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第99話 激闘!テューポーン


テューポーンを撃退するべく、レイド戦が始まった。遠巻きにブレスを打つ構えのエンジェルと漆黒にスピリット、ヴィーナスも離れた場所からケラウノスを向けている。ポセが巨大な体躯になり牽制し、俺とゼウスは直接攻撃する為にテューポーンの(もと)へと駆けていた


「ゼウスの得意な攻撃は?」


「やつとの戦いはケラウノスの雷霆(らいてい)と金剛の鎌で戦う!梳李も無理はしないように頼む!」


「気にするな!この星に来た時点で俺の敵でもある!」


「開幕の一撃は任せたぞ!ゼウス!」


「怒涛の如く鳴り響け!ケラウノス!」


「後方部隊も初撃をあわせろ!」


ゼウスの凄まじいかみなりがテューポーンに襲いかかる、同時に漆黒とスピリットの炎のブレス、エンジェルの虹のブレス、ヴィーナスのケラウノスも雷撃を放つ


テューポーンに直撃する


「ゼウス…この程度で俺がどうにかなると思っているのか」


最高神と言えども本来の力を発揮できない状態では不利なようだ、ゼウスの雷霆も後方部隊のブレスや雷撃もあっさりとかわされ吸収される。ポセは全力でトライデントを突き立てるがテューポーンの動きも素早く全てかわされている


「ブレスも雷霆も効かないなら直接斬るしかないな、ゼウスは左足、俺は右足の腱を斬る!ポセは何とかテューポーンを捕まえて動きを止めろ!」


「くっくっくっ!遅い!遅い!そのような攻撃が当たる訳がなかろう。ポセイドンも噂ほど強くないのう」


ポセに気を取られている間にテューポーンの足元へゼウスと走った


「なんだあれは?ゼウスあいつの身体はどうなっている」


「くそ!ここまで変体していたか!やつの腿から下は毒蛇なのだ!」


「四の五の言ってる暇はない!切れ!フェアリーはデバフをかけられないか遠距離から探ってくれ!」


「解析中です!梳李!気をつけてください!その毒蛇の毒は猛毒です!解毒できるかわかりません!」フェアリー


「ゼウス!聞いた通りだ!あの蛇に噛まれたら俺達も危ないぞ!うまくかわせよ!」


にょろにょろと蛇のように動き回るテューポーン、上半身ではポセを相手にし、俺達の気配を悟って的確に毒を飛ばして攻撃してくる


毒が触れた高原は溶かされて谷になり、植物は燃えていく


「後方部隊は同時攻撃で一点集中しろ!肩でいい!なんとか少しづつ動きを鈍らせるんだ」


ポセは組んだ腕を解かれ顔面にパンチを受けている、水しぶきが上がりポセ本体の顔も歪んだ


明らかにテューポーンの方が強い


「フェアリー俺にシールドを張れ!ゼウスは俺に雷霆をぶつけてやつの顔面付近へ飛ばしてくれ!」


「梳李!危険です!」フェアリー


「はなから危険じゃない戦いなどない!ここでこいつを止めなければ、俺達の星もこいつの思い通りになってしまう!」


「フェアリーとヘッカで全力で頼む!行くぞ!」


フェアリーとヘッカによるシールドが張られた、ゼウスの雷霆を射撃の爆薬に変え、俺自身を発射する


白竜の杖を使い岩の塊を巨大なランスにしてテューポーン目掛けて超速の弾丸は飛んでいく


一発目…急所と捉える事は出来なかったが、テューポーンの右腕を貫通する


「ぐおおおー!」


テューポーンが声にならない叫びをあげる


右腕を失っても戦意が落ちる事はなく、左腕でポセのトライデントを掴みながら毒蛇による巻き付き攻撃でポセを締め上げる


「ポセ!海水を解いて逃げろ!そのままでは毒でお前がやられる!逃げろ!」


「後方部隊は左肩を狙え!俺はゼウスの所へテレポートする!フェアリーもゼウスももう一発準備しろ!」


二発目…弾丸攻撃に危険を感じたテューポーンは全力で回避行動を取る、俺は空を切ったがそれに意識を取られたテューポーンの左肩を竜王達のブレスとヴィーナスの雷撃、ポセのトライデントが捉えた、流石のテューポーンも両腕を取られては毒蛇以外の攻撃方法がない、翼を出して逃走をはかろうとした


「アンピ!すまんがポセのふりをしてゼウスの所へ行け!ゼウスは発射するふりをしろ!気をそちらへ向けてくれ!俺はこのまま落下しながら翼を斬る!」


ゼウスの雷霆を確認したテューポーンが慌てて逃げようとしている所に、高速落下しながら青の一刀両断が片翼に炸裂する


片翼を落とした俺はそのまま腿から下の大蛇目掛けて青と赤の二刀流狂喜乱舞、空中殺法、テレポート、神速移動、瞬間移動、全てを駆使して攻撃と移動を繰り返していた。毒蛇に補足されては命がない、アスコットの顔が浮かんだ、ミーティアの顔が浮かんだ、フェアリーやヘッカ、全員の顔が浮かんだ、その刹那はまさに死の淵という場所なのだろうか、大蛇の動きもポセやゼウス、全てがスローモーションに見えた


「ぐおおお!ぐおおお!」


とても遠くにテューポーンの悲鳴が聞こえていた、気がついたら直径10m以上はありそうな大蛇の頭が二つ地面に転がっていた


テューポーンの顔の前に移動した


「テューポーン!ごめんな」


理由はわからなかったが涙が溢れていた


「もう一度だけ聞いてくれないか…腕も足も翼も元通りに回復するから、この星から手を引いてくれないか…」


「貴様!人間の分際で俺を傷付けた挙句に情けをかけるのか!」


「そうじゃ!梳李!不憫に思うのなら楽にしてやれ!」ゼウス


「情けをかけたように聞こえたのなら謝るよ…ごめんな、だけどお前もガイヤとやらの悲願の為にのみ生まれた存在なんだろ?そんなのないじゃないか!神の世界の事も神や怪物の事も俺はわからん!だけど生がある以上そんなつまらない事に縛られる事はないじゃないか!」


テューポーンも泣いていた、斬られた腕や足が痛いわけではない、心が泣いていたんだ


「人間は良いな自由に生きる事が出来て、俺達は与えられた役割にのみ生きる事しか出来ないんだ、腕と足を治してもらってもまた来る事になってしまう、それなら俺の為に泣いてくれるお前の剣で俺を葬ってはくれないか」


「ゼウス!ポセ!ヘッカ!なんとか出来ないのか!俺はそんな神界の理を納得できないんだよ!頼むよ!なんとかしてやってくれよ!」


ゼウスもポセもヘッカも泣いていた。泣きながら叫んでいる俺を見かねたのだろうが…悲しみは伝染していた


「わしがいくら最高神といっても、それも理の中の話でな、ルールを書きかえる力はないんじゃよ、すまん梳李」


「すまんでかたずけるなよ!その上でなんとかする方法を考えてくれよ!」


「梳李と言うのか人間よ、最後にお前という温もりに触れられた事は俺も喜びに思う、それに生があればゼウスと戦う、この理には逆らえないのだ」


「そんな事いうなよぉ、なんとかしてくれよぉ」


駄々っ子のように泣きながら食い下がる俺の(もと)に、ヘッカを初めフェアリーも後方部隊も集まっていた


「梳李…ごめんなさい、私に力があれば梳李の望みを叶えてあげられるのかもしれない、だけど一緒に泣く事しかできないの」ヘッカ


「わかったよ!いい大人がいつまでも泣いていても仕方ないよな」


「テューポーンを回復する!それで攻撃するならまたしてこい!また倒してやる!」


「何を言っているんだ梳李」ゼウス


「気に入らないならゼウスとポセでとどめを刺せ!俺達はこの件からは手を引く」


「テューポーンさんさ、俺はあなたを斬れないよ。回復するからさ…この星の生命にだけは手を出さないでくれないか、ガイヤとゼウスの因縁に振り回される事があなたの使命であるなら、それだけやれば他を巻き込む必要はないだろ?」


「梳李…わかったそれは約束しよう、それにお前が流してくれた涙には俺も感じるものがあった」テューポーン


「ヴィーナスとフェアリーは俺の魔力を根こそぎ持ってって良いから回復しろ!」


「わかりました」フェアリー


「了解です、主」ヴィーナス


2人に強く抱きしめられ魔力を吸い取られたが、温かい気持ちで満たされるようだった




目が覚めたら桜の下でフェアリーに膝枕をされてヴィーナスが横に寄り添っていた


「あれ?俺は長い夢を見ていたのか?それとも死んだのか?」


「現実ですよ」フェアリー


「この前死ぬ時はって話をしたまんまだったから…あのまま寝てしまって長い夢の中に居たのかと思ったよ」


「あのあとゼウスとテューポーンは梳李が存在する間は休戦という事で話は終わりました、とうとう神の理までも変えてしまわれたのですね」フェアリー


「それは勝手にやつらがした約束であって、俺には関係ないよ」


「一番難しいきっかけを作ったのは紛れもなく梳李ですよ、私は梳李に支配されている事をとても幸せに感じました」フェアリー


「梳李、目覚めたの?私は梳李が大好きだよ」ヴィーナス


「どうしたヴィーナス?いつもと雰囲気が違うじゃないか」


「テューポーンの為に泣いている梳李を見ていたからでしょうか?魔力を貰っている時に梳李の色んな記憶や感情が流れ込んで来て、従者である事に代わりはないのだけど、女の子になりたくなったのですよ」ヴィーナス


「そっか!俺達は自由でいいな!」


「はい!」



第100話に続く


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