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第50話 ブラックスミス


黒竜王騒ぎも落ち着きドワーフの国に行く段取りを考えていた


新婚旅行から帰ってきた時に漆黒とスピリット、チャイルドを、ファミリーの一員として紹介したのだが、セブンスターズの新メンバーはまだ色んな事を認識してなかったので、たいそうな驚きようだった。オーディションで、守護神ヘカテーが挨拶した事の方が、よっぽどぶっ飛び案件だと思うのだが、冒険者はドラゴンに対する憧れや夢の方が大きいようだ


あと、新メンバーが入ってわかった事だが、ドドとアン達の父親は元々同じパーティだったらしく、ドドはこっそり2人を守っていたようだ。帰省する時は一緒に行きたいと申し出ていた


「アンとサラの家にはいつ行く?いまのうちに行っておかないと、何かまた事件が起きたら行けなくなるぞ」


「休みが取れたら私達はいつでも行けます」


「言えばアスコットもミーティアも休みをくれるだろ。ドドも行くならガルーダにも言わなきゃダメか。お父さんは1人なんだっけ?」


「そうです、母は早くに亡くなって、父が男手ひとつで育ててくれました」


「セントラルに連れてくれば良いんじゃないのか?」


「それがなかなかの頑固者で…ドドはよく知ってると思うのですけど」


「怪我した後は、なんの仕事をしてるんだ?」


「鍛冶師ですよ。武器や武具よりも、包丁やフライパン、鍋などの調理器具を主に作っています。弟子も取らないで、足を引きずりながらひとりで働いてるいるので、私達は早く引退して貰いたいんですけど」


「はじめに足が治せないかフェアリーに見てもらって、それからゆっくり話せばいいな」


「よろしくお願いします」


「俺は明日は冒険者組合と商業組合に顔を出して、街道の仕事をしているルイーダの組に、差し入れに行くから、明後日出発しようか。エンジェルに連れて行って貰うから、向こうで1泊して次の日には帰ってこれるよ。宿はある街なのか?」


「うちに泊まってください」


「お父さんもドドと2人でゆっくり酒でも飲みたいだろうし、親子水入らずの時間も必要だし、俺達は夜は観光がてら街をぶらついて宿に泊まるよ。話は次の日でも良いのだし」


「だけど旦那様を外に行かせるなんて、嫁としてのプライドが」


「わかった、それならその時の流れで考えよう。久しぶりに帰るなら、お父さんがひとりでちゃんと片付けをしてるかわからないだろ」


「それがありました。そのまま連れて行けるような状態では無い方の確率が高いです」


「はははっ!普通はそうだよ。街は大きいのかい?」


「ブラックスミスという鍛冶師の街です。工房と鉄製品の販売所や武器屋、武具屋、道具屋もたくさんあって、酒場がいっぱいです。いろんな所から仲買の商人が集まるので、宿に困る事は無いですよ。ちかくにダンジョンはなく鉱山があります」


それから次の日に予定をこなして組合を回った、特に用があった訳ではないのだが、冒険者組合も商業組合も、近頃は俺の居ない時に必ずどこかの国が尋ねて来るからだ。ついでにどうなるかわからないけど、という条件をつけてドワーフの商業組合長に、アンとサラの父親のアルフ宛に紹介状を書いてもらった


冒険者時代も有名人だったらしいのだが、鍛冶師としても国内では有名で、弟子は取らない方針にも関わらず、希望者はあとを絶たないらしい。サメハダ商会の関係者として、仕事をしてくれるなら、組合としても全面協力したいとの申し出だった


商業組合に顔を出すと、ドーピーがかけよって来て、エルフの国だけ商業組合のセントラルの出張所がなかったが、本国からリビアが出向になった事と米という特産物ができた事で、本国の族長会議も身を乗り出したらしく、米の収穫に合わせて、乗り込んで来るようだ


冒険者組合はデイビスで起こったダンジョンブレイクがいいきっかけになり、最近は情報交換をしっかりするようになった。冒険者も種族混成のパーティがちらほらと見られるようになってきた


商業組合にしても、各国がお互いの得意分野を分業した後に、セントラルで組み立てるという、新しい商品開発の流れもできつつあった


セントラルには確実に、各国共存の波が来ている流れの中で、ヘカテー族を今後どう扱っていくかを考えていた


「ヘカテー、いるか」


「なぁに?あ、な、た」


「それは、ノッた方がいいのかな」


「ベットで私にノッてくれるなら、今は乗らなくていいですよ」


「なにげに前と比べて、返しが上手くなった気がするのだけど、何かあったのか?」


「私が地球の知識を他のみんなに講義して、みんなが私の残念な所を治しているのですよ」


「はははっ!残念は認めたんだな、確かに戦闘でもなんでも、自分を正確に認識する所から成長がはじまるのは確かだな」


「私は残念だなんて思ってなかったけど…あれだけ毎日みんなに言われたら、残念なのだろうなと、思うしかないんだもん」


「そかそか、俺は少し残念なままでも良かったけど、とりあえずぶっ込み続ける情熱は尊敬しているから」


「もう少し女神らしい能力を尊敬してくれて良いんだけど!」


「ところでさあ、ヘカテー族をセントラルに組み込む事はどう思う?」


「私は問題ないと思うけど、梳李がどういう立場でどう接するかは、じっくり考える必要があるだろうね」


「いまは冒険者組合でも、商業組合でも、ケズリファミリーに対して、軽くご機嫌を取りながらでも、自国を発展させようと努力している節があるけど、ケズリファミリーがヘカテー国の所属という事になった時に、ロドリゲスは少し揺れるだろうし、他の国がどう受け止めるかもわからないよね」


「そうだよなあ、メリットが入ってくる方は喜ぶけど、少なくなる方はシビアだもんな。慌てた話じゃないから、もう少しバランスとタイミングを考えてからでもいいな」


「明日はドワーフの国のブラックスミスって街で夜は遊ぶ予定だから、フェアリーの知識を駆使して、自由に予定を決めてていいからね」


「当然そのつもりだよ!」


次の日ブラックスミスへ向かって飛んでいた。ドドもアンもサラもそわそわしている


「ドワーフは乗り物が苦手なのか?」


「どちらかと言うと…」アン


「ドドは?大丈夫か?」


「わしは馬車も苦手なんです」ドド


「エンジェル!少しゆっくり飛んでやって!3人ともこうして寝そべってみな、空は気持ちいいぞー!」


「ヴィーナスも久しぶりに空を駆けるか」


「はい!是非!」


俺とフェアリーはヴィーナスに乗って併走した。前回は猛吹雪の大雪原だったから、久しぶりの大空に、ヴィーナスも生き生きと駆けていた


「私達もそこにも乗ってみたいですー」サラ


「ここはまた今度な、夜空でも見上げながら草原で乗せてやるよ。海の砂浜も最高だぞ」


「約束ですよ!」サラ


「ああ良いよ。みんなも行くって言えば順番で交代しながらだけどな。ロドリゲスの王城でも次から次に出てきて、あの時は大変だったな」


「私も慣れましたけどね。それに人に姿を変えられるようになってから、知らない人とも話が出来るようになったので、人にも慣れましたし、人と接する事も、楽しいと思えるようになりました」


「それは凄い事だなあ、ヘカテーの残念さが減った事といい、ヴィーナスが人に慣れた事といい、成長というか…みんな変化していくんだな」


「幸せな変化です!」


エンジェルに慣れてきたドワーフ3人はとても楽しそうに空を眺めていた


「見えてきましたよ」サラ


「結構大きい街だなあ。領主は居るのか?」


「ドワーフの街は領主が管理している訳では無くて、鍛冶師長が取りまとめています。近くの鉱山の鉱夫と鍛冶師と両方の頭領になってますね」サラ


「それなら挨拶されたり、家に招かれたり、めんどくさい事はなさそうだな」


「ドワーフ族はそういう政治的な策略はほとんどないですよ。基本的には一族全部職人です」アン


「よし!それなら明日の朝に中央公園で待ち合わせしよう。ドドもアンとサラもお父さんとのんびり過ごしておいで」


「わしまで連れてきてくれてありがとうな」


ブラックスミスの街はとても賑わっていた。面白いのはドワーフは仕事しながら飲むようで、朝から酒場もやっていて、街を行き交う職人はみんなほろ酔いだった。飲んでないのは買い付けの商人だけなので、すぐに判別できた


「面白い街だな」


「みんな酔っ払いだね」エンジェル


「お祭りでもやってるみたいだね」ヴィーナス


「まずはおすすめの宿ね。広場の外れに一番高級な宿があるらしいよ」ヘカテー


「んじゃとりあえず宿を取ろうか」


街で一番の高級宿を確保した。3階建てで3階がスイートルームの様な広い部屋になっていた。とりあえずホテルに一旦入り、ヘカテーのおすすめコースでブラックスミスの街を堪能した。露店はなくセントラルの様に通りも整備されていなかったが、武器屋の隣にケーキ屋さんがあったり、鍛冶工房の隣に食堂があったり、散らかった感じが返って新鮮だった


そんな中でも、アンとサラの実家はとても良い場所にあり、鍛冶工房に使うには勿体ないような立地で、他の街から来る商人達が集まる、宿とレストラン等が密集する場所にあった


「平和そうな街で安心したな。近頃どこに行ってもなんかあるからな」


「だからフラグ立てるのは辞めましょう」


「ヴィーナスはそれ気に入ってるの?」


「はい!とても」


どこに行くにもこの3人は一緒にいるから、少し他の奥様方と比べると、不公平だなあと考えているうちにウトウトしていた


頑固な父親かあ…嫁にした後で来るのは初めてなんだよな、緊張して来た



第51話に続く


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