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第23話 新商品開発


引越しも落ち着き、商会の店舗はオープンして、ミーティアの店のオープンを残すだけとなった。借金の件は、アスコットの騎士団時代の仲間から、俺たちの戦闘力と共に、保護されているという噂を流しておいたから、ここに来る事はないだろう。騎士団総帥が戻ったら、厳しく取り締まる様にお願いしよう


アスコットはマールの育成係を買って出て、冒険者登録からダンジョン低層探索、一般教養や歴史、算術などの勉強会もしてくれている。大人になった時に、マールが希望すれば、独立できるように面倒を見てくれている。マールの父親は弓の名手だったらしく、マール自身もダンジョンでは、弓使いと荷物持ちを任されているが、泣き言は言わずに頑張っているようだ


ガブリエルは街中の工房や屋台街を回って新商品の開発や新規取引先の開拓を頑張っている。数日しか経っていないが、ヘカテー産の農産物も畜産物も評判が良いらしく、卸売業務は軌道に乗ったと言っても過言ではない。それに伴って、本拠地の使用人をメイド5人と、執事と料理人も雇ったようだ、メイドは交代制で店の店員も兼任し、執事は倉庫の在庫管理も任せる事で、効率よく人件費を使っている様だ。肝心の情報収集部隊については、隠密スキル持ちが少なかった為に、現在3名しかおらず、情報収集に専念している。結局、ボディガードはバルが務めている


俺はミーティアの店を弓矢の専門店にしようとヘカテー王国に来ていた


「委員長、ストレージにある魔石でヘカテー族の狩猟部隊を200名、作れないか?」


「どれくらい強くしますか?」


「現住民とあまり差があっても困るが、森で狩りをするから死なない程度には強くしたい」


「それなら身体を強化して性格は温厚な部隊を作れば良いですね」


「そんな細かいリクエストも通るのか?」


「梳李様とヘカテー様の絆が深くなる程、可能になりますよ。ただし、あくまで平均的な話で、個人差はありますよ」


「わかった!それなら犠牲を伴うような魔物には、立ち向かわないように、逃げ足を付けて欲しい」


「わかりました。200名の強くて無理をしない温厚な、狩猟部隊を増員します」


「シモンズ!シモンズはいるか?」


「国王陛下!こちらに!」


「狩猟部隊を追加したから、表に出して狩猟や採取をさせて欲しい。あと、矢の専門の工房をひとつ作る事になると思うから準備を頼む」


「お任せください」


「委員長、俺達も久しぶりに森に行くぞ」


「お好きなように」


「ところでさ、地球にあったカーボンの様な素材を作りたいんだよ。矢に加工する」


「どのような物が必要なのですか?」


「軽くて、燃やしても燃えつきない糸と、水を固めるられるような液体かな」


「それなら、森にいるビッグスパイダーの糸とトレントの樹液で可能ですよ。梳李様はどちらもお持ちですよ」


もう一度シモンズを呼び、高温の火が起こせる工房に行った。糸を燃やして炭化させたあと、型になるトレント材に編み込むように巻き付けさせた。仕上げにトレント樹液を混ぜた水に付ける。乾かせばカチカチに固まり変形せずに軽い。地球のカーボンよりも軽量でとても良い矢ができそうだ


素材集めも、ビッグスパイダーと言っても手のひらサイズのクモで危険はないらしい。トレントも狩猟部隊なら問題ないだろう


「矢羽根はなんの羽が良いかな」


「ウィンドバードが良いですね。数もたくさんいますし、羽には風の魔力があり、弾道も安定しますし速い矢速を生みます」


「矢にはもってこいだね」


「シモンズ!最後にこの羽を付けたら完成だ」


「今ストレージにある材料は全部渡すから専用の工房をひとつ作って欲しい」


「かしこまりました。セントラル向けでよろしいですね」


「それで頼む。あと食料など困ってるものはないな?」


「はい、資源も食料も潤沢にあります」


「委員長、いつも知恵をくれてありがとう。最近出番がなかったから…ごめんね」


「いえ、梳李様を見ているだけで楽しいから、気にしなくて良いですよ」


「美味しい物をリクエストする時とか、勝手に出てきて良いからね」


その後ヘカテー様にお供えをして、矢の試作品をもって転移門をくぐった


「ミーティア!少し良いか?」


「はい梳李様!どうされましたか?」


「梳李でいいよ。ミーティアのが年上だし」


「私は24ですよ。ガブリエル様の2つ下で、アスコット様のひとつ上です」


「アスコットも年上だったのか…」


「梳李はいくつなのですか?」


「転生した時の設定上は20歳だよ」


「その前は何年生きていたのですか?」


「30年」


「それなら中身は年上ですね。くすくすっ」


「そんな話じゃなかった。これを見てくれないか?」


「これは先を付けていない矢ですね」


「どう思う?」


「軽くて固い、それに羽には風の魔力もありますね。こんな矢があれば、革命が起こりますよ」


「ミーティアの店を、弓矢の専門店にして、弓にミーティアしか出来ない装飾をしたり、矢の1本1本に銘を付けて、サメハダ商会のミーティア弓矢専門店として、革命を起こさないか?」


「いいのですか?」


「ミーティアにしかできないよ。矢の先も、鉄からミスリルまで幅広くラインナップして、弓も色んなグレードを取り揃えて、駆け出し冒険者からSランク冒険者まで利用できるような専門店さ」


「いま見せてもらった矢はどこで作ったんですか?」


「ヘカテーに専用の工房を作らせてる」


「同じ素材の弓は作れないのですか?」


「そこが難しいところで、型に巻き付けて芯を抜かないと作れないんだよ」


「なるほど素材を加工する事は出来ないのですね」


「そうなんだよ。しなりもないしな」


「理解しました。この矢なら、どんな弓で引いても、使用者の技量を、本人が勘違いするほどの矢になると思います」


「それに弓は色々あるからさ、俺が持っているやつも並べたら良いから…クラッシュアーマーの弓をショーケースにでも展示して5000万くらいの値を付ければ箔も付くだろ」


「クラッシュアーマーの弓も持ってるんですか?」


「杖もあるぞ!ちなみに、ブラッドキャスターの軍隊を壊滅させた時のドロップアイテムなんだよ」


「そんな事が単独で出来るのですか?」


「それがさぁ…ミーティアにはこっそり話をするんだけど…少し前に隕石の落下騒ぎがあっただろ?」


「はい!セントラル中で大騒ぎになりました」


「あの隕石が…実は俺なんだよ。女神ヘカテーがこの星に到着した瞬間に、俺がレベルMAXになるように、深淵の大森林の真ん中に、落下させたんだよ。それで落下した場所に、大きな穴を開けちゃったから、その穴を利用して開拓したのがヘカテー王国でさ、落下ついでに何万もの魔物も討伐したんだよ。ちなみに、隕石の調査隊の斥候部隊の隊長として来ていたのが、アスコットなんだよ」


「梳李!笑ってもいい?」


「もう我慢できずに笑ってるじゃないか」


「ぎゃはははは!こんなに可笑しいのは生まれて初めてです。あー可笑しい!はははははははっ!」


夜の食卓では、思い出し笑いが止まらないミーティアのせいで、隕石の正体は、セブンスターズとしても、サメハダ商会としても、最大の機密事項になった…なんでやねん!



第24話に続く


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