第74話 国王という仲間たち
「各国のみなさんはお集まりです。演者のみなさんも全員揃っています。ロドリゲスだけ現地集合になっています」フェアリー
「それではサメハダの街へ向けて馬車で移動になります。今日は観光客用の大型馬車も、来賓用の小型の馬車もあります。どれでも好きな物に乗れば目的地には到着します。サメハダ商会製の馬車の乗り心地も堪能してください」
「梳李はどれに乗るんじゃ」ライオネル
「俺は空から行こうと思っていたのだが、そう聞かれては馬車の方が良さそうだな…俺は演者のみなさんと一番大きいのに乗っていくよ!」
「それならわしらもそれで行くよ。王家用の小型にはお付きの者たちが乗っていく」ホーガン
演者の馬車に各国の王様と族長が乗り込んだ為、演者のみんなは少し静かになった
「演者のみなさんおはようございます。梳李です、今日はわざわざサメハダの街へ遠征して頂きありがとうございます。サメハダの街は500km先にある為に今日は途中の宿場街に一泊する予定です。俺達の事はどうか気にしないで普通に過ごしてくださいね」
「梳李様!質問しても良いですか?」
「どうぞ」
「サメハダの街は我々のような演奏家や歌の上手い者を、定期的に雇用する予定があると、噂に聞いた事があるのですが、実際の所はどうなのですか?」
「ではそのことも含んで、今日の遠征に来て頂いた理由から説明しますね。いまセントラルでは、演奏であれ歌自慢であれ、彫刻家や鍛冶師の技術であれ、各国で予選大会を開いのちに、本戦をセントラルで行い世界一を決める大会を予定しています。第1回大会をここに集まったみなさんの様な、音楽に才能がある人で開催したいと考えています。今日の遠征は演者の方を大勢異動させたり、舞台での演奏順を考えたり、運営を円滑にする為のテストケースであると共に、サメハダにある演奏場の試運転も兼ねて来ていただきました。もちろんギャラもお支払いいたしますし、採点されるわけではありませんので、みなさんの得意な事を自由に表現して頂いて構いません。質問の答えですが、サメハダの街は観光に特化した宿場街になっていますので、先ほどいった演奏場で演者を雇う予定はあります。人選についてはまだ未定ですが、希望者から優先的にお願いするように考えています。あとこれは開発中の魔石プレイヤーの試作機なのですが、音を録音再生するものです。みなさんの音でこれの試験もしたいのです」
「希望すれば誰でも雇っていただけるのですか?」
「観光客を楽しませる才能があれば、種族もジャンルも問いませんよ」
「それはケズリファミリーに入れて頂けるという事なのでしょうか?」
「難しい質問ですね、仕事仲間である事に代わりは無いと思うのですが、サメハダの街の運営は私がするわけではないので、触れ合う機会はあまりないと思います」
「どうすれば梳李様の近くで仕事を共にできるのでしょうか?」
「それも難しい質問ですね、私にはファミリー内にあるセブンスターズとは別に、私の率いるセブンスターズがあります。7人で構成されていて、その7人は一番行動を共にする事が多いのですが、そこに属してないファミリーの者は、妻であっても寝る時に会うくらいの接点しかありません」
「そういう事から考えるとファミリーの定義をどこに定めるかという問題になると思います。私が任命するわけでも、頼むものでもありませんので、各人がどう自覚して生活するかにかかっていると思います。だからサメハダの演者になったとして、私は仲間として受け入れると思いますが、その人がどう感じてどう判断されるかという事ではないでしょうか」
「わかりました!ありがとうございます!」
「みなさん飲み物を配りますね、休憩は1時間に1回は取れると思います。あと馬車に酔った方がいたら回復魔法をかけますから、我慢しないで言ってくださいね」
「どこにいても人気者じゃなあ」ホーガン
「ズーダンの本国でも、セントラルに行けば梳李に会えるのか、という問い合わせが毎日殺到しているぞ」ライオネル
「ギガントでは原初の魔王としてすでに崇拝されているからな」ルシフェル
「エルフ族でもケズリファミリーからの求人募集は無いかと、フォレストの商業組合が問い合わせに追われている」バッシュ
「そういわれてもなあ。それにエルフには精霊術士をリクエストしてるんじゃないかな」
「すみません!少し馬車に酔ったみたいなのですが!」
近付いて治療しようとするとがっちりと両手で手を握りしめた。空いた方の手でヒールをかけると、満面の笑みでお礼を言われた
「今のはエルフ族のおなごじゃなかったか?」バッシュ
「そうだけど」
「エルフは乗り物酔いなどしない。聴力が高く三半規管も丈夫じゃ、やはり人気者だな」バッシュ
「それは俺に言われてもどうしようも無いよなあ」
「クラフトでもアンとサラが嫁になったから、チャンスを伺ってる女の子は多いからな、エルフの嫁も居たから尚更じゃないか」ホーガン
「もう嫁も打ち止めでしょ」
「いまは何人じゃ?」バッシュ
「11人だよ」
「30人や40人は大丈夫じゃろ?王族ならそんなもんじゃ」バッシュ
「いや、俺はいまでも多いと思っている、これ以上は余程の事がなければ必要ない」
「なにを言っとるんじゃ!どんどん嫁を作って子種を残さんか!」ホーガン
「なぜ獣人は嫁にしてないんだ、好みの問題か?」ライオネル
「知り合うきっかけがなかったし、獣人の女の人はいまでもファミリーにいる人妻としか接点がないよ」
「わしの娘はどうじゃ」ライオネル
「そういうの必要ないからさ。そうやって繋がりを深くする文化もわからなくはないけど、俺はそういう事で接し方を変えたりはしないから安心してほしいな」
「そうじゃなくて娘が希望しているのだ」ライオネル
「そこは父親として、あんなやつの嫁になると大変だからやめなさいとか…上手く言えばいいじゃないか」
「わしは賛成しておるからな!隙あらば押しかけろと言っている!がははははっ!」ライオネル
「そんな事もできるのか…ギガントからも計画するか」ルシフェル
「だからそういうのやめなさいって」
「だがな梳李よ、お前が架けた平和の架け橋は世界に大きな影響を与えた、お前が現れなければ、各国の王がこうして笑いながら話す事もなかっただろう、すでに梳李は英雄だという事は自覚せねばならんぞ」ホーガン
「そういわれてもさあ、俺は普通の人間だからさ。英雄といわれてもなあ、各国が力を寄せ合って発展する事を強く望んだのは事実だし、セントラルの議長も仕事として喜んで引き受けたけどさ、身の丈にはあっていないし、コツコツとやれる事をやっているだけなんだよ」
「梳李がそういう性格だから成せた事なのだろうがな!今日は楽しいのー!」ホーガン
「しかしこの馬車の乗り心地は良いですな」バッシュ
「この馬車は世界平和の象徴だからな、車輪やクッションをドワーフのアルフ工房で作り、車両本体をズーダンで作り、内装をロドリゲスが手がけて、装飾はエルフがやった。窓にはめ込んである透明のパネルはヘカテーで作って、温度を調節しているのはギガントの魔石技術だ。6カ国の技術力を結集した馬車だからな」
「それがまた気分と共に良い乗り心地にしてくれているな」ホーガン
「梳李様ー!私も乗り物酔いが!」
「今日の宿場街では、食事もみなさんと共に取りますし、なるべく話もしましょう。握手も必ずするのでそれで我慢してください。エリアヒール!」
キリがないから全員にヒールをかけた
「温かい魔力です、癒されます」
「ほっほっほっほ!」バッシュ
「面白いのー」ホーガン
「魔人の嫁を取らないか」ルシフェル
「娘をな」ライオネル
「フェアリーこっちに来てくれ」
「どうされました」
「なんか疲れたんだよ、俺の膝に横を向いて座ってくれ、こうしてフェアリーを包み込んでいると癒されるんだよ」
「演者の人達の目線が凄いですけど」
「気にするな俺が幸せな気持ちで満たされている」
「嬉しい」
今度からは絶対現地で待とうと固く決意する梳李だった…はいはい( ̄▽ ̄;)
第75話に続く




