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第88話 漆黒訪問


「今は吹雪いて無いだろうけど、漆黒の所にみんなでいけるような防寒着は作れないかな」


「どうでしょうかね、ファニーは比較的寒さに強いと思いますが、ミーティアやアスコット達はつらいかもしれませんね」フェアリー


「新しい素材を開発しようか…それか少し重たくなるかもしれないけど、馬車の車輪に巻いているゴムをさ、薄く伸ばしてローブにしてはどうだろうか」


「あれなら風を通さないから良いかもしれませんね、雨具にもなりそうですし」フェアリー


「まかせて良いか?」


「もちろんです!」フェアリー


「それならそれが完成したらガブリエルに商品化の相談をして、試着と試験を兼ねて漆黒の様子をみんなで見に行こうか」


「次は私達をどこに連れていくの?」ミーティア


「漆黒のところに遊びに行こうと思っているよ」


「どんな所なんですか?」アン


「ファニーの住んでいた北のギガントよりもさらに何万kmも北にある大雪原なんだよ、寒いぞー!」


「私達は寒いのがとても苦手です」オリビア


「ロドリゲスは比較的温暖な気候なので人族はみな寒さに弱いですよ」イザベラ


「そのためにフェアリーが防寒に優れたローブを開発中なんだよ。それが完成してからの話だけどな」


「エルフの国も比較的温暖なので私も寒さには弱いですけど、根性でついて行くわ」ミーティア


「俺達が行った時には猛吹雪でさ、エンジェルが飛行する事も困難な状況だったんだよ。それはそうなる原因があったから今回は大丈夫だと思うんだけどな」


「楽しみですね」サラ


「梳李と共に色んな所に行く事がとても楽しくて、他のファミリーのメンバーに申し訳ない気になるんですよね」アスコット


「みんなはガーディアンズなんだからいいんじゃないか?それぞれ人には役割があるんだよ、俺も含めてひとりでできる事には限りがある、だからパーティやギルドがあって、ファミリーがあるんだから」


「そうなのですけどね、セブンスターズやサメハダ商会の店員や従業員は、少なからず梳李に憧れている者が多いので」アスコット


「それはありがたいことだけどな、時間を共有する事だけが俺の誠意ではないと思うんだよね。アスコット達も俺の傍で俺の世話を焼くことを戦いにしている、俺は強力な魔物が異常発生しないように討伐する事を戦いとしている、店員も従業員もその持ち場を戦場にして戦っている。そうじゃなければファミリーは成り立たないよ」


「それに漆黒の様子を見に行ったら、本格的にダンジョン下層へ向けて出発するから、みんなにもどんな危険が待っているかわからないからな。いついかなる時も万が一に備えて、悔いのないようにしておくんだよ。それほど俺と行動を共にするという事は、死と背中合わせだと言う事を認識しておくようにな」


「確かに改めて言われると、それほどの緊張感の中を同行していると実感するね、領地の事もアンダーソンの事も、いつ戻れなくても良いように常に万全にしとくね」アスコット


ギガントの漆黒の神殿を上空から北上して漆黒を探した、祭壇にはたくさんの食料が供えられていて、ギガントはちゃんと漆黒の守護役を果たしているようだ


「あれが黒竜王様の祭壇ですか?」ファニー


「あの彫刻は迫力があっていいだろ?フェアリーとの合作だぞ」


「梳李がそういうものを作った事は聞いていましたが、巨大な像と祭壇だったのですね」ファニー


「ルシフェルの話だと、代々ギガントが漆黒を守護してきたらしいぞ。なぜそうなったのかと言う経緯は知らないけど」


「建国の時に黒竜王様が現れて、荒れ果てた地を平らに開拓してくれた時の約束だったと思います」ファニー


「そう言われてみれば漆黒は優しい所があるなあ、エンジェル達にも慕われているし、漆黒が虫の息で弱っている時に号泣していたな」


「梳李!その話は恥ずかしいからやめてよ」エンジェル


「恥ずかしくないじゃないか、大切な人の為に涙を流すのは素敵な事さ、家族や親族同士ですら財産を巡って争う時代に、心から心配したり悲しみを持てる人はなかなかいないんだよ。自分の為に涙を流す人はたくさんいるけどな」


「私達は人の持つエゴのような物はない存在だからね」エンジェル


「その割には肉を目の前にすると、我先に食ってる気がするけど、あれはエゴではないのか?」


「いたいところをついてくるじゃない、あれはね活躍した報酬のようなものだから欲望じゃないの、それにみんなの分が足りない事はないのをよく知っているから…もしも全員に行き当たらないくらいの量しかなかったら、ちゃんとバランスは見るんだよ」エンジェル


「ほんまかいな!」


「ふふふっ!梳李!エンジェルに意地悪を言ってはダメですよ」フェアリー


「まあそのなんだ梳李、それも愛嬌なんだよ」ヘッカ


「実際この星を古の時代からずーっと守護してくれていた、私は美味しそうに肉を頬張るエンジェルを見ると、こんな時が来るとは夢にも思わなかったが、ほんとうに良かったと思えるんだよ」ヘッカ


「面白いよな、神々は自分の役割に忠実である事が真理とされて…それは何物にも妥協を許さないエゴイズムで出来ていて、守護者はただ役割を忠実に果たそうと献身する。リュウグウノツカイに触れた時に、孤独や苦労という…(とき)の思い出が俺に流れ込んで来て、言葉には表す事ができない気持ちになったもんな」


「プロテクションで風は伏せがれているのに寒いですー!」イザベラ


「間もなく到着するからローブでしっかり身を包んでな」


「到着したらかまくらを作ってもらえませんか?」ヴィーナス


「気に入ったのか?」


「あの時は視界もないような吹雪の中を歩いたあとだったので、余計に温かく感じたのかもしれませんが、梳李との思い出と共にかまくらは存在が大きいのです」ヴィーナス


「私達もだよ」ヘッカ


「それなら全員で入れるような大きいのを作らなきゃな」


漆黒は住処に居た、とくに瘴気溜りも見当たらないし、大雪原の温度は低いが、日光に照らされて雪がきらきら輝いて穏やかだった


フェアリーとかまくらを作って、中にはテーブルやイスも雪で作った、オリビアが炎の出るティーポット改良版で温かいお茶を入れ、甘いお菓子と共にみんなに配った


「漆黒も来いよー!」


「梳李じゃないですか!お久しぶりです!」漆黒


「あれ?お前オスだったよな?」


「我ら竜は周期でオスもメスも入れ替わります。繁殖も独自でできますし、たまたまメス周期に入ったのですよ」漆黒


「って事はエンジェルがおっさんになる事もあるのか?」


「梳李!それは暗黙の了解だよ」エンジェル


「なりそうな時はわかるのか?」


「だいたいなんとなくですがわかりますよ」漆黒


「それならエンジェル!変わりそうな時は教えといてくれよ!美男子か?おっさんか?わからんが朝に目を覚ました時に、突然隣に寝ていたらさすがの俺もアイギスでは守りきれない気がする!」


「わかったけど…なんか傷つくー!」エンジェル


「私はメスになれたので、一度あるじに抱きつきたいと思っていたのですよ」漆黒


「少し失礼して梳李を堪能させていただきますね」漆黒


「なんだみんないつものように、ずるいとかリアクションしないんだな」


「なんかねリュウグウノツカイの話も聞いていたし、神々のわがままに振り回される守護者の事は、失礼な言い方をすると不憫に感じるから、どうぞどうぞって気持ちになったよ」アリアナ


「エンジェルは梳李の奥さんになれて良かったね」サラ


「妻にはしないけど、漆黒も寂しい時はいつでも王城に来てもいいからな、ヘッカと念話できるだろう?」


「それが…なんども女神にお願いしたのですが…」


「う、うん…なんだな…この地は一度ゴルゴーンに襲撃されているのでな」


ジー、全員で向ける疑いの眼差し


「ほ、ほんとだよ」


ほとばしる冷や汗


ジーーー、更に向けられる眼差し


「わ、わかったよー!ヤキモチを妬きました!女神あるまじき受け答えをしました!だって私はこの星の唯一神なのに、梳李はちっとも特別扱いしてくれないから、漆黒やスピリットには少し意地悪な返事をしました!」ヘッカ


「そっかごめんな、こっちに来て」


「ヘッカだけずるーい!」一同


「漆黒は良くてヘッカはダメなんだな、少しだけでいいから許してやってくれよ。そういう人間くさい所が女神ヘカテーの良さなんだから」


「だけどヘッカ、寂しい思いをさせた事は謝るけど、漆黒やスピリットとチャイルドにも楽しい時間は与えてやらないとな」


「わかったよ、それにヤキモチは両方に妬いたんだよ。梳李を取られるかもしれないと言う事と、守護者が私よりも梳李を優先しちゃうかもしれないと言う事と両方とも心配になっちゃって」ヘッカ


「だってエンジェルはもう梳李の為にだけ生きているようなもんだし…複雑な気持ちになっちゃって…ごめんなさい!」ヘッカ


「わかるよヘッカ!私達の実家も私が帰る事よりも梳李が来る事に喜ぶもの、なんか?複雑な気持ちになるよね」アリアナ


「うちもなんですよ!手紙が来たと思ったら梳李の様子を伺う内容だけなんですよ!」アン


「多分それは照れ隠しだよ、ほんとはみんなと触れ合える事が嬉しいのを、俺をだしに使っているだけさ、エンジェルだって優先順位を間違える事はないよ。俺には勝てても肉には勝てないかもしれないけどな!」


「わかった食欲に負けるのは我慢する」ヘッカ


「まてまてまてまて!」エンジェル


「あ!スキルツッコミを覚えました」フェアリー


あっという間に楽しい時間は過ぎていった、ダンジョン探索には役者が足りない気はしていたので、漆黒やスピリットも予備のカードとして戦力にできたとこは少し心強かった



第89話に続く


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