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第37話 神殿歓談


慌てて姿が変わったエンジェルに乗って神殿にやってきた、ヴィーナスは鞍がカーディガンのようになって、羽織ってはいるが裸だ、エンジェルも成長した事で服が無くなって裸だ、フェアリーはそもそも生まれたてなので裸だ、(なんでやねん!)みんな美しく堂々としていて、美術館の彫刻を見るように、見惚れてしまうが、背徳感に押し潰されそうになる


族長に大至急ドレスを用意させ、3人にとりあえず服を着せた。やはりこの美しさはドレスが似合うけど、街でこの姿でいると、とんでもなく浮いてしまうな。普段着をオリビアに選んでもらって帰ったら着替えよう


「おーい!女神様ー!」


「なんじゃ騒いで、ぎゃはははは!面白い事になっておるのー!」


「ヴィーナスはユニコーンブッダに、エンジェルはアルティメットドラゴンに、フェアリーはナビゲーターと私とお前との、三者の絆で産まれたまったく異なる生命体だな。昨日お前が来た時に「いつかまた会えたら、もう一度女神とよんでくれますか?」って懇親の自信作をぶっ込んだのに「はいはい、仲間を女神に変えてドヤ顔されてもさ」ってスルー気味に流されたから…私はそれなら仲間になってやろうと決意したのだ!お前の名付けと重なって、フェアリーが産まれたようだな」


「そんなに突っ込んで欲しかったのかよ!昨日みんなで話をしている時に、フェアリーがタイミングタイミングって言ってたのはそういう事だったのか」


「お前もかなり成長しているからな、この星にない魔法も放ったしな、(ことわり)から外れて来たって事じゃ」


「ヴィーナスのブッダってのは神が仏になったって事か?」


「そうだな、この星の理ではないな」


「エンジェルは究極体になって、フェアリーはナビゲーターの力を持つ生命体になったと言うのか?」


「そうだな、全てイレギュラーじゃ」


「3人はどう?身体とか心とか問題ないの?」


「とても幸せな気分で目が覚めましたよ」ヴィーナス


「私もー!」エンジェル


「私もですよ。それに女神様も私を通して梳李と一緒にいられるようになりましたよ」フェアリー


「いつも私だけ除け者のような気がして寂しかったんだよ」ヘカテー


「イレギュラーを作り出したのは、あんたなんかい!」


「根本的にイレギュラーを作り出したのは梳李だよ。私はちよーっと乗っかっただけだ」ヘカテー


「なにがちょーとだ!仲間なら今から女神様でもヘカテー様でもない!ヘカテーだ!」


「おお!仲間っぽくていいな、いいじゃないか!梳李、仲間の証に1度なでなでしてくれんか?」


「どうした?なでなでって神の威厳はいらないんか」


「今度はフェアリーを」


「ん?なでなで」


「おおーー!!繋がっておるのー!」


「だから威厳はどうでもいいんかい!」


「そもそも、俺が認識してる神や仏は人なんだよな。世が乱れている時に現れた救世主と言うか…生き方や法を説く事で、民に幸せをもたらした人と思ってたんだけど」


「そうだねぇ…その認識で間違いではないな」


「梳李、例えばの話…魔物の名前も長い歴史の中で人が付けたもんだよ」


「そうだろうなあ」


「だからアルティメットドラゴンと言ったのも、ドラゴンの中で究極に強くなったエンジェルを、わかりやすく表現する為に言った種族名だし」


「ヴィーナスも同じでゴッドを超えたから、ブッダって仮に表現をした種族名なんだよ」


「どちらもこの星にある理には、存在しない種族だから、私が適当に付けただけだ。種族名に限らず世の中には、真実かどうかは、曖昧で良い事もたくさんある」


「もう少し噛み砕いたら、教皇や聖女も人に癒しを与えたり、傷を治癒する力があるから、神の使いのように言っているが、私は神託を下ろした事はない」


「そういう意味ではロドリゲス王国で、大賢者になった梳李は数100年後、神と言われているかもしれないよね」


「確かにそうかもしれないな」


「結局、宗教文化と言うのは人の考えや、知識の及ばない現象に、あとから理由を付けるために、作った物語が多いのだよ」


「人が成長して年月が経ち、形を変え朽ちていく。星もまた同じで、時間経過は異なるが成長して朽ちていく。イレギュラーもその過程であり、私自身も朽ちる身体がなく、思念のみの生命体として存在する事で、永遠を生きているとも言えるし、空想の生命体とも言える」


「梳李の事も大賢者とも言えれば、魔王とも勇者とも言えるだろう、神の使いとも言えれば、神とも言えるだろう」


「なるほどな、神様と言ったり、仏様と言ったり、救世主と言ったりするのと同じような事なんだな」


「そういう事なんだよ、そこの3人は梳李の従者である事に違いはないが、梳李を守護する上では、名前の通りに女神とも天使とも妖精とも言えるだろう。そういう呼び方も、所詮は文明の長い歴史の中で、そのように定義付けされた存在という事だ」


「なんとなくわかった、ゴルゴーンはそういうイレギュラーにつけ込んで来る事はないのか?」


「美しい心が宿る場所には隙はない。例えば梳李があみ出した、ドラゴンブレス改殲滅は、ネーミングセンスはさておき、インフェルノを放っても良かったのに、地形や森を爆発で変化させたくない、と思うやさしい気持ちが生み出した技だ。イレギュラーだが、星の為に最善を尽くした結果だから発動した」


「今後もたくさんあるだろうな、私も半分は従者になっているのだから、ヴィーナスは女神の慈愛と言うスキルで死者を蘇生出来るようになるかもしれないし、1人では無理な事でも、フェアリーと協力する事で、癒しについてはいままでに無い理を生み出すだろう」


「エンジェルも青竜だったのが白い個体になり、陽や月のあかりをまとえば、虹よりも多くの色に輝いていただろう。民衆がその姿をみれば神と言う者もいるだろうな。ブレスも炎だけではなく、魔法で表現する所の、全属性のあわさった究極のブレスを吐くようになった。その結果、虹竜と呼ぶ者も、神竜と呼ぶ者も出るだろう。500年経ち何回もの人の生命が入れ替わった時に、その時代で一番色濃く残った名が、エンジェルの種族名となるだろう」


「進化とか、神様とか、仏様とか、難解ではあるが、なんびとの考えも正解であり不正解だという事だ。今後ここにいる5人は常に共にあり、今はイレギュラーかもしれないが、人を助け、色んな社会に影響を与え、星の歴史に広く名を残した時、イレギュラーは理の中の歴史の英雄になるだろう」


「生命の営みから見た、星の求める愛の形も様々で、異性に対する愛もあれば、友情もある、慈しみもあれば、親愛もあるだろう。これからも梳李は、自分に向けられた色んな愛情に出会う事になるだろうし、梳李はそれを素直に受け止め、梳李らしい愛情を注ぐだろう。優しさや温もりという愛情も星からすれば必要な事なんだよ」


「ヘカテーはフェアリーの中に常に存在しているのか?」


「感覚共有はある。だけど話をしたり、はっきりとどちらかの人格を必要とする時は、切り替わると考えた方がいいね。神と言えども万能ではないんだよ」


「この度のイレギュラーも私の力によるものでは無くて、梳李がこれまでとってきた行動による物だ、差別や偏見を無くしたい、色んな人を救くいたい、時に命がけで、時に休む暇もなく、便利な道具も作った、色んな事に対して、妥協のない努力を重ねてきた結果が3人を進化させた。そもそもお前自身がイレギュラーなのだが、理から外れても星は喜んでいる。それにここにいる3人も、梳李の役に立ちたいと心から望のんで、何事にも努力する梳李を愛したからこそこうなったんだよ。ちなみに私も祝福という名の深い愛でずっと梳李のそばにいるからね、ぽっ!」


「それはいつものやつか?本気か?突然ぶっ込まれると対応がわからんだろ!」


「ふふふっ!どっちもだよ。だからなにも遠慮しないでいままで通りにすればいい」


それからそれぞれが能力を確認した、エンジェルは真っ白に輝くドラゴンになり、陽の光を浴びると数え切れない色に輝いた。ブレスも同じように輝き、透明の光線のように見えたり、虹色の息のようにも見えた。人型では指にブレスを乗せられるようになり、矢に纏わせて空に放つと花火のように咲いた。女神の慈愛はヴィーナスひとりでも金色の光を降らせて、植物にまで影響を与えた。フェアリーと繋がって発動すると何倍にも広範囲になり、植物に注がれた慈愛は枯れかけた花にも蕾をつけ、農作物には大きな実をつけた。もとのユニコーンの姿にも戻る事ができ、たてがみやしっぽと体の色は、光沢が増してとても美しくなった。人型で雷撃を放つ時は、この美しい姿からは想像もできない、角を額から出して、いままでよりも強い雷撃を放つようになった


えーっと、これから俺は…どう扱って、どう接すれば良いんだろう


色々と困った事になったけど、今日は城の見学がてら、初めてのお泊まりをして、明日はみんなで冒険者組合かな。そのうち慣れるでしょ



第38話に続く


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