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第34話 大繁盛じゃん!


「お世話になりました!」


「こちらこそ、たまたま大賢者様が来ていなければ、街が滅びたと思うとゾッとします」


「私の力だけではありません。昨日はキツい戦いでした。途中で何度も諦めそうになりました。もうこれ以上は進めないと、何度も立ち止まりそうになりました。そんな時にあの少年の姿が、デイビスの冒険者の姿が、団結する住民の姿が、温かく背中を押してくれたんです」


「いい街ですね」


「娘の事もよろしくお願いします。あの後、娘に呼び止められ、もう帰って来れないかもしれないと言っていました。あんなに幸せそうに話をする娘は初めて見ました」


「多分また会えますよ。それに私が世話になっている方ですから、よろしくがわかりません」


「はっはっはっは!大きいお方ですなあ」


「平均的ですよ」


「はっはっはっは!」


「お父様、朝から随分上機嫌ですね。では服の用意も出来ましたので、いってまいります」


「俺は先に雷風と外で待つよ。アイザックさん本当にお世話になりました、またお会いしましょう」


庭に出て雷風にまたがった


「雷風、一応聞いてもいいか?」


「どうしましたか、あらたまって」


「ユニコーンてオスしか居ないよな」


「何を言っているんですか、それは神話に出てくるユニコーンの話で、私はメスですよ」


「そうなの?」


「だってオスに女神の翼が生えたら変じゃないですか」


「そういう問題か?」


「そういう問題です。それに私も主に恋をしていますよ。他の3人には負けません!ポッ」


「ははは!そっか!色々ありがとう」


「お待たせしました」


「お父さんとちゃんと挨拶したかい?」


「ばっちりです!」


「んじゃ行くか!」


早朝にも関わらず、スコット家も街の人も通りに出て、空を見上げてくれている。雷風は気を利かせて、低い空をゆっくり蹴っている。ありがとう!みなさんありがとう!またお会いしましょう!心の中で感謝し手を振りながら、デイビスの街を後にした


「そういえば、領主と合わなかったな。王城の晩餐会であっているだろうけど…」


「入れ違いになりましたよ。領主はもう少し大きい隣の街に住んでいます。連絡を聞き馬車を走らせていましたが、先程上空を通過しました」


「アリアナの家の人とは仲良くなれたから、領主はどうでもいいな。下手に挨拶に降りて、捕まると厄介だし」


「ふふふっ!」


「多分…セントラルには昼頃到着する。早速で悪いが今日からミーティアの店を頼めるか?」


「はい!そのつもりで服も揃えてあります」


「ほんとアリアナって気が利いてるよね。だけど今朝のベッドみたいに、俺の深層心理に気を回すのは辞めてね」


「ふふふっ!さあどうでしょう。ただ私は男性と交わった事がないので、仲間に教わった知識があるだけなんですよ、ほんとのところはどうすれば喜んで貰えるのかは知りません。いつでも梳李の好みに仕上げてくださいね」


「そうなんだな、ミーティアなんて12歳でマールを産んでるんだから、それを思うと極端だな」


「エルフ族では、多いわけではないけど、そんなに珍しい事では無いらしいですよ。それに人族でも政略結婚するような家柄の娘だと、ちょくちょくありますよ」


「なるほどなー、俺が住んでた世界では、12歳は子供だからさ。少し不思議」


「そのうち梳李の子供の頃の話も聞かせてくださいね」


「ああいいよ。大して面白い話もないけどな」


セントラルにはお昼前に到着した。案の定、ミーティア弓道専門店には、長蛇の列ができていた。人族には大賢者勲章の話が入っていて、空を駆けるユニコーンと共に話題になっていた


「大賢者様とユニコーン様がおもどりになったぞー!」


「抱かれている女性は誰?私も1度で良いから、あんな風にされてみたい」


「みなさんこんにちは!通行の邪魔にならないように、行儀よく整列をお願いします。また来ますので、少しだけお待ちください」


雷風を自室に連れて行き、アリアナと2人で急いで店に入った。店内も人でごった返している。内装はさすがルイーダとミーティアの合作だ。最高級弓の装飾にも価格にも引けを取らない


「みなさまいらっしゃいませ!ご利用ありがとうございます!」


「ミーティア!お疲れ様!」


「梳李!おかえりー!早かったね」


「こうなってると思って急いだんだよ。あとメイド長だったアリアナを補佐に付けるから、協力して店を盛り立ててくれ!算術も出来るし、弓の腕も抜群だ!」


「助かりますー!アリアナさん!よろしくお願いします」


「ミーティア様、こちらこそよろしくお願いします」


「2人とも手を出せ!握手だ、もう2人は親友だ。他人行儀な呼び方もやり取りもなしだ。お互いが店を思う事をぶつけあうと良い」


「ふふふっ!了解しました」


「梳李ー!ちょっとだけ、あー補充されて行くー!」


「ミーティア、それわかりますー!」


「梳李、あと入店希望者を2人、奥に待たせているんだけど、お願いしていい?」


「俺も行列の対応があるんだよな…アリアナ!アリアナの跡を取るメイド長は誰だ?」


「オリビアしか居ないと思います」


「わかった!とりあえず2人を預ける。やっとくから2人は店に集中して」


奥の2人が待つもとに行く、小さい双子が可愛く並んでいる。絵になるなぁ


「こんにちは、入店希望のお2人ですか?」


「そうです。あの私たちで大丈夫でしょうか?」


「それをゆっくり話をして、判断したいんだけど、行列ができていて、俺も戻らなければならないんだよ。時間はある?夕方になるかもしれないけど」


「あります!待ちます!」


「ありがとうね。お名前を聞いていいですか?」


「姉のアンです!」


「妹のサラです!」


「オリビアさーん!オリビアさーん!」


「はい!梳李様おかえりなさいませ」


「ご苦労様です。この2人はミーティア弓道専門店の入店希望者なのだけど、行列ができていて、すぐに話を聞いてあげられないんだよ。オリビアさんの全力の接待で、この2人をもてなしてあげて貰えませんか?お茶でも、昼ごはんでも、お茶菓子でも、国王陛下が遊びに来たくらいの気持ちで」


「わかりました!おまかせください」


「あとそれでも退屈しそうだったら、これを渡しておきますから、2人と外で遊んで来てください」


「面接に来た者にも、そこまでされるのですね。梳李様らしいですね」


「アリアナをミーティア弓道専門店にもらいました。跡取りはオリビアさんしか居ないと言ってました。俺は彼女を信頼しています。よろしくお願いします」


「承知いたしました」


それから表に出た、列は歓声でお迎えしてくれた


「みなさんすみません!お待たせしました」


握手をしたり、質問に答えたり、冒険者が大半なので特に、武器や戦闘の質問が多かった。


弓道専門店では矢が大ヒットしていて、メンテナンス用の油と布もセットでどんどん売れていている


それともうひとつ目玉を作りたく、オープン直前に開発販売したボーガン、この世界にはボーガンが無かったので、少し改良を加え、マガジン式で自動装填できる事と、発射後筒を通す事で、弾道の安定性を高めたミーティアと言う武器も販売している。これはミーティアONEからミーティアTHREEまであり筒の長さと矢の長さが違う、矢羽根はなく鉄製の矢を飛ばすのだが、強力なゴムを使用しているが、ノズルを回す事で非力な女性にも簡単に扱え、一番小さく軽いONEが貴族の護身用に売れている


そんな貴族の奥様や側室の人も、行儀よく列に並んでいた。大賢者勲章の話題と共に、エドワーズ家を検挙した話が乗っかり、貴族の傲慢を許さない人と認識されているようだ


あまりに長い行列に、体調が悪くなる人が出ないか心配になり、委員長に大量の紙コップを作って貰い、メイドからエミリアを借りて、列に並ぶ人に振舞った。茶葉はエミリアが大量に持っていて、無くなったら俺が魔法で水を注ぐ、手から出すのはなんとなくアレなので、綺麗なガラス棒を触媒にして美しく注いだ。飲む人はなんとなくプレミアらしい


少し気分が悪くなった人には、ヒールをかけ復活してもらった。ところどころで水を注ぐついでに、水の玉を作ってジャグリングしたら、思いのほかバカウケだった


夕方になりやっと列も落ち着いて来たので、本日ここまでの看板を立てて、閉店時間を迎えた


「ミーティアもアリアナもご飯を食べる暇もなかったな、大丈夫か?」


「問題ないよ。それに色んなお客さんと触れ合うのは楽しいね」


「アリアナも平気か?」


「平気です。まさかこんなになってるとは思いませんでしたが…」


「ははは!大変な事になってるっていったじゃないか」


「いや想像の斜め上をいきました」


「2人ともお疲れ様!」


右と左で頭をぽんぽんしたあと、同時に抱きしめた


「あ、悪い悪い、ついつい」


「もう1回して」


「もう1度してください」


今度は左右入れ替わっていたけど、なんか?違うんか?


「そういえば、双子ちゃんをまだ待たせてるんだよ!急いで話をしなきゃ!」


「えー!!!」


相変わらずの梳李ファミリーだった



第35話に続く


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