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第91話 セントラルダンジョン60層地上


セントラルダンジョン地上60層クロコダイルサラマンドラ群生地


「熱いな…みんな平気か?」


「やばいですね」ファニー


「無理っぽいです」レオット


「それならここで待機だな…プロテクションの中をアンピに冷やしてもらえ」


「助かりますー」サラ


「エンジェルとヴィーナスは平気だな、ポセは?」


「わしもやばいです。蒸発しそうじゃ」ポセ


「はははっ!蒸発か…それなら待機していろ」


クロコダイルサラマンドラ…名前の通り火を吐くワニである、アリゲーターよりも大きく凶暴で口からメラメラと炎を上げている、この階層にはその熱が蓄積されているのかとても熱い


「あれ…凍るか?」


「やってみるよ」エンジェル


氷のブレスを噴いた、辺り一面のクロコダイルサラマンドラが凍りつき沈黙している


「火山のサラマンダーよりもよく凍るな」


次の瞬間、氷の塊になっていたクロコダイルサラマンドラが大爆発した


「ヴィーナス!大丈夫か!」


「あぶないところでした、まだどきどきしています」ヴィーナス


「それはそうやって伝える必要はあるの?」


「はい、どきどきです」ヴィーナス


「爆発するのはやっかいだな、フェアリーには作戦はないか?」


「そうですねパウダーという魔法でこの階層を満たせば、粉塵爆発を起こしてクロコダイルサラマンドラは全滅しますが、ダンジョンも穴が空いて階層が繋がってしまうかもしれませんね」フェアリー


「冗談だろうけど、さすがにそれはまずいだろ」


「ふふふっ、冗談ですよ。梳李の青と赤にエンジェルの風のブレスを(まと)わせて、クロス斬りで斬撃を飛ばしてみてもらえますか?」


「わかった!エンジェル頼む」


巨大な風刃が無数に拡がり辺り一面を切り刻んだ


「二刀流風刃剣撃を覚えました」


「アルティメット種になったエンジェルの風は凄いですね。それに梳李もまた新たな剣術スキルが…」フェアリー


「風のブレスじゃダメなのか?」


「ブレスと風刃は違うから無理だよ」エンジェル


「共同作業♡素敵ですね」フェアリー


「結婚式のケーキカットみたく言うなよ、切ってんのはクロコダイルサラマンドラだよ」


「ふふふっ」


「共同作業いいなー!」アスコット


「まてまてまてまて!」エンジェル


「エンジェルはそれ気に入ってるの」


「ちょっとね」エンジェル


「それよりこいつがドロップする皮は熱に強くて良さそうだな、逆に防寒具にもなるんじゃないか?あと特殊な鉱石も良さそうだな」


「ほんとですね、皮は厚みを調整する事で防具にもコートにもできそうですね、鉱石はアダマンタイトですね、軽くて頑丈で良い剣が打てますよ」フェアリー


「それなら在庫しておくか…エンジェル悪い!半分ほど減らすからたくさん風ちょうだい」


「はーい」エンジェル


群生地だから暑い事を除けば、クロコダイルサラマンドラはアルティメットオークのように大きくはないので討伐自体は苦労しなかった、もっとも風刃剣撃がなかったら風が無数の刃となって斬る事はできないから、いちいち爆発されたかもしれないけど


「今回は私の出番はなかったので私は梳李に癒しを」ヴィーナス


「確かに癒しをくれてるけどヴィーナスは相変わらずくっつきたいのね。ユニコーンの時から上手くくっつくなあとは思っていたけど、女神が嫉妬するくらいの美女になったのに変わらないな」


「野営して身体を寄せあって寝ていた時の夢は今でも良くみますよ、多分エンジェルもそうですよ、魔物だった私達は同族の愛情みたいな物はあっても、温もりを知りませんでしたから…安心感というとても素敵な物を梳李からもらっていたのですよ、いまでもそうです」ヴィーナス


「確かにそうだったね、私も梳李に乗っかって寝てた時の夢はよく見るよ」エンジェル


「はははっ!懐かしいな」


「なんかずるいです、私達の知らない所の知らない事を話してると妬けます」サラ


「セントラルに来たばかりの時の話さ、それに冒険の始まりはヴィーナスとフェアリーと3人だったんだよ、エンジェルにはヘカテーの守りを頼んでいたから、みんなの子供の頃の話をしているのと同じだから、ヤキモチを妬くような事じゃないんだよ」


「確かにそういわれると、なんでも知ってる事の方が変ですね」サラ


「知りたいとは思っちゃうけどね」アン


「凄いねこのコート暑いのも防いでくれるみたい」アスコット


「試しにさっきの皮で作ってみましたが寒さからも暑さからも身を守れるとは便利ですね」フェアリー


「これはエリウスの店で売れば大ヒット間違いなしね」イザベラ


「それはやめようね」


「どうしてですか?また商会が大きくなるのに」イザベラ


「そうだなあ、ほんとを言えば街頭テレビでも量産する事も出来るんだよ、小型化すれば精霊術士がついてなくても枠に精霊を宿らせておけば可能なんだ、転移門を公にしないのと同じ理由でな、便利な世の中にしようとは思っているけど、便利すぎる事にはタイミングが重要だと思うんだよな。この皮が売れたらクロコダイルサラマンドラを討伐しようと、無理をするギルドが出てくるかもしれないし、便利さの裏に危険のある事は避けたいんだよ」


「確かに転移門の事はアスコットからも聞きました、流通の概念が根底から覆ると確かに馬車が必要なくなり失業者もたくさん出ると思います、それなら冷蔵庫や掃除機はなぜ普及させたのですか?」


「病気の原因には細菌やダニ等の目に見えない物の存在が大きいんだよ。それらがどうやって増殖するかと言うと、常温で保存している食料や不衛生にしている部屋の隅っこのジメジメしたところで増えていく。人に感染して、人から人に感染していく、要するに伝染病の原因だ、ヘカテーの地下排水も衛生管理を徹底しているのはネズミも病原菌をばら撒く要因だからなんだ。そういう事は便利とか不便とかいう前に対策した方がいいだろ?」


「そうだったのですね、無知ですみません」イザベラ


「あやまるような事じゃないよ、不思議に思う事は良い事だ、納得したら同じ方向を向けばよい。そういうバランスで考えたら暑さも寒さも防ぐ皮はやばいだろ?」


「確かに」イザベラ


「特別なプレゼントには使うけどな、みんなの分は作るからな、頑丈だから防御にもなって優秀だ、ちなみにみんなに付けさせているブレスレットも装飾品じゃなくて魔道具なんだよ、防御特性を付与してある」


「私達をそんなに特別扱いしてくれるのですね」イザベラ


「当然だな、鉱石も皮も相当数確保出来たから今日の探索はここまでにしよう」


最近奥様方とは話をする機会が増えた、いつも一緒にいるからと言うのが一番わかりやすい理由だけど、どんなに相性が良くても人は簡単には通じ会えない、特に男と女は同じ人間と言えども生物学的に言って違う生き物だと思う。物事の考え方も感じ方も違うし、ましてや夫婦は違う環境で育った者同士だから、意見が食い違う事は当たり前の事だ、梳李が言っている事だからと、無理やり気持ちを押し殺されるよりも、わかりあえるように話をする事の方がとても素敵な関係に思えるし、食い違う事がまた楽しいんだよね



第92話に続く


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