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第83話 最高神ゼウス


巨大工場の稼働もはじまり、スタジアムの準備も整った。あとは俺達の手から離れて、それぞれの社員や役員が形にするのみとなった


「みんなお酒って飲めたよな」


「私は弱いですけど飲むのは好きですよ」ピーシス


「みんなで晩酌する事も多いですよ」フェアリー


「やっと巨大工場やスタジアムが落ち着いたから深夜にひっそりになるけど、神殿の通路にお花見をしに行こうよ。夜の桜もまた綺麗なんだよ、騒げないけどな」


「ひっそりと月あかりの下で、満開の桜を見ながらお酒を飲むなんてロマンチックだね」ヘッカ


「地球の花見と言えばバカ騒ぎするのがデフォルトだったんだけど、俺は静かに夜桜を眺めながら飲むのが好きでさ。せっかくだからみんなで行くのもいいかなぁってさ」


「いいですね、行きましょう」フェアリー


「みんな各自で自分の好きな食べ物と好きな酒を用意するんだよ。刺身は俺が作って持っていくから、肴はそれで良いなら酒だけ用意しておいてね。ホームの部屋からのんびり歩いて行こうか」


「夜道をのんびり歩くのも素敵ですね」ミーティア


「目まぐるしい日常が続いてたからさ、理由もなくゆっくりした時間を味わいたくてさ」


「良いと思うよ、そんな時間も作らなきゃね」アリアナ


「梳李は夜空を見上げて星や月を眺めるのが好きだよね」アスコット


「そういえば俺に抱かれて一生の思い出にするって言ってた人が居たなあ」


「何の話ですか?」アン


「アスコットとはじめて会った日の話だよ」


「なんて女の子らしい子だろうと思ったけど、冒険者になる時には押しかけてきて、エンジェルが俺に抱きついて寝てたのを見て一生懸命はがしたんだよ」


「はははっ!アスコットって感じー」レオット


「セントラルまでの道中では、ひたすら肉を食べたしな。おしとやかなアスコットを見たのは出会った夜だけだったかな」


「はははっ!わかるー」オリビア


「そんな恥ずかしい話をしなくてもいいじゃん」アスコット


「そうか嫌な気持ちになったならもうしないけど、そういう所が好きだって話をしてるんだけどな」


「それならもっとしていいよ」アスコット


「どっちやねん!」


「準備できたら行こうか」


久しぶりに歩くセントラルの街並みは、毎日のように見慣れているのに、いつもより月が明るく街もキラキラして見えた


かわるがわる手を繋いだり腕を組んだり、少し落ち着かなかったけど、それにも慣れてきたし、気を使って誰も来ないと寂しいと思うようになった、習慣とはとても不思議だな


「ここがいいな、月も良く見えるし花びらも舞うこの場所にしよう。川のせせらぎも心地よい」


ふかふかのマットを敷いて全員で着席した、誰も言葉は発しないで時間を楽しんだ


「梳李!わしらも参加していいか?」ポセ


「川から現れたのかよ!姿が見えないと思っていたのだが、パトロールか?」


「そんなようなもんじゃ、風流を楽しんでいるのだろ?わしらも参加させてくれ、喧嘩もしないし静かにすみっこで飲むから」ポセ


「ああいいよ」


「米から作った酒だけど飲むか?刺身によく合うんだよ」


「いただこうかな」ポセ


「美味しい!」アンピ


「私達も飲んでいい?」ヘッカ


「飲んでも良いけど、すっきり軽い口当たりにしてあるから飲みやすいけど、アルコールは弱くないから沢山飲むと後から酔うから気をつけてね」


「はーい」エンジェル


「いいながめじゃのー」?


「兄上ですか?」


「ほっほっほっ!見事な神殿だな梳李よ」ゼウス


「お初にお目にかかります、最高神ゼウス様…気に入って貰えたのなら良かったですよ」


「そんなにかしこまらなくて良い、不出来な弟夫婦の面倒まで見させて、お前には感謝している。ヘッカやポセのように仲間のように接してくれ」ゼウス


「アイギスありがとう、俺の身を完全にガードしてくれているよ」


「それは弟の面倒をみさせる駄賃のようなものだ、神殿のお礼に複製だけどケラウノスもやろう、雷を自由に操れるようになるぞ」ゼウス


「それならヴィーナスに使わせてもいいかな、元々ユニコーンだったから雷を操るんだよ」


「梳李の好きなようにすればいい。それよりもわしにも一献くれまいか」ゼウス


「どうぞ」


「最高神ゼウス様このケラウノス、梳李からではありますが確かにお預かり致しました。この杖で梳李と共に戦いたいと思います」ヴィーナス


「うむ、ポセから話は聞いていると思うのだが、神々の秩序が乱れた時にはおぬしらの力を借りねばならんかもしれん、その時は頼むぞ」ゼウス


「最高神の御心のままに」ヴィーナス


「女神ヘカテーよ、そなたも良き者を見つけたもんだな」ゼウス


「梳李の事ですね、他人をかばうために身代わりになった梳李の魂は地球において、一際輝いておりました」ヘッカ


「やっぱそうしてる所を見ると、ポセもアンピもヘッカも神々しいな。落成式の挨拶の時もそうだったけど、俺達よりもはるかに高みの存在に見えるよ」


「ほっほっほっ」ゼウス


「ところでゼウスはどうやってここに来たの?」


「神殿に参拝者が来れば神は神力を貯えて色んな事が出来るようになる。ポセイドンの海底神殿を見つけてくれたから弟も力をだいぶ取り戻せたし、ここの神殿のおかげで我らは乱れた秩序をかなり元の形に戻す事ができた。そうでなければ、すでに戦闘に参加してもらわねばならん所だったんじゃ」ゼウス


「そういえば海に顔を出した海底神殿はどうするんだ?掃除や装飾をしてとりあえず綺麗にだけするか?」


「海底神殿まで道を作る事は出来ないだろうか」ポセ


「干潮の時間だけ道が現れるような、神秘的な通路を作ろうか?それは容易い事だけど、参拝者が居ないじゃないか」


「兄上とヘッカが許可してくれたら、他の星で苦労している海人達を移住させようと思っている」ポセ


「眷族の心配をするとはお前も随分変わったものだな、あれほど暴れるだけ暴れていたのにな」ゼウス


「あの港に街を作るとして、ゴルゴーンが来た時には素早く連絡をくれるのならかまわないよ」ヘッカ


「ヘカテー王国にいる海人族も連れていくか?」


「わしの願いを聞いてくれるならあの者達はヘカテー王国の国民にしてやってくれ、あんなに幸せそうに暮らしているのに、今更もとには戻れないだろうし」ポセ


「それも含んで私は許可するよ」ヘッカ


「女神ヘカテーが許可するなら、わしには異論はないぞ。ちゃんと力を取り戻したらこの星にも眷族共々貢献するんじゃぞ」ゼウス


「心得ております、それにこの星で梳李から色んな事を学ぼうと思っています、そういった恩は必ず返します」ポセ


「さっそく従者になった効果が現れておるようだな」ゼウス


「戦っても簡単に負けます、それにあの気難しいリュウグウノツカイが梳李には感謝の笑みを浮かべてスキルを授けて逝きました。神の原理により自由はなかった身と言えども、これほどの力の差を見せつけられては、わしもこの機会を好機と捉えて成長しようと思っています」ポセ


「いいじゃないか」ゼウス


「私も妻として応援するつもりです」アンピ


「梳李よ、わしからもよろしくお願いする。わしの力の及ぶ事ならいつでも梳李の力となるように恩恵は与えておくからな」ゼウス


「最高神の恩恵なんてもらって大丈夫なのか?無理しなくてもポセの面倒くらいみるよ」


「ほっほっほっ!面白いやつじゃな、普通は人智を超えた力を欲するものじゃ、欲がないからこそ人も力も集まってくるのじゃな」ゼウス


「すでに出来ない事はないくらい色んな物をもらってるからなあ」


「先に行けば越えられない壁に出会う事もあるだろう、備えと思えば良いのだ、もし少しでも感謝してくれるなら、このヘカテーの月の下で酒を酌み交わしてくれ、梳李が用意した酒と肴は最高だ」ゼウス


「わかったちょくちょく付き合うよ」


「ほっほっほっ!頼んだぞ」ゼウス


そうしてゼウスは帰って行った


「静かに飲むつもりだったのに大物が登場したからそれどころじゃなかったな」


「梳李からみても大物という認識はあるんだね」アスコット


「大物なんだろ?」


「ふふふっ!そうですよ」フェアリー


「私は緊張したよー、梳李ー」ヘッカ


「確かにポセもいつになく真剣だったな。俺はその(ことわり)の中に居ないからさあ、最高神と言われても、ああそうなんですか、みたいな所もあるじゃん」


「ふふふっ!梳李らしいね」アリアナ


「私は理の中の住人だよ」エンジェル


「旦那様の事を知れば知るほど、今更ながら自分が妻で良いのか不安になります」レオット


「私も思ってたー」ファニー


「いいんですよ、梳李は自分の事をそういう風に認識していませんよ、梳李を大好きならそれで納得してくれます」ミーティア


「それだけは自信がありますよ!」ピーシス


「またゆっくり来ような」


ゼウスの襲来にみな心の変化はあったようだが、ゆっくり流れる時間は楽しむ事ができた


実際俺にはピンと来ないんだよね、申し訳ない



第84話に続く


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