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第60話 魔人国家ギガント


「ルシフェル!ルシフェル!」


「梳李か!どうした?何かあったのか」


「特にないんだが遊びに行ってもいいか?」


「構わぬが…それなら夕食はどうだ」


「わかった!従者も行くから4人分頼む」


「準備しておくよ。美女を3人従えて来るなら、おなごの用意は必要ないな」


「従えてなくてもそれは必要ない」


魔王城の従者達は妖艶で油断するとそこにいるだけで、誘惑されそうだった


「あれは…魔力を放出しながら誘うようにしているのか?」


「ふっ!さすがだな、バレたか」


「なんの遊びなんだよ!」


「いや、完璧に見える梳李を篭絡したくてな」


「別に手の込んだ事をして篭絡しなくても、協力するんだから良いだろうが!」


「ところで今日はどうした?」


「スルーなんかい!いや、北の大地は窮屈だろうと思ってさ。セントラルの南側に国ごと引っ越すなら、俺が議長の間が良いかなって思ってさ」


「セントラルの南側か…いいなあ、正直憧れる。だが魔人の使命で黒竜王様を守護しなければならんのだ」


「え?漆黒の守護は元々ギガントの仕事なのか?」


「魔王は我らの地より北に住む黒竜王様を守護せよ!と代々伝えられている」


「そのわりにはこの前漆黒が大変だった時に来なかったじゃないか」


「なんの話だ!」


「え?この前ゴルゴーンに仕えるギガースにやられそうになったんだよ。瘴気の沼に囚われてな」


「我らは一族の中でも特に優秀な星詠みの魔道士を抱えている!報告は何も無かったぞ!星詠みの者達を呼べ!」


「梳李!すまん…少しだけ国内の事をやらせてもらう」


「ああ…問題ない」


「お呼びでしょうか?ルシフェル様!」


「先日黒竜王が危機に陥ったらしいのだが…なぜ報告が上がっていない!貴様を斬る!」


魔道士の首元に剣をつけた


「ルシフェル、まて!その物に悪魔の気配はない、言い訳を聞いてやれ」


「恐れながら申し上げます!我らはルシフェル様に報告申し上げました。お取り込みだったルシフェル様は了解したと一言」


「さらに申し上げると、お取り込み中とは夜伽(よとぎ)の最中にあらせられまして…」


「え?お、思い出した…確かに言っていたな」


「おい!漆黒!聞こえるか?」


「なんでございましょうか?」


「悪いがすぐに魔王城まで来てくれ、梳李の使いと言えば案内が付く」


「かしこまりました」


「結局ルシフェルが夢中で遊興してる最中に、漆黒が襲われたと言う事でいいんだなあ」


「こ、この事は、どうか黒竜王様には内密に…」


「悪いなルシフェル…俺はそういう便宜をはかることは嫌いなんだよ。本人に報告してもらおうか」


「お待たせしました!主!」


「漆黒も梳李と呼べばいいぞ、たまたま俺が力を持って転生してきただけで、この星の為に長い間ヘカテーを守護してきたのはお前らだからな」


「かしこまりました、して本日は何用ですか?」


「魔人国家ギガントは漆黒の守護をしているらしいが…魔王ルシフェル自ら遊びに興じて、この前の危機を見逃したんだとよ」


「こ、黒竜王様!申し訳ありません」


「がっはっはっは!なんだ、そんな事ですか…わしは元々あてにしていませんよ。それにこの前も梳李だからわしを助ける事が出来ましたが、魔人族ごときが何万来た所でどうする事もできますまい」


「それはそれで、ギガントの民としては寂しいのですが…」


「現魔王よ!頭が高い!我と並び立つつもりか!」


「はは!申し訳ありません!」


「漆黒ー!そんなにいじめるなよ」


「少し主の前でかっこつけたくなりまして…」


「そんな事をせずともお前はかっこいいよ」


「ならばいつものようにいたします」


「まあ守護があるなら引越しは無理だな。ルシフェル!それなら魔王城のさらに北に寒さに強い農作物を植えてやる、家畜の飼育場も作ってやろう。さらに果樹園も作ってやる、水を引きあれた大地を肥やして豊かな土地を作ってやる。その代わり漆黒の住処との間に巨大な供物用の祭壇を作るから…定期的に漆黒に食料を運べ、供物を差し出された漆黒は時おりブレスで気温を上げてやれ」


「それで形は少し違うが…守護として成り立つだろう」


「わしもそれは助かります。星の守護の為にあまり動けないのですが…とにかく氷に覆われた大地なので食料には困る事が多いのです」


「ギガントとしても、それはありがたい。黒竜王様に供物を捧げられる上に、そのような豊かな土地をもらえるなら、南に領地を拡げるよりも、はるかに魅力的だ」


「それならそうしようか。明日から取りかかる、ルシフェルは楽しみにしておけばいい」


「梳李!待ってくれ!されたままでは私の気が収まらぬ。開拓と祭壇の建設が終われば任命式に参加して欲しい」


「何の任命式なんだ?」


「原初の魔王の称号を受け取ってもらいたい」


「我ら魔王はずーっとルシフェルと言う名を引き継いで魔王になるのだ。原初の魔王サタン様以外は代々そうなっている」


「サタンか…懐かしいな。確かにやつは強かった。わしもこの前の梳李を見た時に、サタンの生まれ変わりだと思ったからな」


「それで原初なのか?そんな悪魔的称号を俺に渡してどうするんだ」


「ギガントでは原初の称号をいままで渡した事は一度もない。だが原初のサタン様は必ず自分に並び立てるか、もしくは自分を超える存在が現れる時が来る、その時に原初の魔王の称号を送るように魔王にしか閲覧の出来ない手紙を書き残しているんだ」


「人族のロドリゲスでは国王にしか閲覧出来ない伝承の書とか、魔人国家ギガントでは原初の手紙とか…この世界は後世に伝えるのが好きなのな」


「主!じゃなくて梳李!それは少し内容が違うのです。人族に伝わるそれは歴史の出来事を後世に伝える為の物、サタンの手紙は魔人の持つ星詠みの力やさらに上の未来予知の能力によって、後世に戒めの為に遺したものなのです。サタンは魔人の持つ魔法力が魔に飲まれる可能性を危惧していました。星詠みや未来予知の能力は万能のように思えるのですが、その能力に長けた者は自身を神のように思い上がり、やがて魔に飲まれるのです。そしてそうなると、それを突破口にしてゴルゴーンが攻撃してくる隙を与えてしまう。サタンはそこまで詠み切って後世の魔王に遺言を残したのです」


「なるほどな…漆黒としては俺がその原初の魔王って称号をもらうことについてはどう思うの?」


「梳李にギガントごときが称号を贈るなど、片腹痛い話ではありますが…星の為には良い事かもしれません。少なくとも魔人で梳李に逆らえる者はいなくなります。平和の維持には重要な称号と言えるでしょう」


「わかった!漆黒がそういうのなら気持ちよく任命されるよ」


「おめでとうございます」


「ちなみにあれか?ロドリゲスの大賢者勲章と同じで、魔王よりも格上扱いになるのか?」


「もちろんだ、ギガントでは神と同等に扱われる事になる」


「はいはい、わかったよ」


「なんだ嫌なのか?」


「嫌と言うより…俺が俺自身にしてる評価と比べると分不相応なんだよ。たいした事も出来ないのに、身の丈に合わない立場ってのはちょくちょく疲れてな」


「それは梳李の謙遜が過ぎるんだよ。恐らく星の創成の時代から梳李を超える人物はいないと思うぞ、原初のサタン様ですら同じ時代を生きていたとしても、梳李には敵わなかっただろう」


「とりあえず頑張るよ。1週間あれば北の農園や畜産場と祭壇は完成するだろう。そんな段取りで頼む」


最近魔力タンクとしてフェアリーの横で寝てばっかりだな。あんまり成長すると小さい星なら跡形もなく粉砕してしまえるほどになりそうだ


「みんないつも付き合わせて悪いな」


「なにを言っているんだよ、梳李が損得にこだわらない交渉や、身を切って色んな国に尽くす姿勢を見せて、万人の心を開いてくれるおかげで、急激に星は幸せの方向へ進化している。感謝しかないよ」ヘカテー


「それならいいけど…今度は原初の魔王だって!」


「聞いていたが、流石にサタンだな。やつの未来予知は凄まじい物があった。そして最後にゴルゴーンがこの星に攻めてくるような宇宙大戦の可能性を示唆した上で、それを食い止める事のできる英雄が現れるとも予知していた。それが今なのか?梳李なのか?はわからないけど…サタンの残した遺書に間違いはないと思うよ。それに原初の称号を得た事で、魔に飲まれる魔法士も出なくなるだろ。私の嫌な思い出も緩和されるというものだよ」ヘカテー


「だから…私からもちゃんとお礼を言わせて欲しい。梳李…いつもありがとう」ヘカテー


「て、照れるじゃないか」


「どうもありがとう」


「だから…照れる」


「ほんとにありがとう」


「あ!梳李が赤くなってるー!」エンジェル


ちゃんちゃん!



第61話に続く


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