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魔陣の織り手:Magical Weaver   作者: 永久 トワ
運命の邂逅編
128/137

9

『ミレイ?さっきのは何だったんだ?』

『……』

『ミレイ?聞こえてないのか……』


 まだアリシアの治療のため魔力切れから起きたばかりであり、ミレイも会話が出来る程に調子が戻っていないのかもしれないと納得した。

 魔力切れの脱力もそう何回も経験した訳では無い。いつもは寝た後は一定の魔力の感じは戻っていたからだった。

 それにしても、先ほどの声は、ミレイに出会った時に感じた魔力よりも一方的な強い思念の言葉だった。

 一瞬、ミレイの様な精霊が近くに居るのか?と考えたが、目の見えないというレーネが苦痛を感じる程の一方的な思念だったようだ。

 何か雰囲気が違う事からミレイに確認したかったのだが、やはり魔力を使いきった状態では無理な様子だった。


「シスさん、どうしたのかしら。何か様子がおかしいわ」

「そのようですね」

「シス殿にはクルーガー殿が村の周囲を調べる様に言ったはずですが、報告に来たにしては様子が……」


 ココのいうクルーガー殿?という言葉に、一瞬誰だろうと感じたが、すぐにクルガー団長で有る事に気付く。間違って覚えたのか?それとも、やや発音しにくいだけだろうか?


「麻、マリーナさん。自分が聞いてきましょうか?すこし、先ほどの声の事も気になってクルガー団長へ伝えたいこともありますし」

「え?あっ、はい。私達は妹も居ますし、ここに居る様に言われていますので」


 なるほど、やはりクルガー団長達の今回の本業(部隊)がらみの要人は彼女達に関係した案件なのだろう。

 すこし気怠さと飛竜の旅路から疲労感はあるものの、歩く分には支障ない様子から宿の一室を出て階段を降りていく。

 カウンターに居た宿屋の主人は、部屋に居る様に言われたのか、すでにカウンターは誰も居なかった。確かに、部屋は団員が借りており満室であり、特に仕事といっても依頼されて行う分には、カウンターに長時間居る必要はないのだろう。


「クルガーさん!どうしたんですか?」

「ん?タモト…君、大丈夫なのか?先程部屋には伝えに言ったはずだが、ゾンビメーカーが出たらしい、シスもそれにやられたのか?」


 団員3人とクルガーの他に、彼らに囲まれるように立ち尽くすシスの姿があった。

 それぞれ抜剣はして構えてはいるものの、傷つけて良いか躊躇している様子だ。

 ゾンビメーカーがどう言う事か詳しくは分らないが、シスがおかしい様子は彼女の視線がうつろに宙を見つめている事からも分かる。


「ゾンビメーカーって、ああなるんですか?」

「分からん、大抵は死んだ種子が腐肉に付くからな。噛まれて無事だったのか、その様な傷は見えんが」


 確かに、シスが死んだと言われてそうは見えない。意識が朦朧としつつも立てているといった方が正確だと感じた。


「シス!聞こえてないのか!しっかりしろ!!」

「……守らな――、……守らな――」

「おい!シスこっちを向くんだ!」


 団員の叫ぶ声掛けに、シスは宙を眺めた視線からゆっくりと団員へ視線を向ける。


「……賊?……あは」


 シスの視線は獲物を見つけた笑みだった。すぐ目の前に団員が居たのに今まで気づかなかった様子だ。首を傾げわずかに笑みを浮かべる。まさに獲物を見つけた微笑だった。


「何を言ってるんだ?おわっ!」


 突然シスの振るう左手の鞭がしなり、一人の団員の足に絡みつき引き倒す。巻き付いたままの鞭が途中で輪を作り剣もつ腕へ巻き付き引き寄せられる。

 シスは今までゆっくりと立っていた姿勢から、軽い助走で伸身の状態でフワッと側転しその団員へ近づく事で腕に鞭を巻き付け、着地と共に団員の腕を足で押し付ける様に体重を掛けた。

 それは一連の脱力した流れる動作で完結していた。仰向けに引き倒された団員は、剣を握ったまま右手を体に押し付けられ、握ったままの剣で首を傷つけていたかもしれない。しかし、その団員は右手にシスの足からの体重を掛けられると同時に剣を離していた。


「シスを抑えろ!」


 躊躇していたクルガーが、シスは正気ではないと判断し、団員へ指示を出す。

 鞭は一人の団員へ巻き付いたままであり、シスの次の動作はその団員へ必死の1刺をくりだす可能性が高かった故の指示だろう。

 何が起きているのかを確認するためにも、クルガーは捕獲の指示をだし。指示された団員は剣を離し、徒手でシスを確保しようとして飛び掛かる。

 それに気付いたシスは、体勢を治そうとするも、足で押していた団員が足を抱え込み逆にシスを引き倒した。


「シス、すまん!」


 右手に持った短剣を振るわれないよう手首を団員の膝で固定し、噛まないよう顎から肘で押し上げ固定される。固めの技を応用した姿勢の様に見えたが、シスは3人がかりで身動きが出来ない状態にされる。


「ほおほお、意外と早く捕まったようですね」

「誰だ!!」


 上半身を押さえた団員達はそのまま、足を引き倒した団員の一人が捕縛の紐をシスの足へ結ぼうとした時だった。

 自分たちだけでない声が掛けられる。もう少し見ていたかった、残念であるという思いを含んだ声色だった。


「もう少し優秀と思ったんですがね、私も引き倒されたらああいう風になってたんですね。怖い怖い……クククッ」

「出てこい!」


 自分たち以外の第3者が居る事が分かったうえで、団員たちは素早くシスを捕縛していく。抑えられたシスは呻きながらも、もがきながら十分に力が入らないのか抜け出せないままだった。


「よかった、よかった。隠されてでもいたら、探すのに面倒で「出てこい!!」」


 クルガーが気配を感じ短剣を、茂みの先へ投げつける。

 音も無く刺さるか、そのままかと思われた短剣は、パンっと軽い爆裂音がするとともに跳ね返されたのか木に刺さる。


「まったく、血の気の多い……」


 村道の横の茂みから出てきたのは、一組の男女だった。


「……何者だ?」


クルガー団長は、確認するように声をかけた。

 返事を期待してでは無いかもしれない。尋ねつつも団員やシスへ向けて猶予の時間を稼いでいる様にも感じた。


「ふむ、名乗るとでも?まあ、すぐ終わらせますので意味は無いでしょう。早々に終わらせましょう」

「はい……」


 男が促したとも言える声掛けに、隣の女性が答えた。フードを外した姿が森の中から出てくると、青い髪が宿屋の前に作られた篝火に反射し印象的な暗い輝きを反射していた。

 身長が高めであり、隣の男性が見掛け30歳に近い印象で有ったことから、その女性も同じくらいかと思ったが、篝火に照らされる表情からは、まだ16歳程の少女と言ってもよい印象だった。


「タモト君、君は宿の中へ」

「クルガーさん、でも―」


 自分も何か出来るかといい終える事が出来なかった。

 ゆっくり歩いてくると思われた少女は、歩きながら左手を振り上げる。するとその手に魔力の流れが生じるのを感じ、その力が左手に巻き付くように収束していくのが分かった。


「あぶない!避けて!」


 俺はシスを拘束し終え、突然の介入した二人組へ注意を向けていた団員へ避けるよう注意を促す。

 しかし、その魔力の収束は手を振り下ろされる手刀と共に、魔力の刃となって団員たちへ襲い掛かった。

 注意の言葉に団員も素早く身構え、長剣に防がれるかと思われた魔力の刃は、剣と共に団員を切りつけながら後方へ吹き飛ばした。


「ぐあぁ」


 何だ?風の刃の様にも見え、もっと簡素な魔力そのものの力を感じた。そもそも、呪文や魔陣の様な前準備も無く、魔力の収束と攻撃が一連の動作の様に感じた。


「ほう?」


 注意を促した自分へ、襲撃者の男性の視線が向けられる。


『―お兄ちゃん?』

『ミレイ、起きたか』

『何がどうなってるの?治療は?あれ、今どこにいるの?ちんぷんかんぷんだよ。さっきのはなに?』


 ミレイは思考の中で、混乱している言葉を発する。視界は共有していなくても、宿屋の中では無い事を感じ取ったらしい。

 その一瞬だったが、クルガー団長は剣を抜くと前傾姿勢に一気に少女と間合いを詰め横薙ぎに剣を振るう。


「タモト君!」


 クルガー団長は、あらためて自分を庇いながら未知数な襲撃者を抑える事は困難と感じたのだろう。間合いを詰めながら叫ぶ様に避難を促した。

 横薙ぎに振られた剣は、寸前の所で身を半身にずらし反らされる。素早い剣先を躱せる身のこなしに少女もまた、高い運動能力を秘めている事が分かった。


「……」


 少女は無言で身を反らしながらも、今度は左手から魔力の手刀をクルガーの右肩へ振り下ろそうとし、対したクルガーは左拳で少女の肘を打撃にて抑え込み、手刀を振り下ろすのを阻止する。

 そのまま、腕を掴もうとしたクルガーから、後方へ半回転に身をよじり、左手の手刀を今度は横薙ぎに振るう。


「くっ!」


 咄嗟に剣で防ごうとするが、中は振り切られた手刀から魔力の刃がクルガーの脇腹を抉った。


「さて、私の相手は貴方がしてくれるのですかね?」


 少女とクルガーの力の均衡が、危ういものではないと確信したのか、先ほどの関心を向けた視線から確認されるように尋ねられる。


「私、です……」

『炎(Fiamma)!』


 突然後ろから返事があったかと思うと、テニスボール大の火球が男へ襲い掛かる。

 当たるかと思われた途端、男の直前30㎝ほと前で火球は見えない膜の様なものに遮られはじける。


「レーネさん!?」


 振り返ると、今まさに右手に何かを握り、火球を放った姿勢で構えるレーネの姿があった。


『あわわわ、何、なに、ナニガあってるのぉー!!』


 思考の中でミレイが叫びながらも、宿の中からレーネに加え、ココが先程負傷した団員へ駆けつけ無事を確認していた。


『襲われているのは、間違いない!』


 やや思考の中で騒がしいとミレイの混乱に対して、返事をしながら、自分は自身で身を守れるだろうかと、身体の中の魔力消費具合を確認した。

 さすがに、先ほど治癒の魔陣で消費した分から回復していないだろうと思われた魔力が、ゆっくりではあるが回復してきている事が感じられる。

 そんな中、レーネは続けるようにやや大きい3連の火球を放ち、先ほどと同様にことごとく見えない壁に防がれる。


「ラソルの巫女でしたか、大したことはありませんね」

「……うるさい」


 レーネの目を隠した姿に、ラソルの巫女であると予想した様子だった。それに対して、レーネはボソリと独白するが、頬をつたう汗が余裕が無い事を伝えていた。

 明らかに手練れの魔術使い二人に均衡まで持ち込めず、徐々に押されていた。



『……風が……居る?』

「風?」

『ミレイ?何か言ったか』


 襲撃されている理解をしたのかミレイも、興奮から静かになったかと思えば、不意に風がどうのと呟く。何かを感じているのか尋ねるも、ミレイ自身が何かを感じているのか具体的には分らないのかも知れない。


「おや、気付いてます?やはり興味が湧きますね。貴方……」


 再び自分へ視線が向けられ、ゾクッと背筋を這う悪寒と共に目を反らさなければと思いながらも、反らすことが出来ないまま刹那の視線が交わった。


『―何者ですか?―』

『ひゃああ!お兄ちゃん!誰ぇ!!』


 さきほど宿の中で聞こえた、思念のテレパスは間違いなくこの襲撃者だと認識した。

 しかし、突然思考の中に再び聞こえた声に、ミレイが再び慌てて混乱している。そうか、先ほど、宿屋で聞いた時は、まだミレイは覚醒していなかった事を思い出す。


『ほお、混生種ハイブリッドですか』

『え?えっ?はい?ブリッドォ?』

『ミレイ、大丈夫か?』


 数秒だったが、強制力に近い眼力から視線を逸らすと、思念も途絶えた事に気付く。

 アブロニアス王国の首都で出会ったシャーリーとミレイとの間で話をしていた事を思い出す。あの時に似た視線を合わせる事が、意識を通じ合わせる手段なのかも知れないと思いいたった。


「王国の人間ですか?しかし、やる事は、やってますね。まさか、こんなところで同種に会えるとは」

「同種ってどういうことだ?」

「あぁ、分りませんでしたか?貴方の様に不完全ではないのですよ、私は」


 自分の体を評価するように左手で自分を示す。


『うぅぅ、やっぱりアレから風を感じるよぉ』


 ミレイの姿は見えないが、先ほどの体験がよほど気持ち悪かった様だ。襲撃者をすでにアレ呼ばわりしていた。


「しかし、失敗すると姿まで影響を受けているのですか?興味深い……それとも方法が違いましたか?」

「かぜ……風の精霊が居るのか?」


 今まで自分の様に精霊を連れた人が身近に居なかったのも、気付くのが遅れた理由の一つだったのかもしれない。自分と精霊であるミレイとの関係を築いている人がいないと確信する方がおかしいのだと気付く。


「居る?あぁ、不完全な貴方からはそう見えるのでしょうね。完全に私だけですよ、詳しくは秘密ですがね」


 内緒ですと人差し指を口元に当てた時、突然、ドンっと空気を震わせる衝撃が男性の襲撃者を襲う。

 レーネの火球とは違い、大きな魔力の塊を当てられた衝撃に初めてよろめき上半身が傾く。


「くっ!」


 初めて襲撃者の余裕の無い言葉を聞いた瞬間だった。


「まったく……これだから……うっとうしい蜂ですね。ねえ?女王蜂よ」


 男性の向けた視線の先には、宿屋の二階の窓から、銃を構えたマリーナの姿があった。


「マ、マリーナ様!」


 驚きの声をあげたのは、傷ついた隊員の無事を確認していたココの声だった。

 宿屋の2階で待っている様に言われたが、まさか、マリーナ自身が襲撃者に反撃するとは思ってもみなかったようだ。


「ふっ、小賢しい邪魔を。ゆっくりも話も出来ませんね」


上半身が見えない魔力の壁にぶつかる衝撃によって乱れてしまった髪を手櫛でかきあげて整える。

 また、虫を払う様に手を薙ぎ払うと、風の力という衝撃の斬撃によって2階の窓壁が横薙ぎに粉砕された。


「キャア!」


 宿の骨組みまでは破壊できない様子で壁の一部を大きく破壊し、その衝撃を受けたマリーナが避ける事ができず、破壊された壁から宿の外へ投げ出されて地面へ落下する。


「マリーナさん!」

「マリーナ様!」


 レーネが襲撃者の前に出てくれた事で、自分は地面に叩きつけられたマリーナのもとへ駆け寄る。

 ココは、解放している隊員のそばを離れる事を一瞬躊躇い、マリーナの元へ自分が駆け付けた事で、隊員を放っておく事はしなかった様子だった。


「しかし、不完全とはいえ、その力をどの様にして手に入れたのでしょう?話してくれますか?いえ、それは後々に自分で調べる喜びも必要ですね」

「……」


 ぐったりとしたマリーナの容態を確認するのを優先し、無言で返答した自分に対して、その男は誰かに返事を求める様に、周囲ともう一人の襲撃者に同意を求める視線を向けた。


「あーゴホン。ついつい興味が先走ってしまって。……まずは仕事を終わらせねばね」


 クルガーと剣と魔力で刃を交えていた女性の襲撃者から冷たい視線を受けたのか、気を紛らわす様に、ワザとらしく咳ばらいをする。


「勝手な事を!」


 隊員の命の無事を確認しながらも、長剣を構えるココと再び火球の魔力を放つレーネに注意を戻した様子だった。


「終わった後でゆっくりと」

「ゆっくり、時間は、無い!」


 先程の正面から連続してはなった火球にレーネは変化を付けて四方からの隙を探す様に左右や後ろから歪曲させて放っていた。

 その様な変化も、気にした風は無く直立した自然体のまま、当たる直前にすべてが見えない壁にぶつかり爆風と共に無効化されていた。


「学習しない方ですね。無駄だというのに。そちらの騎士もこの前は部隊の方共々十分に挨拶をさせて頂いたと思いますが、今日は構ってあげることができないかもしれませんよ」

「貴様!やはりあの時の!」


 ココは以前に何らかの遺恨があった様子であり、渋面の表情を浮かべていた。

 ようやく、初めの衝撃にやられた隊員やシスの大事を確認し終え、レーネと共に男の前に立ち構える。


「どなたからでも構いませんよ。そこの貴方だけは今日のお土産にと思っていますのでお待ちください」

『動くな!』


 レーネがひと際はっきりとした声を発する。初めて聞く自分でさえも、その言葉に注意を引き付けられ、一種の魔力が込められている事が分かった。


「巫女の言霊ですか、いくら神と繋がり力を体現しようとも、素質に影響される力そのものはたかが知れていますね。まだ年若い自らの力不足を恨みなさい」


 期待通りの言葉の呪縛が聞かなかったのか、レーネは苦渋と冷や汗が頬をつたう。


「うるさい!」

「レーネ殿!」


 ココは長剣をまっすぐに構え、男の横合いから貫くように切り込む。貫けるかと予想した剣先は、火球と同じように男の直前で見えない手で剣先を抑えられているかのように留められていた。


「騎士も十分に備えの無い所では、ただの人に収まるしかないのです」


 レーネとココの魔法と剣戟の攻撃も、男の歩みを止めることは出来ず、一歩一歩と歩み、払う様に放たれる衝撃にレーネは両手を前にかざし、ココは避けるのが限界の様子だった。


「それにしても、融合している貴方が一番の障害と思えたのですが、私の勘も鈍りましたか」


 この男の目的が何かは不明だが、ここにいる一同に害する思いがあるのは確かであるし、何より自分に興味が有るという。

 自分も抵抗しなければと思ってしまうが、果たして消耗した魔力でどこまでの事が出来るか、分からなかった。


「タモトさん、私の事は、良いので……皆さんを助けて、ください」

「でも、この傷だけでも」

「かすり傷で、す。タモトさんは、アリシアを治療して、消耗しているはず。皆が倒れれば、最悪の結果に……」


 決して、マリーナが言う程に見える傷は、かすり傷とは言えず服は所々裂けており、庇った両腕から腹部と切られたように裂傷からは流血が見えていた。


「……分りました。でも、自分の力もまだ十分には」

「それならば、これを」

「これは、先程の?」

「私の……家、から渡された魔銃マギカインペトゥスです。魔宝石が力を補ってくれるはず」

「銃ライフルですか」

「え?ライフルって、それは?」


 マリーナが聞き返したライフルとは、確か銃身に旋条のライフリングを刻んであることで、弾丸に回旋運動を加えて命中精度を向上させた意味だったか。そういう意味では、魔法を放つこの世界の銃にはライフリング自体の概念が無いのかも知れない。

 確かに、そうみると、銃身に旋条の刻みなど見られていない。銃身が長いのはただそのような構造なのだろう。

 手に取った魔銃は確かに、直径5㎝程の透明な魔宝石が本来ならば弾を装填されるシリンダー部位を貫通するように固定されている代物だった。

 今も微かに魔宝石の中に瞬く輝きが見える事で、放つことが出来る状態である事が分かる。


「借ります」

「え、えぇ」

「ほお、貴方も何かされるのですか?ふむ、その銃ですか。魔宝石に頼った力では私には効かないのは先程で分ったでしょうに」


 男は嘆息を付くようにちらりと視線を向けるも、さしたる脅威では無いと判断したのか、レーネとココに注意を戻した様子だった。

 前の世界ではゲーム内でのハンドガンを操作することはあっても、銃身の長いライフルを持った経験などない。少しでも命中出来る様にと、立つよりも中腰の姿勢で右膝を地面に付け、左膝を直角に立膝の上に魔銃を持った左腕をのせた。


『お兄ちゃん、うち、銃に移っていい?あっちの方がホワホワで気持ちよさそう』

『はっ?俺の魔力路の治療は良いの?』

『え?だってもう終わっちゃったんだもん。ミレイいつまでこのままでいればいいのか分かんなくて、ついつい』

『ついついって、サボってた寝てたというわけか?』

『サボってなんか無いよー。治療しちゃったら倒れて寝ちゃったし、その時、終わったんだよぉ、ミレイも寝ちゃってたけど、一生懸命なおしたのに、お兄ぃちゃん寝てたのにー、ぷぅ』

「どうしたのです?」

「あ、いえ……」


 アリシアを治療していた時に、自分の治癒の魔陣の力のリミッターを解除したあと、ミレイの治癒も爆発的に早まり魔力路もちょうど治っていたらしい。


「ここです」


 マリーナは魔銃の使い方が分からないのかと予想したのか、引鉄部分にある空洞へ指を入れる様に指し示した。

 確かに、実包にあたる弾も無い、撃鉄にあたる部分も無い様子からどうすれば良いのか悩んでいたのも事実だった。そして、マリーナに促されるように右手人差し指を魔宝石の下部に空いた穴へ差し込むと、中で指の先端が魔宝石に触れるのが分かった。

 どうやら、ここに放つ意思や魔力を流し込めという意味なのだろう。


『じゃあ、ミレイどうすればいい?」

『うん、うん、そのままそのまま、そんな感じぃ……』


 急にミレイの声が遠くなっていったかと思うと、体の一部から暖かな魔力が魔銃へと繋がっていくのが分かる。抜けていく感覚では無い。逆に魔銃が体の一部になっていく感覚だった。


「おおぉ、融合体で任意に変化できるとは」


 見ていないと思っていた襲撃者は、何気に気にはなっていたらしい。自分に起きた変化に気付き、レーネとココへ攻撃を加えながらも感嘆の声をあげる。


「な、何だ!」

「「……」」

「タモトさん……」


 魔銃に固定された魔宝石の輝きが青色に輝きを増すと同時に、自分を形作っていた殻が光に散っていくように、姿を変えていく。


「髪が……、え?男の人?」

「はははっ!それが本当の貴方ですか!しかし、融合を解いてしまうとは、弱いのではありませんか?」

「さて、どうかな?」


 自分で聞きなれた、自分の声を懐かしく思う。先程までは、ボイスチェンジャーを使ったように自分の女性声にようやく慣れてきたところだったのだ。いや、慣れる前に戻れて良かったな。

 宿の壁にもたれかかり見上げていたマリーナの視線が、見開くように見つめていた。

 確かに、女性だと思っていた人が男性になれば驚きもするだろう。


「……お兄ぃ―――?」

「え?」

「きゃっ」


 マリーナの呟きに違和感を覚えて振り向こうとした時、レーネが風の衝撃によって飛ばされ地面に打ち付けられる。

 なぜか動揺するマリーナに向けようとした視線を突然にレーネの方へと引き付けられる形となった。


「もう、これ以上の発見もなさそうですし、そろそろ終わりにしましょう。目的も見つけた事ですし、そうですねぇ、貴方の融合にも興味はありますが、それ以上期待しても何もなさそうですし、いいですねもう……」


 誰に言うでもなく、マリーナを見つめ呟く男に同意するかのように、襲撃者である女性の方もクルガー団長への攻勢を一層強めた様子だった。


「くっ」


 不意にクルガー団長の余力の無くなった声が漏れる。

 襲撃した女性の戦い方は、男の方が近くに寄せ付けず遠距離の風の魔法に対して、女性の方は近接的な体さばきでの攻撃だった。

しかし、合間に魔力の光を使った掌での中距離の魔力での衝撃を放っているため、完全な近接術者とも言えない様子だ。

 今は何とか、クルガー団長が近接での剣戟にペースを持っていっており、ようやく均衡していると言っていいだろう。しかし、体術の攻勢を強めた事で優位だったクルガー団長の表情からも余裕がなくなってきている様に見えた。


「あぁ、そうそう、その魔銃は貰っていきますよ」

『いぃ、いやぁぁぁなのぉ!!』


 ミレイの姿が今は魔銃と共にあり姿が見えなくても、本心から叫んで拒絶する。

 何も、もし奪われたとしても魔銃との融合を解けば良いだけだろうに、今は自身が銃そのものになっており、自分が連れ去られると感じたのだろう。


『おにいちゃん、あの変態をたおすのぉ!』


 ミレイも何故か倒す気満々で、より一層魔銃の魔力が強まった。

 確かにレーネは地面に打ち付けられ、半ば意識を失いかけていた。辛うじてココが男の注意を引き付けてはいるが、男の表情からは対して問題にしていない印象を受けた。

 マリーナは自分が標的だと言われた為だろうか、呆然としている様子だった。何故か襲撃してきた男の方では無く、自分の方を見ているのはもう反抗できる人物として、期待を向けているからだろうか。


『ミレイ、銃の準備は大丈夫なのか?』

『あれっ?お兄ちゃんの準備待ちなんだよ?』


 ミレイの返事は何とも緊張感に欠ける返事だった。

 そうと分かれば、決心するしかなかった。何とかしてこの襲撃者から皆を守るしかない。

 男は手を振り下ろすと、生じた風の衝撃が刃となって地面を刻みながら自分とマリーナへ襲い掛かる。先程まではレーネが防いでくれた攻撃も今は遮るものはなかった。

 躊躇わず、魔銃のトリガーに魔力と意志を流し込む。

 同時に青白い輝きの魔力の弾が発射され、風の衝撃にぶつかり相殺される。


「ほぅ」


 男は何に関心したのか声をあげる。

 このままマリーナを庇いながらの戦うだけの力は自分には無いだろうと考え、立ち上がりマリーナやレーネを巻き込まない位置へと目を向ける。

 すると、倒れるレーネの掌からこぼれた輝く魔宝石が落ちている事に気付く。彼女が攻撃を防ぎながらも魔力を補っていたのは、その宝石のおかげなのだろう。


「あっ」

「すみません、巻き込まないようにしたいので。動けるようならば、レーネさんや2階の妹さん達の無事を確認してもらってもいいですか?」

「え?ええ」


 何か言いたいことが有ったのかもしれないが、マリーナは動けるのであればと理解を示した。


「ココさん、クルガー団長の方をお願いします」

「し、しかし!?」

「おねがいします」

「あぁ、わかった。任せてもいいんだな?」

「はい」


 慣れない銃に巻き込んでしまうかもとは、さすがに襲ってくる相手の前では言えなかった。それに、有意な傷をつけられない相性の悪さをココも感じていた様子だった。


「何人でもいいんですがねぇ。クククッ」

「いや、自分一人の方が気楽なので」

「強がりを言っても、しょうがありませんよ?」


 レーネに近づき、無事を確認すると裂傷や出血は無い様子だった。打撲や内側の骨折は分らないが、衝撃で気を失っているだけとも見えた。


「レーネさん、借りますね」


 散らばる紅や茶色に輝く魔宝石を左手で拾い上げる。レーネは、足りない魔力を魔宝石から補っていたのだろう。借りると言いつつ宝石を拾い、自分のしようとしているイメージは、できると確信に変わっていた。

キイア村が襲われた時、首領であったあの男ガールの取った執念からの行動がヒントになっていた。

 ミレイが魔宝石に執着し姿が消えようとした時、魔宝石は一種の魔力の塊であることに気付いていた。

 レーネの使い方が本来の術士としては正しい使い方なのだろう、しかし、術士でなかったガールは執念と意志で体内に取り込んだ行動だったのだ。

 魔宝石が魔力の塊であり、精霊の魔力をも吸収できるならば、その逆も出来るはずだと、考えながらも、左手の中では魔力の銀糸『ku(吸収する)-bar(開く)』を形作り宝石を包みながら、結果として幾程の年月の魔力を貯めた塊を分解し吸収していく。


「何を……」


 男は最後まで言うことが出来なかった。魔力を吸収しながらも、数え切れない魔陣の銀糸を左手より絡み合いながら、腕、肩と全身を覆っていく。

 銀色の輝きが一段と落ち着くと、右手には薄く青く輝く水の魔陣紋様と、左の上腕付近には菱形の赤色を2重に配色した白袴の様な神の魔陣をまとった姿がそこにはあった。


「な、何だそれは?」


 初めて見る未知の現象に、余裕無く目を見開く男は一瞬歩みを止め、その好機を逃さず、魔銃と神の魔陣の2重の魔力をのせた力を撃ち放つ。

 今度は男は迎え撃つ事も出来ず、風の見えない壁に魔弾を直撃した。


「ぐぁ!」


 衝撃は男を吹き飛ばし、風の魔力だけでは防ぎきれなかった結果を示す。

 周囲に居た皆が、信じられない姿や結果に呆然とした視線を向ける。


『行っちゃえ、やっちゃえ!ごぉごぉ!』


 能天気なミレイの声だけが思考に響いて来る。正確には自分にしか聞こえていないので周囲は静かな状況にギャップが激しすぎた。

 しかし、今しか好機が無いのは確かであり、続けて2度3度と魔弾を放ち追撃する。

 2発目は直撃したが、相手も辛うじて腕でガードしながら、致命的なダメージを防いでいる様子だった。


「ル!ルミィッ!!」


 男が叫ぶと同時に、敵意の視線が左側より圧迫感とともに突き刺さる。その無視できない圧迫感に視線を向けようとした途端、ルミと呼ばれた襲撃者の女性の放つ右足のミドルキックが左腕を狙い襲い掛かった。

 避ける事が出来ず、左腕で庇おうとした姿勢のまま腕と腹部にダメージを負う。神の魔陣の防御の力が無ければ、腕や腹部もただでは済まなかった一撃だった。


「た、助かりましたよ」


 先程まで抑え込んでいたクルガー団長やココの姿を見るも、完全に無視して自分へ矛先を向けた様子であり、二人による剣戟の傷を腕や体へ少なからず負わせていた。

 無言のまま、そして休みなく、喉を狙う拳を放ったかと思えば、腹部や足への鞭の様な蹴りを放ち、辛うじて防ぐしかなくなる状態となる。


「ハッ、ハハハ」


 男は乾いた笑いから、少しづつ余裕を取り戻してきた様子だったが、完全にとはいっていない様子だ。


「タモト君!「タモトさん!」」


 しかし、自分が格闘や近接に慣れていないのは十分に理解していた。その為には、防御をそのまま攻撃の手段とするしかないと、左腕の炎の魔陣に意識を高める。

 すると、白袴に見えた衣装の中を赤い流れが動くように模様を作っていく。実際には白い魔陣の生地の中を炎の魔力を持った銀糸が流れ全身の模様を変化させた。


「何あれ……」

「わ、分らん」


 傷をものともせず突貫するルミという女性の気迫に追撃する事も出来ず。また、すでに理解できない現状に呆然と呟く、クルガー団長とココはレーネを助け起こすマリーナを手伝いながら見つめるしかなかった。

 炎の赤色へ変わった魔力の銀糸の部分から炎が湧きあがる様に、腕事態を飲み込んでいく。ルミと言われた少女の攻撃は、辛うじて急所は防ぎながらも打ち付ける勢いまでは消しきれず、踏みとどまる足は徐々に後退していった。


「良いですよ、良いですよ、ルミ。そのまま片づけなさい」

「タモト君!!」


クルガー団長が助けに近づこうと、身を乗り出そうとした時、その変化は起こった。

辛うじて防ぎながらも、相手に攻勢に出るには、体力も技量も乏しい自分には考えれた方法は少ない。


「何をしたの……」


 無言にて殴打を繰り出していたルミが、ふと、その手を止め自らの腕を見つめる。

 その手には、魔力で生み出された炎がルミの手から腕を焦がしていた。また、今も腕にはめた手甲の一部を溶かしている。


「魔力の炎は消えにくいらしいよ?」


 その返答が聞こえたか、腕を振り炎が消えるか確認した様子だが、言った通り燃えている炎は揺らぐことはあっても、未だに外套を肩まで燃やし、腕自体を燃やし尽くさんとしたままだった。


「なら、早々に終わらせるだけ」

「そうだ、ルミ!もう終わらせるのだ。持ち帰りなど不要だ!ここで破壊しろ!」


 頷くのみで返答するルミは、燃え続ける外套を脱ぎ捨て、闇の中でも分かる蒼い髪を露にした。腕は燃えながらも血が滴り続けるのを気にするのはやめた様子だ。

 懐から何かを取り出すと、胸元へ掲げる。


「道具を使うのは、貴方達だけじゃない」

『おにぃちゃん、魔宝石だよ!』

「魔宝石?」


 無表情だったルミが、正解を当てた自分へ初めて笑みを浮かべた様に見えた一瞬だった。

 手のひらから生じた緑の色の魔力の光は、発散せずにルミの腕や体に吸い込まれていく。しかも、その残光は微かに身体の表面に残る様に輝いている。

 まさか、神の魔陣を?と思ったが、似ているようで感じ方は違った。


「ククク、造られた人間の英知を味わうがいい」


 造られたって、何が?と確認を発する猶予も無かった。眼の前に居たルミの姿が消え、一瞬で懐に踏み込み掌底で吹き飛ばされる。衝撃の瞬間、胸骨と肋骨に嫌な軋む体内の音が響いた。

 地面に倒れ込む前の体を引き上げられ、フックの様に側頭部を狙う殴打が襲う。


『イヤァ!!!』


 ミレイの叫びと共に意思とは関係なく、握った手ごと魔銃が動き殴打の軌道を防いだ。


『きゃぁ!!』


 防いだ銃身は破砕され、二度と修理がなければ撃てないだろう。直撃は防いでくれた打撃の影響から朦朧とした意識の中、ミレイの苦痛の声が明確に響いていた。

 すでに集中を切らした魔力は、神の魔陣を維持できず銀糸となって霧散していく。


「ぅ……やめて……もう、やめて下さい……」

「ほぅ?」


 戦意を失った声。まさに夜の静寂に聞こえたのはマリーナの訴えた声だった。男が関心を持つように、聞く意識を向けると。それと同時に再び振り上げていたルミの腕も静止する。

 それをうっすらと眺めた時点で、魔力の枯渇と緊張の途切れから意識を失った。




「やめると言うことが、何を意味しているか分かっていますか?」

「お願いです。その代り皆の命は……どうかお願いします」

「ククク、物わかりの良い方だ」

「駄目です!マリーナ様!!」


 ココはマリーナの前に何とかにじり出て庇う姿勢を作る。クルガー団長も片手ながらも剣を構え向けなおした。


「ココ……、団長さん、ありがとう。私って永くは生きれない運命(・・)みたい。一度は、お姫様にって憧れて、実際は大変よね……それに」


 マリーナは、今はぐったりと意識を失ったタモトの方へ視線を向ける。


「最後に、名前も姿もそっくりな人に出会うなんてね。一瞬、まさかって思ったわ。この世に居る訳ないのに……。それに、あんなにカッコよくないし、運命って意外と残酷よね」

「マリーナ様、諦めてはいけません!命に代えてもお守りいたします」


 知らないうちに自然と脇の痣に触れながら、マリーナは覚悟を決めていた。

ココとクルガーは何とか時間を稼ごうとするも、駆け付けるような増援の様子は無い事に歯噛みしていた。

 互いに最悪の場合、自らの命を賭けてでも時間を稼ぐつもりだった。


「ルミ、もうそっちは良いでしょう。覚悟を決められたようだ」

「ハイ……」


 ルミは掴んでいた胸元を放って、ドサッと地面にタモトを降ろすと。ゆっくりとマリーナ達3人に近づくと、切りかかるココとクルガーを簡単に避けると、予想以上の速さと力で殴打し投げ飛ばした。


「さあ、大丈夫、楽に逝かせてあげる。先に意識を落してあげるから」


 ルミはスッとマリーナの首元へ手を伸ばすと、冷やりとした一瞬の後、手で包み込んだ。

 マリーナは気丈なのか、見開いてルミを見つめる。いや、ルミには自らの最期を覚悟しての潤んだ瞳に見えた。


「ルミ‼」


 ルミは躊躇した覚えはない、しかし、急かし、暗に早くしろと意志を含んだ叱責に何かがおかしいと感じたのは一瞬だった。

 マリーナの視線が自分を向いていなかったからだ、ルミは潤んだ瞳に写る姿に何故急かされたのかに気付いた。


「待ってくれよ。まだ終わりじゃないだろう?」


 周囲の視線を集める先に、ボロボロになりながらも立っているタモトの姿が有った。


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