第87話 漁師街ツキジ
「ポセイドンの神殿に続く道を、干潮時間に出現する高さにしたのは正解だったな。なんか神秘的でいいじゃないか」
「わしも気に入っています」ポセ
「海人族は随分大勢で移転して来たんだな」
「この星はとても生活しやすく海の恵みも、土壌にも優れています。いままで苦労かけて来たようなので罪滅ぼしですよ」ポセ
「そしたらここにしっかりした街を作って、ヘカテー王国の漁師街として転移門で繋ごうか、セントラル周辺からはとても離れているから、この土地が認識される事は無いだろうからな」
「それならシャチ達も喜びますな、自由に行き来させて良いですか?」ポセ
「かまわないよ、それにヘカテーの海にある塩田もこっちに移して本格的な海の街にして、捕った魚も流通させようか。そうする事で一応は経済運動にも参加できる」
「そんな風にしてもらえるなら、わしらは大喜びですよ」ポセ
「そうだな漁師街ツキジとなずける、ヘカテーから商人が仕入れに来れるように、水揚げした魚類をストックする場所も作ろうな」
「おまかせしますじゃ」ポセ
「あと神殿の名前はポセイドン神殿、海岸はポセイドンとアンピトリテの出会いの海岸と名前をつけておこう。そうする事で何千年か後に交通機関が発達して、この海に他の土地から人が来た時に神聖な地として大事にされるだろう」
「実際は違うのに良いのですか?」ポセ
「そもそも神話や歴史文献なんて物は、後世に残す為に、はじめから着色されているものなんだよ。簡単に言えば宣言した者の勝ちと言う事さ」
「確かに我ら神の真理の考え方もそうなのですが、梳李の思考回路はどうなっているのか…人の存在でありながら、どうやってその事実に辿りついたんだ」ポセ
「柔軟に物事をみたら簡単な事さ、俺の前世に生まれ育った国には俺がいた時代よりも500年ほど前に戦国時代という時代があったのだけど、代表する人物の史実になっているのは、その人物にとって都合が良い事だけだからさ、家来達が後世に主君の名を、輝かしく残す為に努力した後がはっきりと見えるからさ、だから出処によってその逆もまたあるけどな」
「神話や宗教理念も大して変わらないさ、神々の存在も、様々な人間の醜い所や心の奥に潜む真理を、神として擬人化する事で、道徳心に役立てたり、治安維持に利用した結果が、数千年の時を経て神話として残っただけだと考えているんだよ」
「ついでに言えば、俺は事実がどうなのかが、わからない事にロマンを感じている、歴史に出てくる人物がどのような人だったのか想像する事は楽しいし、神話に出てくる神をどのような例えに使いたかったのかと想像する事が面白い。真実を知る事は出来ないから、それがまたいいんだよ」
「やはりゼウスが言った思考回路というのが良く理解できますな、柔軟で自由な発想をもち、先入観に捕らわれる事がない。神のわしが言うのも変じゃが、梳李は大きいのお」ポセ
「思考回路が自由でのびのびしている事は、幸せに生きて行く上では重要な事だからな」
「はっはっは!面白いのー!」ポセ
「では遠慮なくこの海岸の扱いについてはそうさせてもらう」ポセ
「女神ヘカテーと梳李が良く歩いた海岸という事も付け加えよう」ヘッカ
「梳李も歴史に名を残すのか?」
「当然だよ!セントラルに像を建てるのは反対されたからさ、ここなら文明が足を踏み入れるには数千年かかるからね、ポセイドン神殿のように梳李神殿を建造しておきたいくらいだよ」ヘッカ
「それなら神殿は遠慮するけど、梳李と女神ヘカテーが散歩した海岸という話と一緒に、梳李を支えた14人の妻の事を物語にして海人族に、口伝と書物の両方で残してもらって、岩肌には漁師街ツキジの開拓者と、海を愛した仲間として全員の名前や姿を彫刻にして残そうか、物語は少し盛って海から襲来する魔物からその者達が街を守ったと付け加えるのも面白いな」
「いいねえ…数千年の後に研究者がセントラルに残る梳李の功績と共に、ここの史実も発見してどのような繋がりかを研究する…確かにロマンがあるね」ヘッカ
「その時には答えを見つける事は出来ないから、それが良い感じだろ」
「うんうん!わかるー!」ヘッカ
「その時代にはアスコットやアリアナや他のみんなも女神として認識されるかもな」
「なんか緊張しますね」ミーティア
「そうだな…その時にわかりやすくする為に俺達17人のパーティ名を、ガーディアンズ世界を守護する者、としよう!」
「わしとアンピも入れてくれるのか?」ポセ
「当然だな…かけがえのない仲間だからな」
「エンジェルやフェアリーはその時にその時代の人間の様子を見る事があるだろうけど、それもまたロマンがあって良いじゃないか」
「私達は梳李にベタベタするだけの普通の女の子ですけど…良いのでしょうか?」オリビア
「後世に生きる人々が勝手に判断するのだから、良いも悪いもないんだよ。そこにある真実は、みんなが俺を支え続けたって事だけなんだよ」
「確かに学校で習ってきた歴史を学問と思わずに、そういう風に物語と考えるととても面白いですね」レオット
「セントラルダンジョンを巡る世界大戦もさ、アスコットに聞いた話では各種族の持つ特性によって各国が衰退して行った事になっていたけど、実は5代目風魔の小太郎という転生者がいて、裏から戦場を走り回って決着がつかないようにひとりで均等を保っていたらしいしな」
「そうなんですか?」アスコット
「俺が水の上を歩けたり、空中で長い滞空時間を維持できるのも、その人が残してくれたスキルによるものなんだよ」
「500年の時を経てスキルをもらったのですか?」アリアナ
「漆黒をしっているだろ?漆黒の主だった人でさ、フェアリー達と漆黒を助けに行った時に、漆黒の為に最後の思念を忍術使いのその人が残していたんだよ」
「へぇー!面白いですねー」ファニー
「梳李といるとおとぎ話の中に居る気分になりますね」ミーティア
「実に面白い!」サラ、アン
「まだまだこれからも楽しい事はたくさんあるよ。とりあえず海中探索に行くぞー!」
水中船に乗り込み俺達は海中を楽しんだ、綺麗な魚の群れを見ては目を輝かせ、美しいサンゴ礁の群生地を見つけては海の神秘に心を奪われた、途中で見つけたクジラにはその大きさに心臓が止まるかと思うほどビビらされた。ポセも船を引くような身分ではないのだが、みんなの反応を面白がって、調子に乗って色んな所を案内した
ヘッカをはじめ妻は全員、心の底から感動していた、指輪や首飾りも良いけど、これからはなるべくたくさんの景色や、ふれた事のない世界をプレゼントしたいと思った
みんないつもありがとうな!
第88話に続く




