第29話 王都ロドリゲス
晩餐会も終わり、明日は王都を観光する予定になっている。王家が離れてくれないので、ガブリエルとアスコットも呼んで、庭園で歓談していた
「ウィリアム!雷風に乗ってみるかい?高い所は平気か?」
「問題ありませんが、良いのですか?」
「良いに決まっている。雷風!空を行こうか!」
「了解です!主!」
雷風は王都の空を駆けた。夜もふけていたが、王都の街並みは、建物から溢れる光で満たされていて、人もまだまだ活動していた
「王都の夜景をこうして見ると美しいな」
「ほっほっほっ!梳李!このユニコーンは空も駆けるのですな!」
「王都に来る途中で女神がプレゼントしてくれたんだよ。空はいいよね、気分爽快だ」
「いいですな、それにこうして空から王都を眺めていると、自分がちっぽけな人間だと思い知らされます」
「それでいいじゃないか、おごることなく謙虚である事はいい事でしょ」
庭園に戻るとロドリゲス家の4人とサメハダ家の2人が順番を待っていた
「あのなあ、遊園地でアトラクションを待つ列じゃないんだから、って言ってもわかるわけがないか、悪い前世の話」
「アスコット!後は頼む!俺は空を眺めながら、この綺麗な庭で、ウィリアムとのんびり酒でも酌み交わすよ。雷風の操作は、言葉で伝えたら大丈夫だから」
叙爵式、贈呈式、晩餐会、長い1日だった。大賢者か…過去にも転生者がいたのだろうな
雷風が一通りみんなを乗せて帰ってきた頃、他の王子や王女も集まって来て、終いには王妃以下たくさんの側室まで現れた
「ウィリアムは旺盛なんだね。子供は何人居るの?」
「15人ですよ」
「国が痩せたのはそれが原因じゃないか」
「はっはっはっ!そんなわけあるかい!」
「上手い!笑いもいける方なんだな」
たわいもない話をしながら、サメハダ商会の人手が足りなくなった時、王家や王城勤務の文官から事務方に応援を貰う約束や、サメハダ領で計画している、観光宿場街の警備をお願いするようになる事など話していた
王家は王家で、側室の縁戚関係者も入れると、人はあぶれているらしく、喜んで派遣してくれる事になった
それと街道の整備は1日でも早く完成させたい為に、約1500kmの道のりを3分割で同時進行する事になったらしいが、セントラルからサメハダ領までの500kmは第1王女が担当するから、工事をサメハダ商会に依頼したいと話があった
作業員に獣人族を使う事と、費用は王国が出す事を条件に引き受けた。宿場街は2箇所、ひとつは計画中の観光宿場街と、セントラルまでの中間地点にもうひとつ、街道には10km毎に馬車の停車スペースを作るらしい
逆にサメハダ領に作る予定の観光宿場街も急ぐ必要がある為、領に応援にくる第4王女と第5王子が早く着任する事と、街の建設の管理も必要になる為に、3人づつの増援を要請した
「俺はさあ、今後は獣人の国や魔人の国、ドワーフやエルフとも、ここの王族と同じような、付き合いがしたいと思っているんだけど問題ない?」
「なんの問題もありませんよ。陰ながら応援します、協力も惜しみません」
「そうか!良かった。あとさウィリアムの部屋に、小型の転移口を設置していいかな、転移門の小型で手紙のやり取りが出来る」
「おぉ!それは便利ですな」
「セントラルと王都は遠いから、迅速にやり取りできたら、協力要請もしやすいしさ」
「ところで梳李、明日の王都は大変だと思いますよ。叙爵式の前日に、大賢者勲章の事は国民に周知してあります。わしらも出ますが、梳李を見ようと楽しみにしています」
「ウィリアムは良く街に出るの?」
「はい、王城に居てもなにもわかりませんから、屋台の経営者から、貴族の平民への振る舞いまで、街の観察は良くしていますよ」
「ウィリアムらしい素敵な話だね」
気がつくと庭園には雷風待ちの人が30人ほどいた。雷風が心配になり念話を飛ばしてみた
「雷風!話せるか?」
「はい!主!」
「スキル念話を覚えました」
「やってみると出来るもんだな、疲れてないか?」
「心配ありがとうございます。間もなく終了します。それにこういうのもやっと慣れてきました」
王女や王妃、側室と女性陣は2回目を所望したが、深夜になりそうだったので、丁重にお断りした。待ち合わせの場所と時間を聞いて、俺と雷風は王城を離れた
「雷風が落ち着けそうな場所で寝ようか。どこでも雷風に任せるよ」
王都は街道が東側にあり東の通用門がメインになっていて、東側広場、北側広場、西に王城前広場、南側広場と中央広場を合わせた5つの広場を、直線と円で結ぶ様に、メイン通りが繋がっていて美しい街並みである
待ち合わせ場所は中央広場だったのだが、既に人で溢れている。ウィリアムのやつ、謀ったな!慌てても仕方が無いので、大賢者っぽく振る舞うか?ぽくがわからないけど
ステージの様な場所に空からゆっくりと雷風と降りていった
歓声がこだまする。大歓迎だな(汗)
今日は王都で無駄使いして、景気回復の役に立とうとしていたのだが、それどころではないな、それなら撒くか…聴衆に配る為に3万ゴールドの金券を慌てて作った。聴衆は通りにも溢れていて5000人は居るだろうか。ステージは公園から階段で登ってきて、一方通行になっていて、終わった人はそのまま広場から出て行くように作ってある。おそらく昨日のうちに、なるべく多くの国民と俺を触れ合わせる為に、用意したのだろう
ウィリアムが到着した。ウィリアムを先頭に衛兵と王妃、子供らと側室も全員引き連れている。最後尾にガブリエルとアスコットの姿もあった
「皆の者!良くきけ!この方が梳李大賢者様である!今日は少しでも皆と触れる機会をと、こうして来てくださった!数秒の触れ合いになるが、順番にこちらに上がってください」
目で合図するウィリアム…食えないジジイだ。
「みなさんこんにちは!順番が来たらみなさんは、右手を開いて来てください。私の故郷の風習で友情を示す、握手という儀式を、みなさん全員と行います。その時に記念に3万ゴールドの金券を渡します。使用期限は1週間、王都であればどのお店でも使えます。そして金券をもらった商店は、有効期限が終わった後に、王城の受付窓口に、金券を持ってくれば換金いたします。3万ゴールドは1枚でなく、冊子にして10ゴールドから1000ゴールドまで、小分けにしてあります、お釣りは渡せないので工夫してお使いください、使い回しをさける為に、切り離しても使えなくまりますので、冊子のまま買い物をしてください。お店は金券を受け取る時に、必ず割印をしてから切り離してください。わずかばかりではありますが、普段なら我慢していたような事に、ほんの少しの贅沢を味わうように、遠慮なくお使いください!わかりましたかー!」
「おぉーーーーー!」
地響きを立てて会場がどよめく
「それでは階段の1番近い人からどうぞ」
アイドルの握手会も真っ青の大盛況だった。ウィリアムは金券を配った。説明する暇がなかったので、時折不安な顔もしているが、この程度の仕返しはしないとな
アレクサンドは機転を効かせて、2回並べないように衛兵を配置した。それでも最終的に8000人が参加し、握手会と金券の配布は夜10時頃まで行われた。
雷風も子供達には大人気で、撫でられる事を許してあげていた。しまいには雷風に触れると、ご利益があると噂になり、子供達が終わった後はお年寄りに囲まれていた
長い1日を終え王城に戻り、ウィリアムに金券の引き換え用のゴールドを渡すと安堵していた。王族も王城関係者も思い出の品物が欲しいと言い出した為、俺の作成スキルを駆使して、金の髪飾り、ブローチ、ベルトのバックル、カフス等を作った。ガブリエルとアスコットも配布に追われ、結局作業は深夜に及んだ
「お疲れ様ー!」
「大賢者様も大変ですね」
「まあ、好むにしろ、好まざるにしろ、期待には応えないとさ。こういうの苦手だけど、喜んで貰える事は嬉しいしな」
そんな話をしていると、王家に伝わる特別なお酒を持って、ウィリアムが入ってきた
「梳李、今日はわしの計画に、乗ってくれて、ほんとにありがとう。お疲れ様でした」
処世術はさすがに国王というべきか。続けてある事じゃないし、盛り上がったから良し!
王城に泊まり、次の日は早めに出発した。見送りは王家と王城職員、衛兵隊も全員総出で花道を作ってくれていた。王城広場を抜けると通用門までの沿道を、街の人が埋めつくしていて、誰もがお別れの挨拶や、再会を願う声を掛けてくれた。俺も雷風とゆっくりと歩み、一生懸命に手を振り頭を下げた、新しくできた、たくさんの友人へ向かって
「ありがとう!ありがとう!」
第30話に続く




