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第55話 新たな開発


「フェアリーに質問なんだけどいいか?」


「どうされましたか?」


「前に話をしたけど、転移門の使用は時期尚早だと思うんだけど、議会の為に毎回各国の首脳がセントラルまで来るのも大変じゃん。そこでさ通信の出来る魔道具を作れないか?」


「通信相手が魔力制御が上手な人であれば、私となら通信できますよ」


「それならそれを作ってくれる?来週から各国の首脳をヘカテー王国に招待する事になったから、議長になった挨拶回りを兼ねて、首都まで各国の首脳陣を迎えに行く事になっているんだよ。その時に渡しておけば世界のホットラインを作る事ができて、ダンジョンブレイクや悪魔憑きの出現と言うような災害時に、円滑に助けに行く事ができるし、普段の議会運営は大会議室にセントラル陣営を集めてリモートで出来るから」


「わかりました。ヘカテーはその事は許可されますか?」


「もちろんかまわないよ。それに梳李の事だから、それをする事で他にやりたい事もあるのでしょ」


「ヘカテー鋭い!やりたい事ってのは未開拓地域の掌握をしたいんだよ。漆黒を助けに行った時の様な事が、また起こるかもしれないし、未開拓地域にあるダンジョンの場所や数も掌握しておきたい。この前八つ当たりに使った砂漠なんか、それそのものが凶悪なダンジョンのようだったしな」


「それに砂漠で倒した魔物からは新たな資源がドロップしたから、それを確保しながら世界的に研究する必要もある」


「それでサミットの場で各国から研究者を集めて、研究施設を作る事を提案されたのですね」フェアリー


「フェアリーは提案した時点で理由は理解したと思っていたよ」


「少し想像は出来ましたが、新資源の扱いはヘカテー王国を中心にされると思いましたので」フェアリー


「それも考えたんだけど…それをするのはズルいと思ってさ。今更な気使いではあるけれど、ヘカテー王国が力をつけすぎるのも良くないなと思って」


「そうなのですよ。今更だからわからなかったんです。ふふふっ!」フェアリー


「研究施設に資源を渡すときに、フェアリーの解析結果も渡しておけば、ヘカテー王国でも考え付かないような、新たな利用方法を研究結果として発表する人も居るかもしれないしな。ここまで世界がまとまったのだから、全ての情報を大きく開いて行く事も大事でしょ」


「確かにそうですね」フェアリー


「エンジェルは背中に何人乗せて飛べる?」


「10人や15人は楽に乗せて飛べるよ。猛吹雪とか劣悪な環境下でなかったら。プロテクションされて飛ぶのも慣れてきたし」


「それならガルーダチームをセントラルのダンジョン探索チームにして、アスコットチームは未開拓地域の探索チームにしようかな」


「固定せずとも交代で両方連れていく手もありますね」ヴィーナス


「そうだな、それも有効だな」


「あとセントラルにヘカテー族の工房を作って移住させる準備もしなきゃな」


「何人移住させるの?」ヘカテー


「ミーティア弓道専門店の矢とミーティアを作っている工房の100名を、工房ごと移住させるのが一番良いと思ったんだけど…」


「確かにそれなら良いね」ヘカテー


「それにその時に買う土地にヘカテーの神殿も立派なやつを建てようと思ってるしな。神官もヘカテー族から人選しよう」


「愛じゃな!愛を感じるよ梳李!」ヘカテー


「盛大に感じてくれ」


来週から始まる各国訪問の準備に取り掛かった。訪問先に冷蔵庫の普及の為の魔石づくりや箱の作成方法の指導、これにより蔓延する伝染病を抑える事ができる。ヘカテーから出荷している農作物や畜産物の提供、これにより各国独自の食文化の新たな研究と食料難の緩和の狙いもある。セントラルの神殿の建設を、6カ国の職人チームによる分業とし、現在の技術の最先端の粋を集め、その資金を各国の景気回復に役立てる。そのほかそれ以外の事も、申し出があれば協力出来るように、久しぶりに大森林に討伐に出かけて資源を確保した


「ヴィーナス!懐かしいなあ」


「はい!主!」


「はははっ!思わず主か!ここで聞くとその方が確かにしっくりくるな」


「この深淵の大森林を1部伐採して街道を通しても良いかな、街道沿いを全て城壁で仕切る必要があるけど、その延々と続く城壁も彫刻や光る魔道具で絶景にする事で、長旅をしても一見の価値がある街道に出来るし、海まで街道を通して観光地も作りたい。なにより世界中の人が、いままで見てきた景色も常識も、この星の1部でしかない事を認識して欲しい」


「セントラルからヘカテー王国までは遠い道のりだから、転移門を大森林の入口辺りに作るだろうと想像してたけど、あえてそのまま街道でつなぐんだね」ヘカテー


「その方が良いような気がするだけだけどね。転移門を(おおやけ)にしたくないのと、不便な事に味もあるよきっと」


「梳李と話をしてると、女神の私でもそれが良いと思うようになるから不思議だよね」


「その感覚は俺自身にはわからないけど、旅はそういう物じゃん、壮大な景色を眺めて感動する事に、効率も便利さも必要ないじゃん。むしろ道中の苦労によって、感動が大きくなるという事もあるし」


「それは確かにそうだね」ヘカテー


「それに長い街道の整備や宿場街を作る事も大きな雇用対策にもなるでしょ」


「大森林の開発と未開拓地域の探索を合わせれば、また途方もない資金と資源とアイテムが、ストレージに飛び込んで来るから吐き出さなきゃ」


「だけどそんな事はフェアリーと梳李でやった方が早いんじゃないの」ヘカテー


「そうなんだけど、冒険者組合で冒険者を募集して大森林を開拓して、コツコツと街道整備も宿場街の建設もした方がロマンがあるじゃないか。危険を回避するために、城壁は先に作った上で、城壁内の魔物は選別しておく必要があるだろうけど、お祭りみたいなものさ」


「世界中の心を踊らせるわけね」ヘカテー


「梳李らしいね」ヴィーナス


「私の国でもある大森林が変化をする事は楽しみだよ」エンジェル


「さて来週からまた忙しいぞー!」



第56話に続く


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