試験の女神様
あっ。
試験に緊張しすぎて、うっかり鉛筆を落としてしまった。予備の鉛筆は当然ある。でも、それは私の相棒じゃない。あの鉛筆は、私の相棒で戦友なんだ。
成績が落ちて凹んだ時、あの鉛筆で頑張った。
あの鉛筆と頑張ったら、始めてクラスで1番になった。あの鉛筆で頑張ったから、始めて学年で1位になれたのに。
「これはあなたの鉛筆ですか?」
落ち込んでうつむいていたら、声をかけられた。
きっと、試験官が私の鉛筆を拾ってくれたのだろう。私は笑顔で顔を上げた。
そこに立っていたのは、女神だった。
「あなたの落としたのは、この金の鉛筆ですか、それともこの銀の鉛筆ですか」
「金の鉛筆は、正しい答えだけマークを塗り潰すことできる鉛筆です。銀の鉛筆は合格点を満たす程度にマークを塗り潰せる鉛筆です。」
女神はもう一度、私に聞いた。
「あなたの落としたのは、この金の鉛筆ですか、それともこの銀の鉛筆ですか」
私は答えた。
「私の鉛筆は、そんなズルい鉛筆じゃない!」
「私の鉛筆は普通の鉛筆です。普通の私と頑張った鉛筆なんです! 私たちを馬鹿にしないで!私たちはズルなんかしない。私の鉛筆を返して!!」
私は私の叫び声にビックリして、目を覚ました。
カレンダーの日付を確認する。今日が試験の日だ。
女神は夢だったのだ。
私は筆箱を確認した。私の鉛筆はしっかりと収まっている。大分、短くなっているけれど大切な私の相棒は、いつものようにそこにいる。
金の鉛筆はいらない。銀の鉛筆もいらない。
私と一緒に頑張ってくれた、普通の鉛筆が一番良い。
普通の私と一緒に頑張ってくれた普通の鉛筆が、私の試験の女神様。