第81話 海底神殿
「ここの海はヘカテーの海に比べると岩場も多く荒々しいけど、魚はこういう海の方が美味しいんだよ」
「誰も住んでいない集落だけど、建物とか街並みは味があるね」ミーティア
「この海でポセと戦ったんだよね、とどめはヴィーナスとエンジェルが刺したんだけど」
「ポセも海を盛り上げるは、大地を揺らすは、めちゃくちゃしてたもんな」
「海の神様に挑むなんて…くすくすっ」イザベラ
「海人族がいじめられてる気がしてたのもあるし、くだらない事でやきもち妬かれた事にムカついたからさ。どうせ不死だからやっちゃおうと思って」
「はははっ!梳李らしい理由だね」アリアナ
「私の別れた旦那は梳李に怯えて、200人引き連れて土下座しに来たんだよ」ミーティア
「私達の街では悪徳鍛冶師長を追放しました。ドンファミリーっていう裏組織はボスがやっぱり謝りに来ましたね」アン
「どこででも大活躍してきたよね」ヘッカ
「なんにしてもこういう穏やかな時間は良いな。みんなの笑顔を見てるだけでとても心が満たされていく。とりあえず飯にしよう、魚を捕ってくるよ」
「船で行かれるのですか?」ピーシス
「船は使わないよ、歩いて捕ってくる」
「梳李は水の上をあるけるのですか?それにこの海という所はとても広いのですね」レオット
「そうか、レオットやファニーは育った国しか知らないから海は初めて見るんだな。良いだろう!海!眺めていると、なんて自分はちっぽけな存在なのかと思いしらされないか?」
「はい!なんか力が沸いてきます」ファニー
「とりあえずみんな待っててね」
そして岩場まで走っていき、漁をして戻った、魚をさばいて初めて食べる3人にも食べやすいように、焼き魚も骨を外して切り身にした
刺身は今回も好評でわさびにもだいぶ慣れたようだ
「エンジェル大丈夫か?わさび付け過ぎたらまたブレス吐くぞ」
「ツンとくるのがクセになってさ。効きすぎたら空にブレス撃ちながら食べる」
「ふふふっ!騒がしくて楽しいですね」ヴィーナス
「ポセもアンピも遠慮するなよ」
「こういう食べ方もあるのですね」アンピ
「この醤油とわさびは良いのう」ポセ
「そうじゃ!忘れておった!ここの海底に遺跡があるんじゃよ。一緒に探索に行ってくれないか」ポセ
「いいけど、遺跡の中には何があるんだ」
「もしかすると遺跡が神殿でトライデントが眠っているかもしれない」ポセ
「トライデントというのがポセの本来の武器なのか?」
「そうなんじゃよ、もしそうであれば50m以上あるリュウグウノツカイが守護している。わしと認識されなければ食われてしまう」ポセ
「ポセの武器を守護するものが、ポセを食うのか?」
「神々の真理というか、原理に則って守護している。すでに途方もない長い年月を、もしかすると霊体のみが守護しているかもしれないし、アンデッド化している可能性もある、なにが起こるかわからないというのが正直なところなんじゃ」ポセ
「それなら先に行こうか、みんなは食事しながら待っていてくれるか」
みんな不安そうに見つめていた
「それなら私はついて行きましょうか、私なら梳李をガードできます」フェアリー
「その遺跡だか神殿はどのくらい海底にあるんだ?」
「500mくらいかな」ポセ
「さすがに500mは俺も息が続かないんじゃないか?フェアリーのマテリアルボディも気圧に耐えられないだろうし」
「私が梳李にまとわり気圧から守りここと同じ空気を供給します」アンピ
「それなら自分でシールドを張るからその中を頼めるか」
「お任せ下さい、魔力は少し頂きますけど」アンピ
「ポセはそれで良いのか?海底でやきもち妬かれると困るけど」
「遺跡調査の為です、アンピに魔力も供給してやってください」ポセ
「それなら3人で行ってくるよ。心配ないから少しだけ待っててね」
微妙な表情を浮かべる、みんなを残して俺達は海底に足を運んだ
アンピはさすがに海の女王と言った感じで、シールド内は快適だった、水上歩行は水中でも使えた、シールドに付けた足を水上と判断してくれるようだ
深くなってくると日光も差し込まなくなり、シールドないにホーリーライトを満たし明かりにした
「ポセ!もしかしたら守護者がアンデッド化してるかもと言ったかな?」
「可能性があるのじゃ」
「それだとホーリーライトは不味いな、浄化してしまうだろ」
「仕方無いじゃろ」
「せめて浄化する前に礼ぐらい伝えてやれよ。ライトに切り替える、その代わり攻撃が来たら自分で自分は守れよ。俺とアンピはシールドで守られているし、貫通してくる事は無いだろうし」
「わかった!防ぐか逃げるかするわい。梳李はアイギスで守られておるのでシールドを仮に突破されても問題はないが、アンピの事は頼む」
「あそこじゃ、行ってみましょう」
でっかいリュウグウノツカイが確かに真ん中の光を帯びた三叉戟を守っている。ポセの存在には気が付かない、確かにアンデッド化しているようだ
「ポセこの守護者に名前はないのか?」
「トライデントじゃ、武器と同じ名前を付けた」
「少しポセは俺のシールドの後ろに隠れていろ」
「トライデントさん!トライデントさーん!」
「貴様は人間か!なんの用だ!」
「ここはポセイドンの神殿ですよね。長年トライデントさんが武器を守護して来た」
「そうじゃあまりに長い年月を守護して来た為に、わしの生命もとうの昔にないのだが、守護をするという原理からは逃れられんのだ」
「長い時間ご苦労さまでした、今日はポセイドンを連れて来ました。確認して貰えませんか?」
「人が海神を引き連れて来たのか、信じ難い話だが、おぬしからは並々ならぬ気配を感じる、そもそも話しかけて来たのがお前でなければ既に撃退しておる」
「トライデントか、わしじゃポセイドンじゃ、アンピトリテも一緒にいる。探したのだがどの星にいるかわからなくてな。わしの力がない為に苦労させたな」
「その気配はポセイドン様、お久しぶりでございます。さすがに我もアンデッド化してしまい、ポセイドン様の気配を感じる事も出来なくなっておりました。そこの人間よりも先に近付かれていれば全力で攻撃したかもしれません。無礼をお許しください」
「良いのだ、守護者としてトライデントを守らせるには時間が長過ぎたのだ。本当に苦労をかけた、ありがとう」
「わしもやっと役目を終えて楽になれます。そこの人間よ、我を浄化してくれないか」
「俺は梳李といいます、トライデントさんお疲れ様でした。苦しく無いように浄化しますが、もしもの時は暴れても平気です。俺はゼウスに貰ったアイギスに守られています」
「海神をしたがえて、最高神の防具を貰うとはすごいのだな梳李は」
「これから浄化する本人に聞くのも変だけど、ホーリーライトのような浄化魔法と、ヒール系の回復魔法とどちらが楽に行けるんだ?」
「わしはもともと毒の攻撃を得意としていた。キュアヒールは使えるか?」
「なんでも使えるよ、なんなら今教えてくれたらそれをかけてあげるよ」
「ならエクストラキュアヒールをかけてくれ」
「わかった、それとトライデントさんにお別れを告げるのに、触れてエクストラキュアヒールを送り込むからな」
リュウグウノツカイの頬に触れながら魔法をかけた。長年の孤独と苦労が流れ込んできた、他の神々からの攻撃に耐え、ただただトライデントを守り続けて来た。天晴れな生き様だった
「トライデントさん!ほんとうにお疲れ様でした!どうか安らかに!」
「おぬしは泣いてくれるのか…優しいのだな、そうじゃつまらぬものだが、我が行く前におぬしにプレゼントを渡していく、後でスキルを見れば良い、リュウグウノツカイの恩恵が追加されているはずだ」
「梳李よ!わしのために流してくれた涙に全てが報われた気分だ、ありがとうな」
そしてリュウグウノツカイは消えていった
「スキル、リュウグウノツカイを覚えました」
「ポセはさあ、海人族もそうだったけど、眷族に苦労させすぎなんだよ!」
「す、すまん…そんなつもりじゃなかったんじゃが…」
「結果的に苦労させるのは優しさが足りない証拠だ!」
「反省します…」
ポセがトライデントを手にすると主の帰りを喜ぶようにトライデントが金色に変化していった。それと同時に海底神殿が地響きをあげながら海上にゆっくりと盛り上がっていった
「凄いな武器も神殿も喜んでいるようだな」
「喜んでいるのですよ。長い時間離れ離れじゃった。梳李ありがとう」
「フェアリー、リュウグウノツカイってスキルはなんだ?」
「それは海底にいても普通に呼吸が出来ますし、水中のどこにいても気圧の影響を受けません。それにポセイドンがやるような海を持ち上げたり足場を作る事も可能ですよ」
「そんなに万能なスキルをくれたのか」
「はい、やり取りは観察していましたが、梳李の優しさが嬉しかったのでしょう。私達もみんなもらい泣きしました」
「そ、そうか…とりあえず戻るよ」
原理原則か、不自由だな…だがリュウグウノツカイに男の生き様のような物を感じた。徹底する事もまた神であるという意味が少し理解できたような気がした
第82話に続く




