第80話 落成式と結婚式
神殿が完成した
セントラルのメイン通りから神殿に続く通路は桜並木になっていて、神殿前広場まで満開の桜と通路の真ん中にある川のせせらぎが神殿の参拝者を出迎える。神殿前広場には中央に大きな滝をイメージした円柱があり、それを取り巻くように噴水が音に合わせて噴射されて、音楽と光と水の共演を演出してある、広場を囲むように周辺には、立体的に作られた花壇があり世界中の花が咲いていて、サッカーコートくらいの大きさの広場のどこにいても花壇が見渡せるようになっている。神殿の目の前には、結婚式と演奏等も出来るように神殿を背景にステージが出せるようになっている
当然土の下には魔力回路と魔力供給がされていて花壇の花も桜並木も年中咲き誇っている
「どうした?何も言わないけど気に入らなかったか?」
「ぎゃくだよ梳李!すごい!すごい神殿だね!」
「わしらもこんなにすごい神殿を見た事がありません。神話の中にも見た事のないような神殿です。ゼウスもきっと喜んでそのうちに姿を現すかもしれませんね」
「喜んでいるならいいじゃないか。ところでここの神殿のお披露目も兼ねて俺達の結婚式をしようと思う。ポセとアンピも合同ですればいいじゃないか、きっとアンピにはウエディングドレスは良く似合うと思うよ、第1部に落成式をしてアンピ、ポセ、ヘッカの順に挨拶をしよう、落成式の司会はフェアリーがするとして、第2部で俺と14人の妻の結婚式と、ポセとアンピの結婚式を開こう、第3部はガブリエルとエリウスの結婚式にしようか、誰でも広く利用できる神殿というイメージも一気に定着させよう、冒険者組合と商業組合とセントラル会議に申し込み窓口を作って、気軽に申請さえすれば、誰でも結婚式をしたり、ギルド等の会合にも使用できるようにしておこう」
「いいね!とても夢がある。きっと流行るよ!私もウエディングドレスは楽しみー」ヘッカ
「きらきら装飾品もあしらったヘッカ専用の純白のウエディングドレスだよ」
「あとさあ梳李、この前みんなに首飾りとか指輪とかあげてたじゃん。エンジェルは既に世界一といえる立派な首飾りを贈って貰ってるし、ヴィーナスも鞍が変形するストールがあるけど、私とフェアリーだけなにもないんだけど」
「はははっ!気になってたか…用意してあるよ、ピーシスに指輪を贈ったのは、地球の風習なのだけど、フェアリーには委員長って呼んでいた頃の名残りで名札と制服に、ヘッカには太鼓とバチとカウベルだ」
「ヘッカちゃんだよ!ってしっくりくるけどこれはちがーーーう!」
「ふふふっ!梳李の学生時代はこういう制服に名札だったのですか?着て見ましたけどどうですか?」
「おお!委員長って感じだよ。まあそれはそれでプレゼントだけど冗談だよ、2人とも手を出して」
「これからもずーっと一緒に居ようね」
「はい♡」フェアリー
「梳李ー!♡」ヘッカ
数日後…巨大工場の工事もスタジアムの工事も大詰めを迎えていたが、各国の王が視察に来る予定があったので、それに合わせて神殿の落成式をおこなった。セントラル議会の役員や組合職員は全員で参加し、一般参加者も広い神殿前広場を埋め尽くしていた
落成式は式次第を少し変更し、各国の王が祝いの言葉を述べた後にポセから挨拶が始まった。三柱の神々はとても神聖に成り立ちや歴史をふまえて挨拶をして、いつものようなふざけた愛くるしさはなかった、最後にはアルカーヌムを発動して、まさに神々による光と水の共演に参加者は感動していた
第2部になり俺達の結婚式が始まると、誓いの言葉を交わしてキスをする度に歓声と祝福の拍手が鳴り響いた。国王達も祝辞を述べて式を彩った。最後には緊張した面持ちのガブリエルとエリウスの式を執り行ったが、とても幸せそうにする姿には参加者も大いに祝福を贈ってくれ、神殿前広場で結婚式をする事は受け入れられそうだ
最後に組合役員より使用についての申請方法が説明されて、神殿前広場は誰でも気楽に使用する事の可能な施設であると発表された
エリウスはドレスとタキシードを商会でレンタルすると組合員に宣伝させて、しっかりしている妻の姿をさっそく見せていた
「工事が大詰めだからすぐに帰って来なければならないけど、ポセと戦った海にでも新婚旅行に行こうか。久しぶりに魚も食べたいしな」
「いいね!いこういこう!」ヘッカ
「ポセとアンピも来いよ。エンジェルの背中に乗って空を移動するのもいいもんだよ」
「あとさあポセに聞きたかったんだけど、この前アテナから再戦の申し込みがあったよね。記憶はどうなるんだ?」
「アテナは再戦とはわかっていないのですよ、わしは人格をもったので記憶を持っていますが、神の執念が時を巻き戻したというか、そもそも神々の戦いは永遠の時をかけて繰り広げられるのです」
「というかさあ、神ってやつはわがまま過ぎやしないかい?だいたいポセも海で2回も俺に攻撃してきたし、話をして解決するとか、相手から事情を聞くとか、人が当たり前にするような事もしないのが神様なのか?」
「人から見たらわがままに見えますよね、ですが神は真理に拘束されている為に、わがままに見えるその行動が重要なのですよ。ヘッカも今のわしとアンピも梳李の存在によって意思を持つ事が出来るようになりましたが、神の行動には全て原理原則があり、不自由この上ないのですよ」
「という事は、ゴルゴーンがこの星にちょっかいを出してくる事もまた真理という事か…もしかすると止められない自分を呪ったり悲しんだりしているのかもしれないな」
「ところで順番に膝に座ってくるこの行事もローテーションで決めているのか?」
「ふふふっ!もちろんです!ちゃんとレオット、ファニー、ピーシスにも同じ時間配分で平等にしてますよ。エンジェルは到着したらしばらく梳李を独占できます」
「みんな甘えるのが上手だけど、それは俺の好みを講習してたりするのかな?」
「ふふふっ!私は梳李を熟知していますので、全ての好みをみんなに伝えてありますよ。ただ本人達もそれが心地よいみたいで、やはり相性は良いみたいですね。梳李の為に無理をしている訳ではないので自然に受け入れてくださいね」
「かなり恥ずかしい話ではあるけど、みんなも心地よいなら良いな」
「いま向かってるのはどこなの?」アリアナ
「ヘカテーの海じゃない海だよ」
「海人族やポセ達が住んでいた海に向かってる」
「へぇー、街でもあるの?」アリアナ
「街はないな、人の居なくなった寂れた集落だけあるけど、なんとなく街並みには味があったかな」
「アリアナ!時間よ!」オリビア
「あなた♡」オリビア
「お、おお…」
「あんな盛大な式までしてくれてありがとうね」オリビア
「あと首飾り大切にするね」オリビア
「なくしたらまた買うから普段からつけて良いよ」
「そんな事できないよ」オリビア
「だけどしまっておくのはもったいないじゃん」
「確かに使わないのはもったいないけど」オリビア
「品物はなんでもそうだけど、使ってこそ価値があるものだから、みんなにも言っておくけど破損したり紛失したら、新しいのを用意するから普段から身につけてね」
「だけど世界にひとつだけの物だから良いって事もあるじゃないですか」オリビア
「みんながそう思って大切にする事はわかっているけどさ、眺めているだけでも落として破損する事もあるかもしれないじゃん、大切にしてくれていると信頼してるからこそ、いつでも代わりは用意するって言えるんだよ」
「それなら大切に身につけた方が首飾りも喜んでくれますね」オリビア
「梳李!見えてきましたぞ!」ポセ
みんなに甘えられるのは、無性に癒されるんだよな、地球にいる時はフィギュアや時計や靴や漫画を集める事に夢中で、彼女がいる時期があっても、もっとドライだった気がするのだけど、転生して性格も変わったのだろうか
誤解のないように言っときますが、妻を収集する癖はないからね!
第81話に続く




