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魔陣の織り手:Magical Weaver   作者: 永久 トワ
召喚編
19/137

18

 時はキイア村がゴブリンに襲撃された当日へと戻る。場所は、キイア村の東、街道で結ばれ旅人でも2日は掛からない距離にあるアロテアと言う町の入り口だった。まだ周囲は夜明けのため薄暗く、キイア村へと続く西側の出口には商人の格好をした5人の姿しかいなかった。入り口を固める門番からは、もう少ししたら開放される門と、その後に町へ入る順番を待っている商人という認識しかないだろう。しかし、商人風のその者たちの眼光は周囲への注意を怠らず、一人の大柄な主人らしき男性を中心に話しているようだった。


「まだ見つけれねぇのか!」

「すみやせん。2日間、雨で足跡が残ると思い周囲を探したんですが、どうも、亜人が森をさまよっていた様で東も西も娘一人の痕跡を探すのはとても無理で・・・。」

「くそ!言い訳は良いんだよ!東に向かったのを見たって、情報があったろうが!」

「すみやせん・・・。」

「町の冒険者ギルドにアジトの場所や、今後の襲撃予定をチクられたら厄介だ。お前ぇら、このまま町に入って情報集めて来い。サニーを見つけれなくても、情報がばれてたら何かしらギルドは動くだろ。」

「へい・・・。」

「くそ!これからだって時に・・。俺は新しいアジトの様子を見てくる。ロイド!お前は、キイア村に送っていた手下と連絡をつけろ。」

「わかりました。」


 ロイドといわれた男は大柄な男性の左側に立ち。隣の体格のいい男から見ると、細身で事務仕事が向いているような体格である。その男は、自分のやるべきことを聞くと集団より離れ、商人の荷物を運んできたように装っている馬から荷を解き始める。しかし、荷を解く動作をしながら、まだ苛立ちを抑えきれない大柄の男の動きを視界に入れながら作業を進めていた。



「お嬢は、うまく逃げれたようだな・・。にしても、ガールはまだ諦めそうにないか。」


 自分は、今まで盗賊団の中でNo4の立ち位置にいた。盗賊活動の襲撃で主戦力であるガールとは異なり、今まで襲撃先の情報を集め盗賊の活動を行いやすいように支援していたのだ。今現在、サニーを逃がしたのがNo3とNo4である自分 だと言う事はばれてはいない。No3であるタロスという男は、現在新しいアジトへと移る準備や仕切り役として残っている。


「じゃあ、お前ぇら、2日したら一度アジトに戻って来い。サニーを見つけても手を出すなよ。これ以上逃げられたら追うことができねぇ。」

「「「わかりやした。」」」


 離れて話す4人の話し声が門番に聞こえてないか心配になりチラッと視線を送ったが、こちらにはまったく気を向けてない様子だ。きっと商談の手順でも話していると勘違いしているんだろう。部下を怒っているとしか見えてないのかも知れない。それにしても、2日か・・・あまり時間は無さそうだった。No3に東のアロテアに向かったとガールに偽りを報告させたのは自分である。何とか逃げる時間は稼げたが、これ以上偽るのは不自然に辻褄の合わないところが出てくるだろう。

 今からキイア村に向かうとしても、なにせサニー嬢の居場所を自分も把握できておらず、気がのらないにしても村の襲撃の準備に、自分の手下は潜り込ませていたのである。それでも、村を襲うと決めた時のガールの行動は素早いはずだった。


「じゃあ、頭領かしら。あっしは、キイア村に向かいやす。」

「あぁ、任せた。」


 荷解きした馬を引き、ガールへ一声かけた後、馬にまたがりキイア村のほうへ歩を進める。仮にも商人に偽っているので、全速力で駆けることはできない。さりげなく、キイア村に商いに行く様子に見えるように行動するのだった。

 自分に与えられた余裕な時間はそう十分ではない。怪しまれない程の時間を稼いでも3日間位だろう。その間に運がよければサニーを見つけ、手下の情報がガールにそのまま伝え襲撃が不利だと思わせるのは難題である。そして、まだ自分自身の心の中にも、今までの用に義賊の様な活動に盗賊の経済的に限界を感じていた反面、人の命を秤に掛けながら稼ぐ盗賊にならなければいけない思いとの葛藤があり。妹のような思っていたサニーを助けたい反面、仲間を裏切れ切れない思いが残っていた。

 まだ、振り切れない思いを抱いたまま、まず自分にできることをやるだけと思うことにする。後ろを振り返り、ガール達や門番から自分の姿が視界から離れたのを確認し、全速力で馬をキイア村へと向ける為、馬に声をかけるのだった。


 しかし、幸運にもロイドは思うよりも早く、サニーの消息とキイア村の現状を知ることとなる。偶然にもゴブリン襲撃の前に、村を逃げ出した盗賊の部下クルトと街道で会う事となるのであった。


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