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第64話 花嫁候補


「これは梳李様!再びお会いできる日が来るとは夢にも思いませんでした。それにアリアナを妻として迎えて頂きありがとうございます」


「父上とお呼びしても?」


「なんなりとお呼び頂けば良いですが…大賢者様に父上と呼ばれると、なんか私の人生に箔がついた気になりますな」


「私の方こそ家族が増えた事は喜びです。アリアナを大事にするのは当たり前ですが、同じように新しい家族も大切にしたいと思っています。どうかよろしくお願いします」


「こちらに居ますのがオリビアの父親のイライジャでございます」


「大賢者様…我が娘オリビアも妻にして頂き誠にありがとうございます。どうぞこちらへ」


「待ってくださいイライジャさん、先に挨拶をさせて下さい」


使用人風情(しようにんふぜい)に頭を下げられては、大賢者様の沽券(こけん)に関わります」


「父親に礼を尽くすのに、職業など関係ありません。私はオリビアを妻にした事を誇りに思っておりますし、そのオリビアを育ててくれたご両親やご兄弟にも感謝しています。どうか立場を気にせず新しい息子として接してください。そうして頂けないのなら、いまからウィリアムを呼んで、目の前で大賢者勲章を返却する事になりますが、どうなされますか?」


「そんな事をされてはスコット様はおろか、領主までが不敬罪に問われます。どうかご勘弁を」


「ならアイザック父上とイライジャ父上との関係があるでしょうから、イライジャさんはお父さんとお呼びさせて頂きます。おふたりは梳李とお呼びください。アリアナとオリビアと同様に大切にいたします。頻繁に会う機会は作れないかも知れませんが、離れていても家族と思い暮らします」


「わかりました。相変わらず変わりませんね。いまや梳李と言えば世界のリーダーとして君臨し、知らない者もいなければ、逆らう者もいないでしょうに、以前と変わらずに誰とでも気さくに接するのですね」アイザック


「父上…それは立場の話で、中身は戦闘力以外は何も変わってないですよ。私自身が成長した訳ではありません。人間どんな立場になっても、身の丈を(わきま)えないと未来はありません。私には守るべき者がたくさんいます。勝手に自分で思い上がる訳にはいかないのです。人生を生きて生きて生き抜いて、亡くなるその瞬間まで、成長し続ける必要も権利も義務もあります」


「理解しました、改めて娘共々よろしくお願いします」アイザック


「こちらこそよろしくお願いします」


「ところでアリアナとオリビアはいつもそんなに梳李にくっついているのかい?」アイザック


「後ろの奥様方に悪いではないか」


「お初にお目にかかります、アイザック様、イライジャ様、3人を代表してご挨拶させて頂きます。我らも梳李の妻にございます、私はフェアリーと申します。元の立場は女神から使命を与えられたナビゲーターという管理者です。私はマテリアルボディを得て、人として女神ヘカテー様と共に存在しています。話をする時は女神か管理者かどちらかが切り替わり話をしています。いまや女神ヘカテーも半分は梳李の妻として存在しています。こちらはヴィーナスです、以前来た時はユニコーンでした、新たな名を頂き人の姿を模せるように進化しました。もう1人はエンジェルです。この者は元の青竜王バルバロッソで梳李の初めの従者ですが、今は新たな名を授かりアルティメットドラゴンの白竜となりました。我らは梳李から離れる事はありませんので、これからもお世話になる事があるかもしれません。どうかよろしくお願いします」


「お噂は以前よりお伺いしております。こちらこそよろしくお願いします」アイザック


庭に出て3人は空を舞った、家中の者も慌てて飛び出してきて、街行く人達もその姿に目を奪われた。しばらくして元の姿になり整列してお辞儀をした


「へっかちゃんだよ!」


爆笑している( ̄▽ ̄;)


セブンスターズオーディションの模様は人伝(ひとづて)に世界に広まっていて、女神に一度で良いからお会いしたいと願う民衆も多かったようだ。爆笑をかっさらったヘカテーも手応えありー!な顔をしている。そこにタイミングよく領主が現れた


「梳李様の来訪、心より感謝いたします!領主をしておりますジョナサン・デイビスでございます。普段は隣街の中央デイビスで公務をしておりますが、近々お見えになると聞きこちらに移っていたのです。以前王城の晩餐会でご挨拶させて頂きましたが、あらためてよろしくお願いします」


「どうも!ケズリ・ヘカテーです!今日は妻の家族に挨拶に来ました。住民からも大歓迎され、満足していますよ」


「その事で私からお願いがございまして」


「なんでしょうか?」


「我が家にも年頃の娘がおりまして、輿入れさせて頂けないでしょうか?」


「お気持ちだけお受けいたします。私はすでに10人を妻としています、いまでも寂しい思いをさせる事が多いのに、これ以上は手にあまります。それに私はそういった事で関係を作る事が好きではありません。逆にスコット家に肩入れをして、領主様をおびやかすような動きをすることもありません。どうかアリアナとオリビアが妻になったからといってご心配なさらないように」


「むしろ私は、お嬢様を差し出される事よりも、領民から信頼され愛される領主様として行動して頂いた方が、尊敬し協力を惜しみませんよ」


「いやそれが…梳李様のそういう性格は私も理解していますので、先程の申し出も怒られないか、内心気が気じゃなかったのですが、本人がどうしても頼んで欲しいと申すもので、娘には勝てずお願いした次第なのです」


「あれー!イザベラじゃない!久しぶりー」


「はじめまして梳李様、イザベラ・デイビスにございます。直接お目にかかれて光栄です、勲章の授与式にも晩餐会にも父と共に参加しておりました。ロドリゲス中央公園の握手会にも参加しました。あれ以来私の心は梳李様から離れないのです。寝ても覚めても梳李様は今日はどんな活躍をしておられるか、今日はどんなお召し物を着ておられるか、そんな事ばかり考えてしまうのです」


「アリアナ、こいつ大丈夫か?」静かに


「くっくっくっくっく!確かに芝居がかっていたけど、この子は子供の頃からこんな感じなんだよ。アスコットとも親しいと思うよ」


「梳李様!強敵と戦う時は盾としてお使いください。お傍に居られるのならオリビアと共にメイドにして頂いてもかまいません。どうかご慈悲を頂けませんか」


「もう一度聞くけど、こいつ大丈夫か?」


「イザベラは名家からの縁談も多いでしょ?なぜそこまで梳李にこだわるの?」アリアナ


「先程も言ったように寝ても覚めても梳李様の事しか考えられないのです。確かに絵に書いたような美しい顔の、良家の殿方からも正妻にとの話はあります。ですがその人達はかぼちゃにしか見えないのです」


「またかぼちゃかよ」


「くっくっくっくっく!」


「お前らみんな笑いすぎ、これ本人は真剣なんだよな?」


「許す!女神ヘカテーの名において、私が認めてあげるわ」


「梳李様のお邪魔になるような事は決していたしません。晩餐会の日アスコットと話をしたのです。アスコットは叙爵される事も領地を得る事にも喜びはなかった、だけど梳李様の行く道を共に歩めるのなら、その事がとても幸せなのだと申していました。それに出来るか出来ないかではなく、そうあろうとする心を自分自身に問うように言われて、どんな困難が待ち受けていようとも梳李様から決して離れないと決意したと…結婚した時の手紙は、なんて事のない言葉の中に幸福感が溢れ出ていました。現在のアスコットには到底及びませんが、学生時代はアスコットと一二(いちに)を争う剣技もありました。セブンスターズの臨時要因でもかまいません。商会の事務でもかまいません!どうかお傍に置いて頂けないでしょうか!」


「だけどデイビスから3人も嫁にすると、他の貴族がうるさくならないかな」


「それは心配しなくても大丈夫、領主の娘としてではなく、イザベラというひとりの女の子として見て判断してあげて」アリアナ


「そうです梳李様!ロドリゲスに梳李様を籠絡しようなどと大それた考えを持つ貴族は存在しません。不容易に近付こうとする事も国王陛下から厳しく禁じられています。全ては自然な縁に任せるようにと。ですからサメハダ商会で扱って頂きたい農作物があっても、王都の商業組合に要望を添えて持ち込んでいるのです。国王陛下の徹底ぶりは自身のご家族に対しても同じで、王族であっても気安く近寄らないように言って聞かせておられます」


「それでアレクサンドが最近遊びに来ないのか」


「第3王子殿下は個人的に親しいと異議を唱えたらしいですが、用もないのに遊びに行く事は控えるように言われておりました。それに今となっては男爵に降格になったアンダーソン家は、国中の憧れになっています。エドワーズ家の軍勢を梳李様に排除してもらい。ご子息は独立したと言えども梳李様と縁深き間柄、マシューに復活を願う貴族もたくさん居るのです。本人は誰がなんと言おうと引退は取り消さないと頑なに申していますが」


「へぇー、少し世界中を回っている間にロドリゲスはそんな風になっているのか」


「私達は賛成だよ!イザベラが仲間に加わる事。この子は不器用だけど梳李が歩く道に水たまりがあれば、自分が寝そべって水たまりを塞ごうとする子よ」


「大丈夫か?極端過ぎないか?」


「何を言っているの!私達も他のみんなも、いつもそういう心で接して来たじゃない」


「許す!といっているじゃないか!」ヘカテー


「前向きに検討して差し上げれば良いのでは無いですか?」ヴィーナス


「そうだな、わざわざこうして行動に出た勇気には、誠意をみせる必要があるだろうな。それなら明日からの滞在中に同行を許可するから、その間にどのような人柄かを見せてください」


スコット家は今日もたくさんの来客で溢れていた。席に付くと小さい女の子が膝の上に座った。オリビアの一番下の妹らしい、その姿をみたオリビアが自分で妹を抱えて俺の膝に座った。見ていた来客は大声で笑った


イライジャ父さんにはセントラルで大会をしたら参加して欲しいと頼んだ。アイザック父上の配慮で仕事を離れたお父さんは、上機嫌で執事としての心得を語った


なんて事のない日常、俺には一番遠く見慣れない光景になってしまった。奥さんが増えたり子供が出来たり、そんな事が許されるのだろうか。セントラル議会も未開拓地探索もまだまだやる事は多い。世界中から賞賛される声に反比例して、家族の笑い声とは無縁になっていく


「ちゃんと考えないとな」



第65話に続く


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