第3話 開拓って大変だな
「同時発動は、やっと50ヶ所くらいかぁ」
「だいぶ成長しましたね!」
「委員長のおかげだね。ところで、この前さぁ…宿題忘れた時のやり取りを知ってたじゃん…」
「はい!私は記憶を見てますから…」
「え!それは俺が妄想した事とか、過去にみたあれやこれやな映像の記憶も全部?」
「もちろん!」
「やめてくれー!」頭を抱える
「そういう趣味…なのですね…」耳元で
「いやぁぁぁぁー!」
「ところで梳李様は、今後どのようになさるつもりですか?」
「そうだなぁ…魔物をコンプリートしたり、未到達の地にしかないような素材を集めたり…セントラルや種族別の国も見てみたいな!だけど、まずはここをめちゃくちゃにしちゃったから…開拓しなきゃいけないなって思ってるよ」
「良きお考えですね!それならば、これだけ広い開拓地です。魔物を進化させて知能を持たせ、住人ごと創り出せばどうでしょうか」
「そんな事できるの?」
「正確には、進化させると言うよりも、魔石を核融合させて、変異させた上で…ヘカテー様の代理人権限を行使すれば、新たな種族が誕生します。ここをその種族の国にしては良いのではないでしょうか」
「すげーな!神の領域じゃん!」
「はい!まさに神の領域です…それに魔物がこれだけ騒いでいると、どこでどんなイレギュラーが発生するか?わかりません。もしそんな事になると今の人類では脆弱過ぎます。ヘカテー様が梳李様をここに転生させた事や、代理人権限まで与えられた事を考えますと…備えが必要なのかもしれません」
「そうだな…何にしても、備えは重要だな。俺にある知識を総結集して、凄い街を設計してみるよ!農地、工業地、商業地、住宅地…最低限の環境だけを整えて、あとは自主性に任せるようにしたら、開発地に新たな文化や文明ができるかもしれないし…」
「そうですね!良きお考えだと思います」
「深淵の大森林の外はどうなってるの?」
「東西は南に向かう程狭くなる、すり鉢状に断崖絶壁の岩に挟まれています。南に1000kmくらい行けば海に出ます。北は1500km進めば中央大陸の大草原にでます。そこからさらに北上すればセントラルがあります」
「結構小さい星なんだね」
「文明のある地は小さいですが、星の大半はまだ未開拓なのです」
「逆に言うと…委員長も知らない魔物や文明があるかもしれないってこと?」
「魔物、素材、植物、野獣、魚、武器、防具、魔道具、は管理者の知識の泉に図鑑として完全に掌握されています」
「俺が持つ制作スキルとかで新しい魔法やスキルを作ったらどうなるの?」
「それは、あくまでも融合する事で、他の魔法やスキルに変化するだけで、この星にない原理を生み出すわけではないのです」
「なるほどね」
「あと文明に関しては、知らない事は無いはずなのですが…イレギュラーは存在します。100%とは言えませんね」
「魔物が暴走して驚異になる可能性と言ったのは、そういう事か…ま!何にしても開拓!開拓!水源を確保したいけど…川はあるかい?」
「西側は50km東側は100km行けばあります」
「その2本の川を、開拓地を経由して繋ぐのは構わない?」
「問題ありませんね」
「それにしても、開拓予定地は広いなぁ…コレクトもかなりの数を一度に発動できるようになったけど…まだまだアイテムの山じゃん」
「早く外の世界に出て、図鑑を埋めていきたいのはわかりますが…しっかり準備した方が近道ですよ!」
「それもそうだ」
そんな風にのんきにアイテムの回収に勤しんでいる頃、セントラルでは緊急会合が開催された。各国より専任者3名が選抜され対策本部が設置されたのだ
「昨日の隕石について、今後どのように対応を進めていくか…各国で協議したいと思う!」
「方角からして間違いなく、大森林の中なのですから、こちらに被害も出ていませんし、変化があった訳でもないので、様子をみてはいかがかな?」
「落下地点に調査団を派遣したいのは、誰もが思う事でしょうが、我ら自然の民エルフですら、深淵の大森林には立ち入る事すら叶いませぬぞ」
「魔の国のワイバーン飛行兵団はどうですかな?」
「ワイバーンは何体もいる訳ではないし、そもそも危機察知能力にたけた生き物です。大森林の上空で、魔物に強い覇気をあてられれば、隊が崩壊し落下する可能性が高い!」
「隕石落下による環境の変化で、大森林から北へ向けて魔物が移動し始めたら、やっかいだぞ!」
「何事もなければ良いが…対応を誤れば、我らの存続の危機であるぞ!」
様々な憶測が飛びかい、混乱の様相を呈していた
「とにかく!大森林に足を踏み入れるか否かは別にして、各国より調査隊は派遣した方が良いのではないか?」
「いずれにしても、魔物の動きは警戒する必要がある!」
「事態は急を要する!少数の選抜隊にするしかないが、情報収集は必要であるぞ!」
そうして対策本部は先発隊500名、後発隊500名による調査隊を編成し、10日後に、先発隊から斥候として派遣する事を決定した
「1日かかったけど、何とか拾い集めたな。無制限のアイテムボックス…感謝!感謝!」
「梳李様!コレクトも熟練度MAXになりましたよ」
「めちゃくちゃ発動させたもんな…核融合は、どれくらいできそう?」
「そうですね…撃破した魔物が、様々な上位種を含んで、約15000体…知能や強さを考えると、8000人くらいでしょうか」
「仲良く暮らしてくれるのが1番だな!あとは…中でも特に強い人、器用な人、力持ちな人、個性が出てくでしょ」
「そうだね、備えにするなら、ある程度集団でも戦えるようにして…世界を救えるような種族になるといいですね」
「他の国と比べて、あまり強くてもバランスが悪いし…救うという定義も、強さだけが必要な訳じゃないから…他の5種族と比べて、違和感のない程度の強さでいいでしょ」
「それであれば開拓地は守りを固める必要がありますね」
「なるほど…開拓地の外の事は俺にしか出来ないって事か…水路や城壁、諸々の通路や橋…まだまだ冒険には行けないけど、どんな文明が生まれてどんな国になるかは楽しみだもんな。何にしても、女神ヘカテー崇拝の国ヘカテー族の国を作ろう」
「それはヘカテー様もお喜びになりますね」
「早速、水路や城壁を作る魔法を教えてくれよ!地面の形を変えて、固めて、30km以上ある外周に城壁を作れるような」
「土魔法だけど、変形・改良・建造・撤去…全部イメージで使い分けてね。魔法名はディフォメイション!」
「まずはこの凹ませた大地を、堀を除いた部分…開拓地を底上げしてみよう!」
「イメージ…イメージ………イメージ!ディフォメイション!」
少しだけ盛り上がった。連続で行使した…それはもう何100回、何1000回と…
「なんかくらくらしてきた」
「魔力残量が少なくなりましたね。空にして回復して、また使い果たして…それを繰り返せば魔力総量は限界突破しますよ!」
「意外と人使い荒いよね…すやー」
「梳李様やこの星の民が平和に暮らすためですよ」
一通り方向性も見えた頃予期せぬ来訪者が現れるのである
第4話に続く