第96話 ゴルゴーンの対処法
「ゼウス様はおいでですか」ヘッカ
しーん…
「おーい!酒飲むのに誘いに来たぞー!」
「おお!梳李か!待っていたぞ!」ゼウス
「なんでやねん!」ヘッカ
「ヘッカも一緒か」ゼウス
「私の声も聞こえてたやろがい!」ヘッカ
「冗談じゃよ」ゼウス
「花見と行こうか」
「月夜に桜の下で飲む酒は最高じゃな」ゼウス
「みんなものんびりしたら良いからな、乾杯だけしておこうな、奥様パーティの大勝利に!乾杯!」
「かんぱーい!」
「奥方は何かの記念か?」ゼウス
「今日は大森林の中にある小さいダンジョンをひとつ攻略して来たんだ、みんなのパーティでさ、その初陣の初勝利に乾杯したのさ」
「ほう!この容姿で戦闘もできるのか?素晴らしいのう」ゼウス
「俺の自慢だからな」
「ほっほっほっ!相変わらずまっすぐじゃのう!よきよき」ゼウス
「それがさそのダンジョンでゴルゴーンに絡まれたんだよ。それで対処を相談にきたんだ、ヘッカの話を聞いてやってくれないか」
「まずダンジョンの様子を聞いても良いか」ゼウス
「全部で20階層の小さいダンジョンだったのですが、11階層から20階層まで瘴気に覆われていました」ヘッカ
「そうか…どうやってゴルゴーンがそのダンジョンに辿り着いたかはわかるか?」ゼウス
「解析結果が出れば詳しくわかると思いますが、ダンジョンコアに何かしらの方法でアクセスしたようです」ヘッカ
「ポセは思い当たる節は無いのか…ゴルゴーンはお前の事も恨んでいるだろ」ゼウス
「最近ツキジの街にも顔を出しましたが、とくに変化はなかったのですが」ポセ
「魚が石にされていたり、海人族で石にされていた者はいなかったのか?」ゼウス
「そのような事はなかったです」ポセ
「ヘカテーが月の女神でもあるように、あやつもまた元々は月の女神、ヘカテーに対する嫉妬も大きく執念深い」ゼウス
「いっそこっちから行って滅ぼして来ようと思ってるんだがダメか?ハルパーとアテナの盾を貸してくれよ」
「解析の手助けをするのは構わんが、その話はもう少し待ってもらえないか」ゼウス
「ゼウスがそういうなら待つしかないだろうけど、被害が出てしまったら俺は平常心を保てないと思うけど」
「そらそうだな…しかしな梳李、ゴルゴーンは一応わしの息子ペルセウスが討伐する予定なのじゃ、少しだけ待って欲しいのだ」ゼウス
「わかったよそれならフェアリーがコアの解析をしているから、それに力を貸すことと、ゼウスの全知全能の力でこの星のゴルゴーンの形跡だけは教えてくれないか、漆黒という黒竜がギガースに襲われて危うく絶命する所だった事もある、今回のダンジョンでもゴブリンキングが手下にされていた、ゴルゴーンが何者かは知らないがこの星の生命に、触れられる事が許せないんだよ」
「梳李の気持ちもわかる、それならこれではどうだ、この星に何かしたらその場所と状況は素早く教えるし、永遠の時を生きる神の事だゴルゴーンは可死ではあるが寿命はない、時を稼がれては厄介だ。梳李が歳をとって寿命が来ても、お前の意思をわしが継いで、永遠にこの星は守護すると約束しよう」ゼウス
「そんな約束までしてくれるなら、俺にはなんの異論もないよ、ヘッカはどうだ?」
「そもそも私はゼウスの意思に逆らう事はできないよ」ヘッカ
「ちなみにわしもだよ梳李」ポセ
「最高神ゼウスが約束してくれたんだ、大船に乗ったつもりでいようか」
「それまでは瘴気による汚染やギガースとはいつ戦う事になるかわからんぞ、梳李には損な役回りをさせる事になる」ゼウス
「それは気にしなくていいよ。なにもないと退屈するしさ、危機感はあった方が鍛錬のしがいもあるってもんさ」
「かはー、梳李は簡単じゃのー」ゼウス
「俺自体がイレギュラーなのだから、難しく考えてもわからないしな、ましてやヘッカもポセもゴルゴーンもゼウスもみんな神様なのだから、俺が意見のできる立場にもないしな」
「梳李なら時が到来して神々の戦争に参加したら、神にもなれるだろうに」ゼウス
「この前言ってた力を借りるかもってやつか?ゼウスには世話になっているしアイギスも貰った、それに俺は仲間の頼みは余程理不尽でない限りは手を貸すさ、そんな当たり前の事で神にされたら申し訳ないよ」
「生命をかけねばならない戦場に行くのを、仲間の頼みならちょっとそこまで散歩に行くようなノリで参加すると言うのか」ゼウス
「当然だな、できる事なら100年以上あとにしてくれると助かる、ここにいる10人の妻には心配させたくない、あとヴィーナスは連れていく」
「梳李には自我はないのか?そんな時でも自分よりも妻や仲間を優先すると言うのか?」ゼウス
「それが自我なんじゃないか?心配する顔を見る事も、なにかあって涙を流す顔を見る事も、俺が嫌だからな」
「かはー、素質は見抜いておったが、実際話しをしたらそこまでか、ヘカテーがぞっこんなのも理解出来るな」ゼウス
「ゼウスは何を言っているのかな?」ヘッカ
「隠さなくてもいいではないか、わしはお前が生前の梳李の部屋の物を全部神界に持ち込んで、娯楽以外の物を眺めて微笑んだり、怒ったりしてる姿は確認している」ゼウス
「なにを眺めてたんだ?」
「卒業アルバムとやらで委員長をみて怒ったり、子供の頃の作文とやらを読んで微笑んでおった」ゼウス
「それを梳李に言うのは反則だぞ!」ヘッカ
「いや!俺が恥ずかしい、だけどそんなふうに母さんみたいにしてくれていた事は嬉しいよ。女神の心が持つ空よりも大きく海よりも深い愛情って事だろ?なんかありがとうな」
「はじめは地球でみた梳李の生命の輝きがどこから来るのか知りたいのと、笑いのセンスを磨く為にも色々と研究してな、その時に色んな物を見たんだよ、いつの間にかこの者と一緒に居たいと思っていたんだよ」ヘッカ
「とくに優秀な作文も手紙もなかったと思ったけど」
「スマホとやらに母親の様子を伺うメールが残っていた、とても素敵な温かい文章ばかりだったよ」ヘッカ
「ああ…それかあ、そういえばおふくろよりも先に死んじゃったんだな、俺自身の人生に後悔もなにもないけど、おふくろを泣かせた事は少し気が重たいな」
「親族の前ではこの親不孝ものが!ってぷんぷん怒っていたけど、1人になった時は写真を抱きしめて、言葉を押し殺しながら呻きを漏らして泣いていた、母親の愛情の前には、神の愛などとても小さく軽いものなのじゃないかという気持ちになったよ」ヘッカ
「母ひとり子ひとりだったからな、子供の時に裕福な同級生が持つ高級自転車が欲しいと駄々をこねると、少し困った顔をしてうっすらと涙を浮かべていた、その時の顔が忘れられなくてさ、貧乏でもこんなに想ってくれる母ちゃんがいるなら、物がなくて同じ服ばかり着ていても、なにも恥じること無く堂々としようと思ったんだよ。大人になったら役目は交代だと思っていたからな、離れてからは頻繁に連絡を取っていたんだよ」
「梳李が母親を思う気持ちに溢れていたよ、とても温かい気持ちになったんだ」ヘッカ
「その話は恥ずかしいからもう終わろうか」
「うおおぉぉー!いい話じゃなー!」ゼウス
「号泣するほどの事か」
「わしら神が絶対の存在でも母親の愛には勝てんのう」ゼウス
「うちのおふくろがそうだっただけで色んな人がいるさ、ただそんなおふくろが教えてくれた、強いと言う事は優しいと言う事だと、他人を蹴落として自分が何かを得るよりも、騙されて泣いていろと言うような人だった。多分今頃はケロッとして幸せに暮らしているさ」
「梳李ー♡」奥様方
やっぱりこの話題には反応するよなあ、作る気はあるんだけど、俺が転生者からなのかできないんだよな。今度フェアリーに解析してもらお
「はいはい…とりあえずゆっくり飲もうな」
第97話に続く




