第49話 激闘!ギガース
寝顔を見ていたが眠ってしまったようだ
「おい!どなたか知らぬが聞いてくれ」
「ん?夢か?」
「わしは500年ほど前にこの世界にいた、風魔の小太郎と申す者でござる」
「戦国最強と言われた忍びの軍団の風魔さんですか?」
「わしが亡くなる前に忍術をしかけて、思念を残しただけなので、貴殿の呼び掛けに応える事はできぬが、漆黒を助けてやって欲しい」
漆黒というのが黒竜王の名前なのだろうか
「5代目と言えばわかる、漆黒はわしの従者だった、唯一の友といってもいい。漆黒の危機に助けが来た時に、与えるために残したものだ。遠慮なく使って助けてやってくれ。わしの未来から来たものよ、よろしく頼む」
「スキル隠密極を覚えました」
「スキル水上歩行を覚えました」
「スキル風魔究極奥義、空中殺法を覚えました」
「スキル風魔究極奥義、爆炎撃を覚えました」
夢ではなかったのか、風魔の小太郎さんはあんなに大きい人だったのか、漆黒を頼むと言っていたな
「梳李は起きていたの?」エンジェル
「いや、5代目という人に起こされた」
「なんだって?5代目とあったの?」
「エンジェルも5代目風魔小太郎を知っているのか?」
「黒竜王様の主だった人だよ、その人も確か地球からの転生者だった」
「漆黒の危機に助けが来たら、与えるつもりで忍術を仕掛けたと言って、俺にいくつかスキルをくれた」
「そうなんだね、恐ろしい見た目に反して5代目も優しい人だった。梳李とはだいぶ戦い方も違ったけど、忍術って物を使いこなして、空を駆けながら爆炎を敵に浴びせ、数々の魔物を屠っていた」
「その忍術をくれたみたいだ。水の上を歩いたり、空中戦もできるようになったようだ」
「何百年も前から黒竜王様の危機を予測していたのかな」
「予測していたと言うよりは、もしもそういう事があればと、仕掛けてあったんじゃないかな、話し方はそんな感じだったよ」
「5代目とお会いしたのですか?」
「フェアリーも目が覚めたのか」
「なつかしい人が出てきたものですね。私が青竜王様とはじめて出会った時に、ナビゲートした方です。5代目は黒竜王様を従えていましたね」
「転生者はちょくちょくいるのか?」
「私が知る限り5代目と梳李と2人だけですよ。5代目もヘカテー様に気に入られこの星に貢献もされました。忍びと言う性質上、全ては隠密行動で歴史に名を残す事は無かったですが、ダンジョンを巡って世界大戦が勃発した時に、常に有利な方の戦力を削り勝敗がつかないようにしていました。セントラルが出来たのは5代目の功績です」
「俺は目立ちすぎだから…なんかかっこいいな」
「5代目は忍びであった事もありますが、自分の外見にはコンプレックスがあったので、それも原因かもしれませんけどね。人にしては身体が大き過ぎましたし、顔も鬼のような形相をされていました」
「それでもさ、比べるわけじゃないけど、影から支える事は男らしいというか、なんだかかっこいいなって思ってさ。地球の歴史に出てくる5代目は残虐非道な感じだったんだけどな」
「梳李とは方法が違うだけで、5代目もやはり被害を最小限にする為に、戦場を鬼となり駆けていましたね。残虐である事も5代目の優しさに思えましたよ」
「なるほどなあ、それもわかる気はするな」
「おはようございます」
「ヴィーナスは休めたか?」
「とてもぐっすり休めました」
「漆黒の主だった5代目が仕掛けた忍術が発動したって事は、おそらく間もなく黒竜王の住処だ。いくか!」
目的地は近い、黒竜王の危機も間違いなさそうだ。俺達は警戒を強めながら先を急いだ
視界の先に沼に囚われている黒竜王を捉えた。ギガースらしき巨人も数体だがいて、黒竜王をまさに攻撃しようとしていた。もがき苦しんでいる黒竜王をまずは何とかしなくては
「フェアリーはここに残って援護を頼む。ヴィーナスとエンジェルは思う存分暴れろ。俺は黒竜王を何とか助け出す。こちらに投げるからフェアリーが回復してくれ」
「わかりました」
「いくぞ!」
エンジェルが先行してギガース目掛けてブレスをはいた。注目が集まる
ヴィーナスは黒竜王が瘴気の沼に囚われている事を確認して女神の慈愛を発動した
3人の援護を受けながら隙をついて黒竜王に近づく。水上歩行によって俺の足は取られないが、黒竜王は身体の半分が沈んでいて、そのまま持ち上げる事は困難だった
「ヴィーナス!女神の慈愛の範囲を沼に限定して少しでも強力に頼む!」
俺はエンジェルにもらった鱗で作っていた、白竜の杖を出し、杖の先にアゾプション、反対側にアナザーワールドを展開し瘴気を吸い始めた。猛吹雪が徐々に弱まっていく
「梳李!それでは梳李が危険です!」フェアリーが悲鳴をあげる
「ぐあああ!フェ!フェアリー!アナザーワールドを吸い取ってくれ!」
「アゾプション!くっ!」
「梳李!危険です!」
「これしかないんだ!頼む!ぐおお!」
瘴気にあてられるのは、とんでもない苦痛に襲われる。死にたいと思う程の苦痛とはこれを言うのだろうか。白竜の杖のおかげでかなり軽減されていると思うが、瘴気にあてられた魔物が暴れるのも無理はない
フェアリーは俺が苦しむ姿を見て、泣きながらアナザーワールドをブラックホールで吸い取る。出発前にこの魔法を練習した時、吸い取りながらブラックホールに入れようとすると、ブラックホールの圧力の問題なのか、はっきりした理由がわからないがドレイン効果が発動して逆流してしまう為、アナザーワールドに収納する必要があるのだ
「うおおおおおー!」
ヴィーナスが堪らず俺を抱きしめて慈愛を送る。エンジェルは交戦中でブレスが飛び交いギガースは暴れている
「はあ、はあ、ヴィーナス、少し楽になった。あと少しだ」
「アゾプション、アナザーワールド!」
「梳李ー!」
「はあ、はあ、大丈夫だ、泣くなよヴィーナス」
「梳李ー!」
「終わったぞ、漆黒をフェアリーの方になげる!ジャイアントスイング!」
「フルムーン!」
「ヘカテー!満月だ!」
「了解!フレイムヘイズ!」
太陽神とも月の女神とも言われるヘカテーの神の力、アルカーヌムが発動した、大地は虹に包まれ空にはオーロラがカーテンを広げ、あらゆる光が降り注いだ
「エンジェルやるぞ!」
ギガースは3体、アルカーヌムによりできた不思議な空間をエンジェルのブレスが1体を捕捉する
「空中殺法!二刀流狂喜乱舞!」
エンジェルが捕捉した1体を共闘で粉砕した
「次だ!」
「風魔究極奥義爆炎撃!」
固まっている2体の頭上から爆炎の豪雨を降らせる。そこに高速飛行しながらエンジェルがブレスを浴びせる。爆炎の豪雨と7色のブレスの共演が2体のギガースに縦横無尽に降り注ぐ
「やったか?」
「そのフラグを立てるのはお辞めください」
「そうだな、念の為に大剣も使って突っ込むか!」
爆炎が降りブレスが飛ぶ中を二刀流連撃が走り抜ける
「大丈夫だ!エンジェルもういいぞ!」
「ヴィーナスはフラグなんていつ覚えたんだ」
「ヘカテー様の講習会で学習しました」
「あいつはいつも何を教えてるんだ」
「漆黒はどうだ」
エンジェルは漆黒に歩み寄り、息絶え絶えの漆黒を見て号泣している
「黒竜王様ー!」
「フェアリー好きなだけ使え」
魔力も体力も残り少ないが、漆黒のとなりに寝そべった俺に、フェアリーがしがみつく。残りわずかとなった魔力を、くちびるから吸い取る。ヴィーナスも強く抱きついて来て…これが緊急事態じゃなかったら最高なのにな。意識が薄れていく
どれくらい時間が経ったのだろうか雪の上に6人寝ている。みんなが俺に寄り添うように、魔力を補充してくれているのだろうか、1人は漆黒なのだろうけど…あとの2人は誰だろう、1人は子供だな。ダメだ、また意識が薄れていく
「梳李!梳李!」
「ん?おはよう」
「梳李様!助けて頂きありがとうございました」
「漆黒か?元気になったか」
「おかげさまで」
「なんで人型なんだ?5代目の従者だったからか?」
「梳李様が寝ている間に従者になる儀式を済ませました。私の事もお使いください」
「んでそこの親子は誰?」
「姉上と姉上の子供です」エンジェル
「赤竜王も来てたのか。この前は鱗ありがとう。これがもらった鱗で作った大剣です」
「遠くから閃光が走るのがみえていましたよ。良き武器にして頂き私も嬉しいです。漆黒様同様私と子供も梳李様の従者となる儀式を済ませました。プフォテロッソと申します。こっちが子のピッコロッソと言います」
「みんな従者になってくれるのは心強いけど、守護する土地があるんじゃないの?」
「そうなのです。ですからこの大雪原と赤竜の住むオアシスに神殿と転移門を設置してください。そうすればいつでも守る事も梳李様の元へ馳せ参じる事も出来ます」
「なるほどな、赤竜王はどこを守ってるんだ」
「私はセントラルのちょうど裏側にある砂漠の真ん中のオアシスです」
「こことエンジェルが守っていた大森林とセントラルの真裏で守備のトライアングルを作って居たのか」
「よくわかったね」ヘカテー
「それなら神殿を作れば比較的自由に動けるな」
「梳李様!その前に我らに名をください」
「漆黒は漆黒でいいじゃないか、変えなきゃだめか?」
「いえ、漆黒と名付けて頂けば問題ありません」
「黒竜王が漆黒で、赤竜王がスピリットで子供はチャイルドだ」
「スピリットは精霊、チャイルドは子供って意味だ」
「あと仲間になるなら梳李でいいからな」
「ありがたく名を賜ります」
それから数日、ヘカテー王国からもたくさんの応援を呼び大雪原とオアシスに神殿を建てた
オアシスはとても広く大きい湖があって新婚旅行には最高の場所だった
転移門は3か所ある神殿を自由に行き来出来るように配置し、最後にヘカテー城に繋いだ。それで乗り換えすれば、セントラルに来れるようになった
今回の騒動でゴルゴーンが本気な事もよくわかったし、ギガースが強い事もよくわかった。戦力はいくらあっても邪魔にならないが、こちらの結束が固く増強する毎に、ゴルゴーン側も対策をしてきそうな気がした
変に不安になっても仕方ないし…疲れたから今日はアリアナの大きく柔らかいので癒されよ
アリアナー!
第50話に続く




