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第89話 セントラルダンジョン60層地下


いよいよ本格的なダンジョン未到達領域への探索が始まった。俺達は水中船に乗り込み水竜を動力にして滝を使って下層に降りていった


徐々に大きな魔物が多くなっていく、水中でも船を目掛けて攻撃してくる事も増えてきた


「一度この辺りで肩慣らしといこうか」


ポセが水竜に停止命令を出す、海神の力なのか水上に浮上した水竜はその場で停止した


「水竜を自由に操れるのはいいな」


「一応わしも海神ですからな、それに梳李の指示も聞くとおもうがな、リュウグウノツカイとはそういう存在だった」


「そうなのか、なら言ってみるか…水竜さん楽にして待っていてくれ、重たければ一度船を外そうか?」


「リュウグウノツカイ様ですか、懐かしい気配です。御心使いに感謝します」


「な、意思の疎通もはかれたじゃろ」


「ほんとだな、それにしても60階層まで一気にきたけど魔物がデカイなあ。ダンジョン内部の天井も高いし広いし、自分が小さくなったような錯覚に襲われるな」


「こんな中でもエンジェルは最強なんだよな…なんか凄い存在だな」


「私のしっぽを掴んで振り回しておいて凄い存在と言われてもさ、返事のしようがないんだけど!」エンジェル


「はははっ!ごめんごめん」


「アルティメットオーク達に気付かれましたよ」フェアリー


「ポセからやってみるか、他のみんなはプロテクション内に潜んで居てくれ」


「露払いはわしの役目じゃな!光栄ですぞ!」


オークもアルティメット種なんてものが存在するのか…アルティメットが何体もいる事に違和感があるのだが、まあとても強いと言う事なのだろうな


ポセは戦闘開始早々トライデントを投げつけた、固く分厚そうな皮で身を包んだアルティメットオークだったが、2体3体とまとめて貫通させていく、トライデントが手元に戻る時には5体程のアルティメットオークがもんどりと地面に倒れた


「どうだ?手応えは?」


「意外と固いですよ、それに倒れたオークを共食いしていますな」ポセ


「天敵が現れた時に対抗手段で共食いする魔物のようじゃ、どんどん強化されていく」ポセ


「そういう個体はどうやって倒すんだ、全滅させるのは良くないだろ?」


「そうですね、全滅は良くないですが、全滅させなければより強い個体が繁殖します。判断の難しい所ですね」フェアリー


「弱体化させて現状維持する方法はないのか?」


「少しお待ちください、いま作戦を考えております」フェアリー


「わかった!それならとりあえず俺が防戦してくるから、作戦が見つかったら支持してくれ」


アルティメットオークとやらの攻撃を全て受け止めた。とても訓練になる、アイギスで守られている為におそらく失敗する事はないのだけど、斧や大槌で武装されたアルティメットオークの攻撃は重く、少しでも油断すると青や赤も折られてしまいそうな速くて強力な打撃だった


ガツッ!ガン!ドスッ!


いなした大槌が地面を叩くと綺麗に穴が空いた、体長も15mくらいあるのだろうか、その身体から振り下ろされる大槌の空けた穴は、俺がすっぽりはまれるくらいの大きさはある


「エンジェルも漆黒からもらった5代目の鉤爪を試しておくか?頭とか心臓付近とか致命傷を避けるならいいぞ」


「そうだね!やってみるよ」


エンジェルのスピードは俺の目でもやっと追えるくらいまで成長していた、むしろいつもは本気を出してなかったのだろうか…こめかみ辺りに軽めの回し蹴りを入れて怯ませたあと、新装備の鉤爪で腕を斬る、ボトッ!ボトッ!と鈍い音を立てながらアルティメットオークの腕が落ちていく、何が起こったか理解出来ていないオーク達も痛みに襲われて断末魔を上げて吠える


両腕を切断されたオークは這いつくばり自分の腕を喰っている


「エンジェル!使用感だけ確認できたら一度下がろうか!腕まで喰ってやがる!」


「梳李!残念ですがとりあえずこの群れは全滅させる以外に方法がありません!」フェアリー


「わかった!エンジェル!ヴィーナス!ポセ!全滅だ!行くぞ!」


エンジェルは白竜になりブレスを放射し、ポセは水場から自分とトライデントを巨大化させて振り回した。ヴィーナスのケラウノスによる雷撃も触れたオークが絶命した事を認識できないような速さで撃ち放たれていった。それらの攻撃を交わしながら、久しぶりに二刀流空中殺法を駆使して、撃ち漏らした個体のみを木の葉斬りしていった


およそ60~70体居たアルティメットオークの群れは全滅した


「全滅させるといつも通りドロップアイテムとゴールドと魔石になるんだな、途中で喰ってたから、深層の魔物は消滅しないのかと思ったよ」


「いえそれがさっきのオークの恐ろしい所です。生きた状態を食べていたのです。それで個体から魔力や体力、筋力など全てを飲み込み強化種になろうとしていました。全滅は残念ですが亜種に進化すれば、他の生態系も壊れる為に致し方ありませんでした」フェアリー


「とりあえずオークの群れは沈黙したから、食事場や寝床を探索しておこうか」


「もしかすると子供達が居るかもしれませんからそれが良いでしょうね」フェアリー


「さすがにあれだけ凶悪な魔物を見たら怖かったし、その魔物に攻撃する梳李達も少し怖かったね」ミーティア


「ついてきた事を後悔したか?」


「それはありません、まだなれないだけです。ただ…まだ震えています。他のみなさんも」ミーティア


「探索する前に少し休もうか、いまテーブルとイスを作るからそこで休もう」


確かにみんな震えていた、当然と言えば当然なのかもしれない、元々竜とユニコーンのエンジェルとヴィーナスはいつも共に戦ってきた事もあって何に怯えているのか理解できない様子だったが、元々普通の人間だった俺にはなんとなく理解できた、怖いと思う事の方が当たり前の感情なのだ


「みんな大丈夫かい?」ヘッカ


「みんなが怯える気持ちは良くわかるけど、星を守ったり神々の(いくさ)というのはこの程度では終わらないんだよ。そのうちエンジェルにもヴィーナスにもポセにも勝てない相手が現れる事は星の生い立ちから考えても必然なんだ、対抗手段が梳李だけになった時、それでも私達は泣きながらでも梳李を見続ける義務がある」ヘッカ


「私はそういう覚悟で梳李のそばにいる、女神と言えども非力なんだよ」ヘッカ


「わかっています、私は目を背けたりしません!」ピーシス


「私は帰ってきた梳李を胸で挟むだけですよ。ダンジョンブレイクが終わったあとも梳李は味わっていました」アリアナ


「胸が重要って事?梳李!」アスコット


「俺はなにもいってないよ…ちなみに好みをいうなら大きいのも小さいのもどっちも大好物だからって!なにをいわせる!」


「だけど…街を歩いていても大きい人とすれ違うと胸見てるじゃん」レオット


「それは目がいくだけで、別に良いなーとか思っている訳じゃないんだよ。アスコットだってマシューが少し薄毛だから話をする時に良く頭を見てるじゃん!別に悪気もなければ特に何を思うわけではないのだけど、ただ目が行っちゃうって事があるだろ?」


「確かに私も父上と話をする時は目を見るより頭をみますけど…」アスコット


「同じ事だから気にするな、というかさっきまでみんな震えてたのに俺達はどうも締まりがないよな!」


「ふふふっ!それが良いのじゃないですか」フェアリー


「しかしあれだな、女神としてひとつだけいっておく!胸に限らず人にはコンプレックスがある物だ、何も気にしないのは梳李くらいのもんで、大半の人は何かしらあるもんだ、もう少し目がぱっちりしていたらなとか、鼻が高かったらなとか、私だってもっとナイスなギャグでたくさんの人を笑わす事ができたら良いなとおもっている。そういうコンプレックスは人から見てもわからないけど、その人にはあるものだ。だから今後そういう話題はなるべく控えよう」


「というかヘッカはもう少し崇高なコンプレックスを持とうな」


「そうだね、私達ドワーフも背が低いからアスコット達を見ていると羨ましいもんね」アン


「それを言えば私もセントラルに住み出した頃は耳を隠せないか考えた物よ」ミーティア


「確かに私も他の種族を見て、獣耳やしっぽが無くて良いなあって思った事はあります」レオット


「みんなのコンプレックスはわからないけど、俺はそのままのみんなが好きだから、ありのままで良いからな、外見じゃなくて人として良くあろうと努力してる姿の方が魅力的に見えるしな」


そのあとオークの住処を探索した所、子供の個体が群れで生息していた、60層を静かに探索したら他の群れも見つけたので、とりあえず絶滅はなさそうなので安心した。一応魔物はリポップするらしいのだが、どんなに討伐対象だったとしても生物に対しては極力優しくある方が良いとは考えている


それにしてもどんどん強力になる魔物、俺の戦力でも最深層100階は無理じゃないだろうか?探索は慎重に進めるしかなさそうだった



第90話に続く


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