第44話 伴侶という仲間
「やっぱエンジェルの背中の上は最高だなあ!エルフの国の未来も見えてきたし、いい里帰りだったな」
「ありがとうね、ほんとに里帰りして良かったよ。オリバーにも会えて、なんとなく喉の奥に引っかかっていたものもすっきりした」
「俺には経験がないけど、切れない縁というか、得体の知れないものはなんかあるんだろうな」
「そうなんだよね。新しい生活をしていても、何か言ってこられると無視は出来ないというか、なんか言葉では言い表せない、嫌な感じがわずかに残っていたんだけど、真面目に暮らしているようだし、あんなに一生懸命謝ってくれたし、梳李に恐怖する姿は可哀想だったけど、思い出したらまだ可笑しい」
「理由はなんでも、ミーティアがすっきりと気が晴れたのなら、良かったじゃないか。俺は帰ってからアリアナとアスコットに、話をすると思うと雷雲の中に居るようだけど」
「私が話してあげようか?」ヘカテー
「それは自分でするよ、ヘカテーが残念だから言うんじゃなくて、俺が話すべきでしょ」
「残念とはなんだよー!」
「だけど、お父さんは初対面でフリーズしたのが、渾身のギャグだったみたいだし、親族一同で外でならんで寝てたし、ミーティアの実家はとてもヘカテー臭のするご家族だったな」
「ヘカテー臭ってなんだよー!」
「私も13年ぶりにあったらあんな感じだったからびっくりしましたよ。悪くないんだけど、足りないというか、少し中途半端で残念だったね」
「いまや救国の英雄だから頑張って貰わないとな」
「全部スルーかよー!」
「そういえば、明日のオーディションの開会の挨拶は、審査委員長としてヘカテーにお願いしたいんだけど」
「私でいいのか?」
「うん私がいいの、3人でステージに上がって真ん中でヘカテーが代表の挨拶をして、フェアリーとヴィーナスは2人で、参加者の中に悪意がないかを探ってもらって、エンジェルは一応の守りって感じで頼むよ。どこに行っても俺のおまけのように、見られちゃうのが俺はいい気分じゃないし、実は3人が凄いことを、セントラルでは認識させといた方が良いと思ってさ」
「なるほどね、そういう事なら任されたよ」
「女神らしくばっちり頼むよ」
「まかせろー!」
「気配を感じたらどうしますか?」ヴィーナス
「生け捕りにすれば、方法はなんでもいいよ。冒険者組合の代表と副代表は全員揃うだろうし、警備隊も多分5カ国全部くるだろ」
「それなら、拘束したあとヘカテーから経緯は説明して、警備隊に引き渡す流れで良いですね」フェアリー
「無難だな、それでいいよ」
大空を満喫しながら考えていた、結婚するなら全員同時にと思っていたのだが、事後報告する事になったから、何から説明するのが良いか…特に名案も浮かばないし、そのままを話すしかないな
「ただいまー!戻ったよー!」
「梳李ー!」
アスコットが飛びついて来た
「お疲れ様、久しぶりの親子水入らずの、馬車の旅はどうだった?」
「父上が引退されたから、初めて親子らしい会話が出来たよ。とても尊敬できる人じゃないと思っていたけど、当主という上着を脱いだ父上は、とてもお父さんらしかったよ。機会をくれてありがとうね」
「梳李、早速ですがルイーダ達の行う工事ですが、こちらは取り掛かって良いですか、他の2区間の工事は既に始まりました」
「ガブリエルは少し過密スケジュールになるだろうけど、現地視察も踏まえて全て任せるよ。それと諜報部隊は全員をボディガードと、連絡係にするようにして、円滑な連携と身の安全を最優先して欲しい。これから紹介する3人がいれば、情報収集は容易くなった。フェアリーとヴィーナスとエンジェルだ。端的に説明すると、フェアリーが管理者と女神ヘカテーがマテリアルボディを得た姿、ヴィーナスは雷風でエンジェルはバルだ、2人が進化した結果こうなった」
「アリアナから話には聞いていたけど、ほんとに3人とも絵画から出てきたような美しさね」
「アスコットとガブリエルは明日のオーディションの話は聞いているか?」
「はい聞いています」ガブリエル
「聞いたよ」アスコット
「忙しい中だが、今後のセブンスターズを決める大事なイベントだからよろしく頼む。アスコットとガルーダはそれぞれが、2隊の代表だから、その辺りの心の準備も頼むな。メンバーは審査結果をまとめてから、後日発表になるだろうけど、2隊がいつでも仲良く連携が取れて、時には良きライバルであれるように、隊長としての気構えをお願いしたい」
「はい!」アスコット、ガルーダ
「あと、もうひとつ大事な話がある。エルフの国で俺達5人は名誉族長と名誉副族長になった。ミーティアのご家族も救国の英雄として、ラストネームを付けて、ライスと言う家名を持って、歴史に名を残す事になった。そういう出来事の中で、俺と、フェアリー、ヴィーナス、エンジェル、ミーティアは結婚した。アリアナもアスコットも望むならそうするがじっくり考えてくれたらいい」
「私は梳李と決めていましたから、考えるまでもないですよ。実家に行った時に別れ際、お父様に伝えてあります。大賛成でしたよ」
「誰が正室で誰が側室とか区別はせずに全員平等に扱うけど、それで良ければアリアナも今からアリアナ・ヘカテーと名乗ればいいよ」
「やった!よろしくお願いします」アリアナ
「こちらこそよろしく頼むな。それとアリアナこっちに来てくれ。みんながいる所で申し訳ないけど…」
アリアナを抱きしめてキスをした
「アスコットは少しのんびり考えて結論を出した方がいいと思うぞ。お前はロドリゲスの貴族として、俺から離れる時が来るかもしれないからな」
「わかった。気持ちは決まってるけど、考えるよ、寝る時はみんな一緒でいいよね」
「良いけど、ちゃんと考えろよ」
「あの…梳李、それは立候補は出来ないのですか?」サラ
「ん?今の質問はサラか?」
「そうです!私も!多分お姉ちゃんも、梳李から離れたくありません!」
「アンとサラはいくつなの?」
「22です!実家を出る時に伴侶は自分で決めると了解を得ています」
「というか…2人の方が年上だったのね。その話の前に、女神の慈愛を頼む、サラの視力回復とみんなの癒しを」
食堂とリビングが光に包まれて、全員の疲労が消え、血色が良くなった
「アンとサラとは付き合いも長くないし、個人的に話をした事も無いと思うけど、他の人と結婚しても、仲間である限り大切にはするよ」
「梳李がそばにいて、他の人をじゃがいも以上に見られるはずが無いです」
「ははは!じゃがいもなあ、光栄だけど、もう少し時間かけても良いんだよ」
「ここに来てから、毎日お姉ちゃんと話しています。梳李がアリアナやミーティアみたいに私達の事も扱ってくれたら、もっと幸せなのにねって」
「アンもそうなのか?」
「は、はい!私はそういう話をするのが、恥ずかしくて苦手なのですが、気持ちはサラがいった通りです」アン
「女の人は良いなあ、そういう確かな形があって、俺も女が良かったよ」マール
「マールはミーティアの子供だから、俺の子供になったのと同じだし、エルフの国ではライス一族になってるから、ほんとうの家族と同じだよ」
「それならいいや!いえーい!」
「私は算術も戦闘もできませんが、梳李様の寵愛を頂きたいと思っています。メイド長として、死ぬまでお傍から離れないと、決意もしております」オリビア
「オリビアもか?」
「それなら私も考える事も無駄だから、すぐ奥さんにして欲しい。貴族の仕事に支障はないし、何より王都の晩餐会の時に、絵に書いたような美形の貴族の跡取りが、何人も挨拶に来て、お付き合いを申し込まれたけど、私にはかぼちゃにしか見えなかったもん」
「お前らさあ、かぼちゃだ!じゃがいもだ!と失礼だよ」
「梳李、本人が希望してるのだからいいんじゃないか?私は梳李を転生させてから、今日までずーっと見てきた。女神の私ですら梳李の温もりに包まれると、そこから離れていけないのだ。ユニコーンのヴィーナスもそうだ、アルティメットドラゴンのエンジェルもそうだ、本来従者になるなどできないこの2人ですら、梳李の温もりに抱かれると、居心地が良くて離れられんないんだよ。それは魔法でもスキルでもない、梳李が持つただの優しい心なんだよ。能力はレベルやスキル、魔法でこの世界はなりたっているし、行使する事で強くなれたり、攻撃や回復はできるだろうけど、梳李が今まで集めてきたスキルや魔法や称号にも、決して負ける事のない、優しさと温もりを梳李は持っているのだから、ここに居る者がそういう気持ちになるのも無理のない事だと思うよ。それに梳李を独占したい者も1人も居ない、純粋にそばに居て梳李の役に立ちたい、梳李がこれから何をするのか見ていたい、それだけなんだよ」
「わかった、そう言ってくれるなら、大切に思う気持ちに嘘はないし、そうする事がみんなの望みなら、今からヘカテーという家名を名乗って奥さんになってください。俺の魂が燃え尽きるまで愛し続ける事はお約束します」
食堂で握手会ならぬキス会が始まったので、ガルーダとルイーダは家族を連れて、いったん退去した。なぜなら5歳のライリーが俺のお嫁さんになると駄々をこねだしたからだ
あと10年してから考えようね
ヘカテー、フェアリー、ヴィーナス、エンジェル、アスコット、アリアナ、ミーティア、アン、サラ、オリビア10人の奥さんか…一緒に寝るのは9人だけど、ヘカテーの城のベットは大きくて良かったな。慣れてきたらお風呂くらいみんなで入っても良いかなあ
出来もしない事を夢に見る梳李だった
ケズリ・ヘタレー·····ぶぶぷ!
第45話に続く




