第39話 セペト
色々慌ただしく過ごした数日間だったが、少し落ち着いたので、久しぶりにダンジョンに行こうと思っていた。エンジェルとヴィーナスは共に戦って来たし、強いのはわかっているが、フェアリーがどれくらい戦えるのかの確認と、マールとセペトの成長と、サラの戦闘能力と、全部見れるから楽しみだ
「ガルーダ、今日は俺たちもダンジョンに行くよ。今は何階層を探索中なんだ?」
「今日はサラの盾とセペトとマールの連携攻撃の訓練に、20階層のジャイアントオーガを考えています」
「もうそんなに進めるようになったんだな、みんなの力をしっかり見て、ランクアップも頼むな、昨日は各国の冒険者組合の代表とも話をしたから、協力的に対応してくれると思う。あと魔石とアイテムの提出は、俺たち専用の窓口ができたから、そっちで頼むよ」
「クレームですか?」
「いやそういうわけじゃないけど、5カ国でわけることになった」
「わかりました。そのようにします」
「フェアリーはどう戦うのが得意なの?杖を渡そうか?」
「そうですね、梳李が横にいたら魔力は使いたい放題なので、なんでも出来ると言えば出来ますけど、強いて言うなら支援系でしょうか。プロテクションやヒールショット、エンチャントオーラは得意ですよ、魔物に対しては、デバフをかけるくらいなら、攻撃魔法を撃つ方が早いので、まあ大抵の事は梳李から魔力を貰えばできますよ」
「ヘカテーは戦えないよな?」
「私はさすがに戦えないよ。フェアリーの魔法を少し補足する程度と、思ってくれたらいいかな」
「了解ー!」
「んじゃ、俺達もとりあえず20階層に行こうか!」
ジャイアントオーガの住処まで来た。この先は各階層ボスを倒しながら降りるのだが、20階層までは比較的エンカウントしないで来れる。途中エンチャントオーラをかけてもらって、身体強化がどの程度か確認したが、とても優秀で俺に対しては5割増しって感じだ。サラの攻撃も見せてもらったが、パリィ同様にプッシュもなかなかの破壊力があった
「サラは平気か?」
「少しだけ怖いですけど、大丈夫です」
「無理はするなよ。相手の攻撃を自分に寄せるスキルはあるのか?」
「はい!ターゲットがあります」
「それならフェアリーがエンチャントオーラをかけるから、盾で受け止めて踏ん張って耐えてくれ、その間にマールとセペトが攻撃する。慌てなければ問題ないからな」
「はい!」
「マールとセペトは日頃の訓練の成果を、しっかり見せてくれよ」
「わかりました!」
「ヴィーナスにも杖を渡しておくよ、どんな感じか試してみよう」
身体強化症のサラは元から怪力なのだが、フェアリーによって更に強化された。こういう重ねがけのような状態にできるのは、フェアリーの優秀な魔法制御のおかげだ。サラは敵前に飛び出し、ジャイアントオーガの標的になって、何回も振り下ろされる剣を、しっかり盾で防ぎながら耐えていた、マールの弓の引き方もだいぶ上達している。アリアナに教えて貰うようになって急に伸びた。セペトはなんとなく心ここにあらずって感じだな、魔法の展開がとても遅い。それに俺が渡した杖がないな
「フェアリーはサラにプロテクションを!ヴィーナスはジャイアントオーガに雷魔法を撃て!」
「マール、セペトもういい。サラ!下がれ!」
「久しぶりに見たけど、セペトはいつもこんな感じなのか?」
「昨日からなんかおかしいんですよね」
フェアリーのプロテクションは頑丈で、とにかく発動スピードが早い。ヴィーナスはライトニングアローを発射したのだが、ライジングランスのように破壊力があり、ジャイアントオーガを一撃で仕留めた
「フェアリーもヴィーナスも凄いな。2人とも杖をもって魔法を行使する姿が、とてもかっこよかったよ、ヴィーナスは杖を持った方が魔法は強くなるし、角もでないからいいじゃないか。戦女神って感じに神々しく見えたよ」
「ガルーダ、俺達は装備を注文したいから先に切り上げるけど、この先は気をつけた方がいいかもしれないよ」
「わかりました。無理しないで様子を見ながらにします」
ヴィーナスとフェアリーのローブと、エンジェルの格闘服をオーダーする為に、そのジャンルではセントラル随一と言われる防具屋に向かった
「フェアリー、防具屋に向かいながら、サーチで俺がセペトにあげた杖を探してくれないか、持ってなかったから売った気がする。魔力供給は手を繋げば大丈夫か?」
「はい、お任せ下さい」
「梳李、私も繋いでいいですか?」
「ヴィーナスはその姿になっても甘えただな」
「え!なんかずるい」
「エンジェルはいつも手なんて繋がないじゃん」
「そうなんだけど、ひとりだけ避け者みたいじゃん」
「梳李ありました。あのかどの武器屋ですね」
「外からその杖を破壊できないか?」
「やってみましょうか、クラッシュアーマーの杖と言えども、大量に魔力を流し込めば砕けると思います」
「そしたらやっちゃって」
「はい、マジックポアとリモートで…」
「ばっちり魔石だけ砕けました。あれはただの棒ですね」
「ありがとう。俺が渡した杖を売るのも考えられない行為だが、どうせ安く買い取られたんだろうな。ところでフェアリーは、俺の知らない魔法をたくさん知ってるし、魔法制御は俺よりとても上手だね。毎日寝る前でいいから俺にも教えてくれよ」
「ふふっ!いいですよ」
防具屋でひとりひとりに似合うデザインのローブと格闘服を頼んだ、高級感があって機能性がよく、尚且つベテラン冒険者にも引けを取らない、独特のデザインにして欲しと言ったら、デザイナーが来て好みの色と形の確認や、しっくりくる重さをサンプルを着せて確認していた。さすがセントラル随一って店だな
そのあと少し街をぶらぶらして早めに帰った
ガルーダ達が戻ってきた、セペトが相談があるから話を聞いて欲しいと言うので、みんなで聞くことにした
「どうした?」
「俺の前のパーティのメンバーを助けたいんだ、なんとか話を聞いてあげて貰えませんか」
「ガルーダはどう思う?」
「セペト、それは悪いが却下だ。お前を見捨てて逃げた奴らの事だよな」
「あいつら困ってるんだよ。誰かが助けてやらないと、やっていけてないんだ」
「だが、1度裏切った者は…」
話しかけたガルーダを制止した
「助けたいならセペトがうちを抜けてから助けてやればいい。お前の自由だ、抜けたら寮も出ていけよ」
「なんでそんな事言うんだよ、梳李だっていままで困ってる人を助けて来たじゃないか」
「頑張って努力してる人に手を貸すことはあるが、自分を甘やかすやつに貸す手はない。前の仲間は、セペトに甘えているだけだ。一生懸命に生きている人達と一緒にするな」
「俺が居なくなってからも一生懸命やったらしいんだ。だけどどうしても上手く行かなかったらしくて、セブンスターズに俺がいるのを知ってたから、相談してきたんだ」
「友達を助けるのは悪いことじゃないが、セペトが助けたいなら、そのパーティに入って助けてやればいいじゃかいか。セブンスターズは関係ない」
「俺も仲間じゃないか!」
「セペトを助ける事と、セペトの友達を助ける事とは全然違う、それにセペト自身の事は信頼していても、セペトが友達を見る目があるとは思えないしな」
「大事な友達なんだよ」
「ならなぜジャイアントオーガと対峙した時に、マールが弓を構えていたのに、さっさと魔法付与しなかったんだ。お前が集中しなかったせいで、少なくともサラは危険にさらされたんだぞ。サラは大事な仲間じゃないのか」
「それはあやまるよ」
「あやまって済む問題じゃないし、俺に謝る事でもない。冒険者はちょっとした油断が、仲間の命を奪う事もあるんだぞ」
「だから、前の仲間をたすけたいと思うなら、セブンスターズを抜けて、前のパーティに戻れと言っている。俺達になんとかしてもらおうなんて、そんな甘えた考えを認めては、他の仲間に申し訳ないんだよ」
「サラもマールも俺の言ってる意味はわかるよな?難しいか?」
「いえとても良くわかります」サラ
「俺でも梳李が言う事が正しい事はわかるよ」マール
「サラだって嘘をついて入って来たじゃないか」
「お前!梳李に何を言っているのかわかってるのか!」
「ガルーダいいからやめろ、殴った所でこいつにはわからん。セペトお前に余裕があるのは、ここに居るみんなから、与えられている余裕なんだよ。まだ冒険者としても半人前のお前が、1人前の気になるのは勝手だけど、そんな中途半端で、ましてや仲間を危険にさらすやつを仲間と認めるわけにはいかない。これは退職金だ、すぐに用意して寮を出ろ」
「もういい!わかったよ!」
「あと俺がやった杖な、多分お前が持ち込んだ武器屋にはもうないぞ。元気でな」
セペトは去っていった
「梳李すまん、俺が甘やかしたのだろうな」
「失敗は誰にでもあるし、可愛がって育てる事と、甘やかす事の境目は、難しいから仕方ないよ。それに接点の違いはあっても、俺も見ぬけなかったんだから同じだよ」
「それに杖ってなんだ?」
「今日持ってないのが気になったから、みんなの防具を作りに行った時に探したんだよ。近くの武器屋にあったから、売ったんだろうな。こっそり外から破壊しておいたけどな」
「合わせて申し訳ない、毎日一緒に居るのに気がつけなかった」
「みんなで気をつけるしかないさ、有名になればなるほど、甘えたいやつが入隊希望してくるだろ」
「サラとマールは大丈夫だろうけど、自分に甘える気持ちは誰にでもある。油断するなよ」
「はい!」サラ、マール
「だけど良かったの?可愛がって来たのに」エンジェル
「良いも悪いも仕方のない事だよ。出会いがあれば別れもあるよ」
「この瞬間は仲間として可愛いがって居たとしても、他の仲間を裏切る人間は、次の瞬間には敵だ。俺は長で在る以上、そこは妥協できないだろ」
「そうだけどさ、大丈夫?ギュしてあげる」ヴィーナス
「ありがとう、大丈夫だよ」
「そんな梳李だとわかっているから、安心してついて行けるのはありますが、梳李が傷付くのはやっぱり心配です」フェアリー
「泣き言を言うなら、ファミリーなんて作らないさ」
みんなでサポートしながら育ててきた、セペトは抜けた。俺達にも無駄に人を育てる余裕がある訳じゃない。この出来事を通して、他のメンバーの結束は固くなったが、理屈のわからない人間が出ていっただけだと、脳天気にはわらえない。人は変わるから、こういう事も繰り返していくのだろうけど…俺もまだまだ発展途上だな
第40話に続く




