第32話 マシューの処遇とデイビスの街
アスコットには肉を渡した、ビッグバードとオークキングとミノタウロスと3種類、鶏肉、豚肉、牛肉って所かな
「今日は俺もここで一緒に寝て、明日の朝アリアナと雷風とセントラルに向かうよ。アリアナも疲れただろ、一緒に食べて一緒に休め」
「ガブリエル!アリアナはメイド長から外して、ミーティアの補佐にしようと思うけど、かまわないか?」
「わかりました。メイドを増員しておきます」
「みんな肉を焼きながら、食べながらで良いから聞いてくれ」
「エドワーズ軍は無事に追い返して、王都に居たエドワーズは逮捕した。それでウィリアムとしては、アンダーソン家の事は任せるという事だ」
「先程もお話したように、梳李様の領にして頂けば、よろしいかと」
「俺の考えでは人材は多いに越した事はない。サメハダ家の領にしても、人材も1極集中して拡がりを見せないし、王国としてはメリットがない。ウィリアムの任せると言うのは、俺に領地運営して欲しいと言う意味では無く、最善の道を作ってくれと言う意味だ」
「あとエドワーズ子爵家は、領地を強くして王家に、対抗しようという動きがあったらしいから、取り壊しになるだろう。そういう意味では攻めて来られただけのアンダーソン家も、怪我の功名で王国に貢献したと言える」
「そこでだ…マシューは領地運営からは引退するが、男爵位はそのまま残す、さすがに手当ては貰えなくなるだろうから、生活の面倒はガブリエルが見るという事でいいか?」
「はい私はどんな形であれ、父上が影響力を持たなくなり、生活を見る必要があるのなら、喜んで引き取らせて頂きます」
「ガブリエル、ありがとう」
「まあ引き取ると言うか、商会の寮を出てガブリエルが実家に戻れば良いじゃないか」
「屋敷は王国から与えられた物ですよ」
「屋敷はサメハダ伯爵家の屋敷として使えば、一緒に住む分には問題ないよ」
「ローガンともう1人の弟は領内に住み、アンダーソン領の運営を学びながら、民の生活を知り成長して欲しい」
「ありがとうございます!」
「現アンダーソン領の領主をしばらくの間、オースティン・ガルシアに任せて、王国預かりとする」
「アンダーソン領とエドワーズ領を、合併させた領地を王子が治める王国の直轄領とし、人格や領地経営が安定したら、ローガンが引き継げるように手配する。あくまで条件を満たせばな」
「心得ました!必ずや!」
「簡単じゃないぞ、アンダーソン家としては僅かに残された希望でしかない。俺がしてやれるのはこれが限界だ」
「梳李様、ありがとうございます。アンダーソン家が無くなろうとも、今日頂いた温情は、代々忘れないように致します」
「マシュー、そんな大袈裟な事でもないよ」
「村では、ローガンも頑張っていたよ」
「長男が病弱だった為、あまやかしてしまって、結局は大切な子供達全員を、傷つけてしまいました」
「ガブリエル、アスコット、ローガン、出来の悪い父を許しておくれ」
マシューは深々と子供達に頭を下げた
「まあなんだ、俺は平民だからよくわからんが、家柄や財産の為にいがみ合うよりも、血を分けた家族なんだから、仲良くすれば良いじゃないか」
「梳李!ありがとう」
「なんだよ、アスコットは腹が落ち着くと、くっついて来るのな」
「だってメイド長さんを抱きかかえて、楽しそうに帰ってきたから。悔しかったんだもん」
「その割には第一声はお肉だったと思うけど、それにメイド長さんじゃなくて、アリアナな!アスコットもまだまだだなあ」
「アリアナさん!そんな大きい物で梳李の腕を挟むのは反則です!」
「アスコット、わかったから父親と兄貴と弟が居るのを忘れるなよ」
「ほっほっほ!わしらの事はお気になさらず。モテるのも大賢者様の資質ですよ」
「ローガンも今日集まってくれた300名の兵士の、名前を覚える所から始める事だ。特別手当は少なくても、自分のお金でちゃんとするんだぞ」
「はい!」
「なんと!ローガンが特別手当ですか?」
「私兵団を解散させる時に、挨拶で話をしていたよ」
「そうか…子供だと思っていても、父親の想像など遥かに超えて、みんな成長するんだな。安心して引退するよ」
そう言ったマシューの背中は、子供の頃から跡取りとして背負わされてきた、色んな物をやっと降ろして一息をついたような。そんな色を見せていた。ガブリエルを辺境に送ったのも、意外と優しさからだったのかもしれないな
「父上!お疲れ様でした!」
3人の子供は、父親に敬意を込めて頭を下げていた
「雷風ー!寝るぞー!」
雷風は野営で添い寝するのが好きだからな。で反対側にアリアナで上にアスコットですか…羨ましい←作者
「お前達はマシューとローガンに少し付き合ってもらって、領地によるのもいいし、時間がなければ観光宿場街にする場所が、どの辺が適当か、下見だけは頼む」
「お任せください!」
「では、先に帰っている」
アリアナは当たり前のように前に乗り俺の腕に背中を預けた。なんとなく俺もアリアナを気に入ってるから良いけどな
「アリアナが慣れて来たら教えてくれ、徐々に速度を上げていく」
「ここに抱かれてる時は大丈夫ですよ」
「それなら雷風!全速前進!空でも野原でも自由でいいぞ!」
セントラルまではまだ1000km以上ある。流石に今日は辿り着けないか…だがアリアナと2人で野営するのは様々自信がない。どうしたものか
「アリアナ、さすがに今日中には到着しないし、野営するよりも街がみたいな。街道から外れても良いから、適当な所はないか?」
「それなら北に150kmくらいそれますが、セントラルから550kmくらいの場所に、私が生まれ育った街デイビスがありますよ」
「雷風、今日は街でも良いか?」
「梳李様、雷風の事なら心配いりません。宿など取らなくても、私の実家があります。梳李様が来ていただけるなら、家族もみんな喜びます」
「それなら今日はお言葉に甘えるか。アリアナが道案内してくれたら、雷風は言葉を認識するから頼むよ」
「委員長、金で作ったメダルとか作れない?俺の記念品として、ご家族とか街の人も、関わった人に手ぶらでは、申し訳ないでしょ」
「なにがいいですかねえ」
「そこそこのレア感があれば、なんでもいいんじゃない?デザインするなら女神が良いかな」
「それなら金の翼と雷風の角をデザインしたブローチなどどうでしょう?ブローチなら男性も帽子や襟に付けられます」
「良いねえ。とりあえず1000個くらい在庫してくれると助かります」
「かしこまりました支配者様」
「委員長!絶対わざとやってるよね」
「ふふっ!」
ダンジョンの街デイビス
「間もなく到着します。街を見学されますか?」
「したいけど、騒ぎにならない?」
「王都の出来事は、昨日のうちに届いてますので、多少はあるかもしれませんが、デイビスの街は近くにダンジョンがあり、冒険者もたくさんいるので、大きな騒ぎにはならないと思いますよ」
「それなら街も見たいかな。後ろに乗るか?この姿では恥ずかしいだろ?」
「梳李様がよろしければ、私は恥ずかしくありませんし、このままの方が嬉しいですよ」
「ならいいか。あとアリアナも特別な仲間なんだから、梳李でいいし、敬語も必要ないよ」
「じゃあ梳李!キスして!」
「ドキッとするからやめなさい!」
「ダメなの?」
「えーーっと………アリアナのご家族は何人居るの?」
「敷地内の家には両親と姉妹で4人、隣の家に父の弟の家族が5人、あと共通の使用人用の家に5人ですね。合計14人です」
「アリアナの家はデイビスの領主なの?」
「いえいえ、とんでもない。領主様から見たら遠い親戚ですかね。一応街の騎士団か、役人に代々就いていますが」
「へぇーいい所のお嬢様だったんだな」
「小さな街の話です。私は梳李のように広い世界を自由に生きて見たいのです」
「一通り街を散歩したらお邪魔しようか。少しざわついて来たし、遅くなると失礼だし、家名はなんていうんだ?」
「スコット家です」
「はは!それなら俺がアスコットを呼ぶ時、自分と思うときも多かったんじゃ無いのか?」
「はい、いつも返事しそうになってました」
街は大きくはないが、セントラルや王都に比べると、古い建物が多く、城壁の代わりに丸太が立ててあって、初めて来た俺でも、懐かしいと感じるようなそんな街だった
「子供が追いかけて来たな。雷風少し休憩だ」
「ねぇねぇ!もしかして大賢者様ですか?」
「一応そういう事になってるよ」
「すごーい!握手っていうのをしてもらって良いですか?」
握手をしていると、列を寄けながら割り込んでくる、ガキ大将がいた
「こらこら、順番は守らないとダメだぞ。それに君は身体も大きい、怖がって誰も文句を言わないからと、好きにしていると、もっと強いやつが現れて、泣く事になるぞ」
「俺は魔物だって倒せるんだ!」
「なら、みんなを守ってやれ!」
田舎街にとても似合うキャラの子供だった。一通り握手をして、子供に記念品はまだ早いので、少し話をしてアリアナの家に向かった
アリアナの家は立派な門構えで、衛兵も街から派遣されているのだろうか?門番として立っていた。なんか?娘さんを僕にください!みたいな時に、家の前に立ったような緊張感があるな
アリアナ…笑いすぎだぞ!
第33話に続く




