それと違って、ダリアは少し怖いのか鷹が自分の方に顔を向けると「んっ」と表情が強張っているのがわかる。
「サオは、自警団の方が忙しいのかしら?」
「姉ちゃんは、土砂で埋まったりした家から使えるものは無いか他の自警団員と探してる」
「いつも夕方には戻ってくるよ」
サニーがダルの言葉を補ってくれる。やはり皆まだまだ忙しい様子だ。落ち着くまでどのくらい日にちが掛かるだろうか。早めに村長さんと相談して、アロテアのギルドに人員の追加依頼を頼みたい思いに駆られてしまう。
「ユキアさん、そういえば。アロテアに向かうとき商人を助けてくれたそうで、治療が早かったから麻痺も残らなそうで助かったよ。私の知り合いだったんだ」
「そうなんですか、無事村に着けれて良かったです。アロテア側で別れたので、一緒に戻ってくるわけにもいかず、大丈夫とは言われたんですが心配していたんです」
「私と同じで、ユリアさんに治療してもらって傷はすっかり良くなっているよ。大事をとってまだ歩くのは室内だけに限られているみたいだけれど」
商人たちとサニーが知り合いという経緯や理由は想像もつかなかったが、無事回復に向かっている事を聞くと安心してしまう。
「あともうひとつ、村に帰ってくる時に他の旅人や商人は見かけましたか?」
「いえ?村に帰る路には私たちだけでしたけれど?」
「そうですか・・・・・・あっ、気にしないで」
サニーには他の知り合いや商人達でも居るのだろうか。それだけ聞くと、普通の笑顔をダリアや私たちに向ける。しかし、私は見てしまった、考える表情の中に悲しみを秘めた瞳があったことに。
そして、3日後、村が待っていたギルドからの馬車が到着し、20人の男たちを運んできた




