第86話 ダンジョン未到達領域
バリバリ!バリバリ!ドッカーン!
ヴィーナスとポセの雷撃は所狭しと雷光を放ち走り回っている。時に辺り一面を光で照らし、時に魔物を燃やしながら…
「狭い場所で雷撃の共演とかすると眩しいな、少し減らしたら一旦落ち着こう」
「それにポセがトライデントを持った雷撃とヴィーナスがケラウノスを持った雷撃の共演って魔物からしたら地獄絵図だな、俺がくらっても耐え切る自信がないよ」
「梳李に傷をつける事などできませんが、わしは良い感じに攻撃できましたわい」
「やはりケラウノスはしっくりきます」
「エンジェルもやりたかったらもう少し減らしてきても良いよ」
「格闘スタイルでもいい?」
「うんうん、まかせるまかせる」
「だけどあれだなあ、ここ50階層は強い魔物が多いのはそうだけど、ここには水場があるんだな。地下に滝もあって川も流れて、滝つぼもかなり深そうだし、ダンジョンの不思議というか神秘だな」
「川の近くは危険ですよ」フェアリー
「たくさんの水の魔物が生息していますね」ヴィーナス
「ポセとアンピは得意なんじゃないのか?」
「もちろん水中の魔物に遅れをとる事などありませぬ」ポセ
「少し休憩してどうするか決めようか。みんな川から離れて休もう」
水を汲んでフェアリーに解析してもらった
「そうですねえ、成分的には温泉に近いですね。飲めるし体力の回復効果もあります」
「ヘッカはダンジョンに来てなにか感じる事はないの?」
「そうだねぇ、嫌な感じはないよ」
「これがあと50層あるんだよな、ダンジョンて…なんかすごいパワーだな」
「少し減らしてきたけど逃げられたー」エンジェル
「あれじゃないか、水を飲みに川に近寄ると水中の魔物に襲われるから、危機に対して敏感なんじゃないか」
「それにケルベロスはウルフ並に群れているし、ジャイアンオーガやサイクロプスもいるけどかなり大きいな、水中の魔力のせいでみんな亜種になるのかな」
「少しアンピと2人で水中の魔物を倒してきますよ。手に負えないくらいのがいたら、水上にはね上げるので、やっちゃってください」
「俺もリュウグウノツカイがあるから助太刀できるけど…万が一こっちに魔物が来た時はみんなを守りたいから、とりあえず水中は2人に任せるね」
ポセとアンピはまさに水を得た魚…もとい水を得た神となって大暴れしていた。穏やかだった川のせせらぎは、土石流のように力強い流れになり、滝は逆流するかのように水しぶきを上げていた
「ヘッカ…」
「なあに?」
「もしかしたらポセとアンピはストレスでも貯めてるのかな」
「久しぶりに楽しんでるだけだよ。梳李が砂漠で暴れた時とは違うよ」ヘッカ
「ふふふっ!そんな事もありましたね」フェアリー
「なんの話?」アスコット
「結婚した時に、みんなに気を使いすぎて、少しだけストレスを感じた事があったんですよ」フェアリー
「なんかごめんなさい」アリアナ
「みんなが悪いわけじゃないから気にしなくていいんだよ。あの時は自分の弱さからみんなの期待に応える事が辛かっただけだからさ」
「そうだよね頼られる方は、いつも緊張してなくてはいけないものね」ミーティア
「ほんとに気にしなくていいよ、みんなが自分らしく居てくれる事が俺の願いでもあるから、あの時はたまたまだからさ」
「それでなにを狩ったのですか?」オリビア
「スピリットのオアシス近くの砂漠でサンドワームを3枚に下ろしたりサンドドラゴンを粉々にしたりだな。サンドワームは50mもあってさ、なかなか討伐しがいがあったよ」
「梳李はどんな強い魔物と戦っても楽しそうだね」アン
「実際楽しいんだよ、その都度技を磨いてさ、成長を実感できるから、ポセとの戦いも楽しかったよ」
「そんなに強くなってどうしたいのですか?」レオット
「別に目的がある訳じゃないけど、いざという時の為の備えと、人は努力しなかったら進むべき道を見つける事はできないから、向上心を忘れたくないだけだよ。たまたま魔物が生息するこの星では、それが戦闘力というだけさ」
「だけど世界中に梳李の足跡を残す様な功績もあるではないですか」ファニー
「それは種族を超えて仲良くできるセントラルを作りたかったから、ついでにたまたまそうなっただけで、努力したわけではないんだよ」
「すごいついでですね」ピーシス
「だからどんなにすごい称号を与えられても、俺自身には実感はないんだよね」
「みなさんは梳李を常識に当てはめて考える事に無理がありますよ。世界の英智である私ですら梳李の行動を予測する事はできないのですから」フェアリー
「確かに!」サラ
「いやー!暴れたわい!水中にも凶悪なやつらがうようよいたよ。ピラニアンやブルーといった小物から、シャークやホエール、水竜までいたぞ!串刺しにしてきたけどな!」ポセ
「この川はどこに続くんだろうな」
「また滝になって下の階層に繋がっていたな、しばらくはそれが続くんじゃないか」ポセ
「よし!それなら一度もどって水中を進む事のできる乗り物を作ってからまた来ようか」
「それなら動力は水竜に引っ張らせればよいから、馬車を改造して水だけ入らないようにすれば、水圧と空気の問題はアンピが解決するから簡単じゃよ」ポセ
「いいな!次回は水中探索だー!」
そして俺達は転移門を使ってヘカテーに戻った。上に戻るとめんどくさい気がしたからだ、水中を行く船は水圧を気にしなくて良いとは言われたが、水竜が楽に引けるように流線形にして、抵抗を軽減するように設計した、全員が水中を堪能できるように側面だけではなく、船底にも船の天井にも大きめの窓をつけ、魔力操作で浮力を操れるようにした
「おお!良い感じの船が出来そうじゃな」ポセ
「水竜ってやつは淡水魔物か?海水魔物か?試運転に海にでも行こうと思ったのだが」
「水竜は海には居ないから試運転ならわしが引こう!」ポセ
「いいのか?そんな使い方をして」
「奥方様達の好奇心に溢れた目を見せられてはひと肌脱ぐしかありますまい」ポセ
「お前いいやつになったな」
「アンピもみなさんの世話になっておりますでな」ポセ
「早速みんな行くわよー!」ヘッカ
「おいおい、そんなに楽しみか」
「毎日梳李といるようになってからワクワクすることがたくさんありますからね、いままでは私達だけがずるかったと、みなさんに怒られていますよ」ヴィーナス
「そうか!みんなも冒険が楽しいか!」
「はーい!」奥様方
そうしてポセイドンの神殿のある海に行く事になった
第87話に続く




