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第98話 テューポーン襲来


「梳李!東へ行ってくれ!」ゼウス


「東に2万kmほど進んだ所に大きく広がる山脈と高原地帯がある、長い年月をかけて削り取られた峡谷も多く、人が立ち入れる場所ではないが、そこから嫌な気配がする。ヘカテーにも確認してみてくれ」ゼウス


「ヘッカは東の山脈と高原地帯になにかの気配を感じるか?」


「私にはわからないな、ゼウスが感じると言うのならこの星の生命ではない存在じゃないだろうか」ヘッカ


「わしは感じるぞ!とても嫌な感じがする」ポセ


「エンジェルは漆黒とスピリットに緊急招集を掛けてくれ!装備の手入れと確認だけしたら早速東の山脈まで行くぞ!」


「申し訳ないけど今回はみんなは待機していてくれ、ヘッカとフェアリー、エンジェルとヴィーナス、ポセとアンピ、漆黒とスピリットで行ってくる。距離が遠く何日かかるかわからないけどなるべく早く帰ってくる」


漆黒とスピリットを緊急招集した事で何かを感じてくれたのか異議を唱える者はいなかった。みんな心配な表情を隠し出陣の送り出しは元気にしてくれた


「いってきます!」


「早く帰って来てねー!」


いつまでも手を振っていた


「ヘッカ!2万kmは遠すぎるだろ、アルカーヌムで飛べないのか?」


「全員を運ぶ事は難しいのと、私は気配を感じて居ないから場所がわからない」ヘッカ


「ポセにはそういう能力はないのか?」


「わしは海人(うみんちゅ)だからのお」ポセ


「最近よく出かけてると思ったら神界でヘッカのコレクションを見てるのか」


「な、なぜじゃ?そ、そんな事はないぞ」ポセ


「嘘をつく者を従者にはせんぞ!クビで良いのか?神様だろうが何者だろうが嘘をつく者は卑しく必ず裏切る、その場を取り繕う為の方便としても使うな」


「は、はい!なぜわかったんじゃ」ポセ


「うみんちゅは地球にある日本の沖縄の言葉だ!お前が使う言葉じゃないだろ、バレないわけがないよな」


「別に神界で休憩するのは自由にしたらいいから、嘘だけはやめろ、嘘をつく者を俺は仲間にはしない、不死のポセでも再生するのに何万年もかかるくらいに切り刻んで、パーツをあちらこちらに隠して回るぞ」


「わかりました、二度としません」ポセ


「ポセはバカだなあ、私達が梳李に話をする時は、それが多少わがままでもまっすぐに気持ちを伝えてるのを見てなかったのかい」ヘッカ


「見てきたが理由はわからなかった」ポセ


「梳李と戦ってわからなかったのか?梳李は良くも悪くも常に最短で最速でまっすぐだ」ヘッカ


「久しぶりだから懐かしい香りがするけど、今の話の流れにぶっ込む要素はなかったと思うのだが」


「ごめんごめん、久しぶりにやりたくなっちゃって、そんな事よりポセ!梳李はまっすぐだからこそ誰よりも温かいが、ひとたび敵と認識するとそれを討つ事に迷いがない、優しい者ほど非情になれるものなんだ、お前も神ならわかるだろ」ヘッカ


「そうじゃった…わしも平和ボケしておった、ほんとうにすまんかった許してくれ」ポセ


「俺はもういいよ、だが2度目は言い訳をする暇も与えないと心得てくれよ」


「ほっほっほっ!やっぱり梳李は良いのお」ゼウス


「いい所に出てきたな、ゼウスは全知全能なんだろ?移動手段は他にないのか?エンジェルが飛ばしても時間がかかりすぎる」


「全知全能だがこの星では使える能力が限られている、東の山脈に連れて行く事はできないが、奥様方が心配なら時間の流れは少しゆっくりにしてやる。それなら星の外から出来るからな」


「それならそうしてくれないか、早く帰ってあげないと心配させるのは申し訳ないからな」


星の時間はゆっくりにしてもらったが、実際に移動している俺達の体感時間は変わらない、時速で言うと200kmくらいで飛行するエンジェルも飛び続ける事は出来ないので、漆黒とスピリットと交代しながら先を急いだ


幸いにも俺達は休憩を取る必要はなかったので24時間飛び続けて4日程で目的地に到着した


「こうやって見たらこの星も大きいんだな、それにもう少し行ったらスピリットのオアシスがあるんじゃないか?」


「地球よりは少し小さいけどそんなに変わらないよ、ここはセントラルから約1万5000kmだね、スピリットのオアシスはもう少し先だよ」ヘッカ


「未開拓の地域はとても広いんだな」


「それより梳李、あそこを見て」ヘッカ


「巨大な人影があるよ」ヘッカ


「あれはなんでしょうか?私にもわかりませんね」フェアリー


「大変じゃ!兄上!テューポーンが居ます!完全体ではありませんが、100mくらいにはなっています!」ポセ


「なんじゃと!テューポーンじゃと!」ゼウス


「なんだよー、また持ち込み案件かよ」


「す、すまん、わしがここが居心地が良くて仕事をサボっていたせいじゃ」ゼウス


「さぼるなよ!」


「ヘカテーよ、アルカーヌムを貸してくれ、わしも戦いに参加する」ゼウス


「わかった」ヘッカ


「助かった、梳李…すまんな、あれはテューポーンと言ってわしの宿敵なんじゃ、本来のあれは山脈を跨ぐくらいの巨大な体躯でな、あの程度の時に気がついて良かったよ、それにあれはわしに用があって来ただけじゃ、この星に害をなす者ではない」ゼウス


「とはいえゼウスもこの星では、民に最高神と認識されているわけでは無いのだから、全力は出せないのだろ?」


「そうなんじゃがわしのせいで迷惑をかけるわけにはいかんよ」ゼウス


「みずくさい事を言うなよ、寂しいじゃないか、俺とゼウスとポセ、ヴィーナスとエンジェルと漆黒とスピリット。急ごしらえのパーティ編成だけど、レイドといこうじゃないか」


「ヘッカとフェアリーとアンピは後方で待機してくれ、敵が悪すぎる」


「わかりました」フェアリー


「ヴィーナスとエンジェルと漆黒とスピリットは遠距離から補助攻撃に徹して近寄らないようにしてくれ、直接対決は俺達3人でやる」


「了解しました!」


「ポセには水をやるから受け取れ、真水と海水と温泉となんでもいいぞ」


「海水をください、大量にくれたら身にまといやつと同じくらいの体躯になります」ポセ


「それで良いけど、補助攻撃の邪魔にはなるなよ」


「心得ています、わしもパーティの戦いにもなれて来ています」ポセ


「テューポーンよ!よく聞け!この星はお前とわしの戦場にして良い場所ではない!何時でも挑戦には応えてやる!引け!」ゼウス


「くっくっくっ!俺は母上ガイアの悲願の為にのみ存在している、お前が力を発揮できない好機をのがすはずがなかろう」テューポーン


「テューポーンさんとやら、引いて貰えないのなら俺達も参戦する事になるがかまわないか?ゼウスには世話になっていてな、あなたになんの恨みもないのだが捨て置くことは出来ないし、この星を戦場にされては困るんだ」


「くっくっくっ!人間ごときが何ができる!参戦したくば勝手にしろ!だがわしもお前に恨みはないが来ると言うなら容赦はせんぞ」テューポーン


ギガースをも遥かに凌ぐ巨大な体躯をしたテューポーンとの戦闘がまさに始まろうとしていた、幸いにも文明からは遠く離れているため、多少地形は変わるだろうが被害は出さずに済みそうだ


しかし神々というのは執念深いと言うかなんというか、ひとつの使命の為に生きるとはなんと不自由な事だろうか、美しい景色を見て感動し、悲しい事があれば泣いて、楽しい時は笑い、嬉しい事があると幸せな気持ちになる、創造した神は人間に自分達の理想を反映させたのだろうか


なんにしても実はゴルゴーンにも目の前のテューポーンにも哀れみを感じている、守るべき世界の為に敵と認識せざるを得ないのだが…



第99話に続く



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