第4話 愚かなる
式は動揺していた、昨夜の事件から24時間、静華からは何も連絡無かった。
普通に考えれば、ここで静華が現れると思っていたのに和華が緊急で来た。
そして冗談とも取れないシチュエーションで『愛しています』などと伝えられれば
静華に何か大変なことがあって、
それも命に関わるような大変なことが知らないところであったのではないかと思うと
式は和華を問い詰めずには、いられない気持ちになった。
もちろん一度も、会ったことのない女性で
深い関係でもない。
『いや・・・それは嘘になるかな・・・』
でも何か・・・何かが違い、式は、しっくりとくる感があった。
立場としては、ずっと上の世界の方だ。
しかし物怖じしない性格の式は怖いもの知らずの馬鹿である反面
人間の価値は収入や階級では無いという信念があるので有名人だろうが
部長や社長や会長だろうと引け目感じるということは無い。
そんな式は身の程知らずにも静華が身近に感じて
親しみと好感も多大に持っていた。
もう少しで
『一体何があったっ!』と我を忘れて大きな声を上げるところだった。
しかし心を読める和華には既に式の心の声が聞こえていたようだ。
後部座席で二人並んで座っていたので間違い無い。
「ごめんなさいアキラおじさん、言えないんです」
式は、うつむいて涙をポトポト落とす和華を見てハッと我に返った。
和華は、まだ小学生の女の子だ。
『しまった俺は何をやってるんだ・・・』
あんまりしっかりしているので勘違いしていた。
式の失敗です。
「和華さん、静華さんは元気なのかい」
「ぐすっ、ハイ大丈夫だと思います」
「それじゃ本人と話せないかな・・・」
「近いうちに・・ぐすっ・・・来ます、その時、本人に、くわしく聞いて下さい」
「そっか、わかった、ごめんね」
『俺が泣かせちゃった?いや違うよな、もう泣いてたはずだ、あれぇーやっぱり静華さん何か大変なことになってるっぽいな』
「あーあー先生何やってるんすかぁー女の子泣かしちゃって」
尾形君が呆れてます。
「ううん、違うの尾形兄ちゃん、私、今まで、あんまり褒められたことがないの。
いつもみんなに、お前は跡取りなんだからしっかりしろって言われてばかりで
静華お姉様が大変良く出来ました、がんばったわねって言ってくれたのが嬉しくて泣いてるの・・・」
『確かに日本人は人に厳しい、褒めるってこと知らないもんなぁ』
それにしても昔も今もアメとムチが効果あるようだ。
式はそれを聞いて少し安心した。
こんな女の子が嬉しくて泣くなんて式の想像など及ばないような苦労が彼女にあることを初めて実感した。
「あっそっかー、なんだ、あれ、そっかそっかぁー」
式は何と言えばいいのかわからなくなって、そっかを連発した。
頭悪いです。
そしてホテルに到着、尾形君には一度、休憩時間を取ってもらい、
式も作業開始まで少し休もうかと思いましたが知らない地で
和華を一人にするのが、かわいそうになって
部屋で一緒に休憩することにした。
和華も一人で大丈夫だ、などとは言いませんでした。
「アキラぁー、ちょっと眠っても良い?」
「あ、はい、何時に起こします?」
「10時ぃ」
「あーそれだと、みんな待たせちゃいますよ」
「うん、いいの待たせましょう、それじゃ起こしてね、おやすみなさーい」
「はい、おやすみなさい」
和華は遠い熊野からいらっしゃっていて緊張もあったはず、眠らずにいらっしゃったに違い無い。
それと、おそらく現場には夜11時到着になるのは予想できたので
尾形に、その事を伝え集合時間は、そのまま10時にしておいて、
時間に合わせ警備員さんや作業員さんたちの差し入れや軽い夜食のために、ハンバーガーセットなどを大量に現場に配達してもらうようにとも付け加えた。
現場には尾形のお父さんも監督として入る。
作業員や警備の方々にも御守りを渡して身につけてもらうように
指示が出ていた。
目覚ましを掛けて部屋のソファーで式も少し仮眠を取った。
こうして式が気が付かぬうちに仲間が増えて
榊原一族、官僚の方々、銀行、病院、警察、消防、建築会社、空港関係者などのシンジケート
事件に関係した協力者、ご家族や私の友人も含めて輪が、さらに大きくなり気が付けば
かけがいのない人々の繋がりの中に式も参加していた。




