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第14話 冒険者


押しかけアスコットが仲間に加わりパーティが出来た。出来てしまった。心待ちにしたダンジョン探索は、お預けになるのだろうか?どちらにしてもアスコットの力量をはかる必要ができた梳李だった


「そういえば、雷風が街の中では落ち着けないのもあって、早く出て来たから、組合の人になんの説明も受けて来なかったけど、パーティとかギルドとか、どんな仕組みなんだ?」


「そうですね、何から説明しましょうか」


「クエストを受けるとか、ノルマみたいな物は特にないのか?」


「その話をする前に、まず冒険者にはランクがあります。FランクからSSSランクまで9段階です。Fランクなら地下1階と地上1階で取れる資源の採取クエストを、10回達成すればEランクに昇格します」


「Eランクの冒険者は地下2階~5階、地上2階~5階に生息する魔物を100体討伐し、魔石を組合に持ち込めば、Dランクに昇格します」


「そのように、ランクにより探索範囲が決められています。特にノルマとしては無く、Eランクに昇格した後も、1階の採取クエストを、10年でも続けている冒険者もいます。クエストを受けなくてもランクアップしないだけで、冒険者資格剥奪は犯罪をしない限りありません」


「個人に合わせて比較的自由に、冒険のスタイルを決められるって事か」


「そうですね。パーティをたくさん集めてギルドを作り、より高くより深い未到達領域を目指す者もいれば、安全なクエストだけを受けて生計を立てる者もいます」


「ダンジョンの魔物はどうやって生まれるんだ?冒険者がたくさん居るなら、階層によっては居なくなるんじゃないのか?」


「それが居なくならないんですよ。討伐しても弱い魔物なら数時間、強い魔物でも数日でリポップします。魔物もランクで分けられていて、Fランクから順に強くなっていきます」


「ちなみに最前線の攻略ギルドが踏破した階層はどこまでなんだ?」


「おそらく、地下も地上も49階層までだと思います。50階層からは49階層のボスクラスが大量に出てくるらしく、未だに50階層を探索できた、パーティもギルドも存在しません」


「ギルドやパーティにもランクがあるのか?」


「パーティは報酬を公平に分配する為の、便宜上の集団ですが、ギルドは組織化されている所が多く、ギルドマスター以下それぞれの役割を担う幹部がいて、大規模ギルドでは、魔石だけを組合に提出し、集めたドロップアイテムは、ギルドの工房で加工して、販売している所もあります。ギルドはランクではなく、年に2回開催される、セントラル主催のギルド戦に参加する事で、順位が決まります。その順位がそのまま、ギルドの評価になります」


「なるほどな…種族間に強い隔たりがあるようだが、種族の違うギルド同士で、抗争に発展したりする事はないのか?」


「厳しい取締りがあるので、表向きはありませんが、水面下での小競り合いはちょくちょくありますね」


「人数制限はあるのか?」


「パーティは2人から、ギルドは7人から登録できますよ。上限は100名までです」


「だいたいわかった。アスコットは冒険者について詳しいんだな」


「梳李さんと一緒に、冒険者になると決めたので、昨日は受付嬢を軟禁して勉強しました」


「騎士団の仕事してたんじゃないんかーい」


「はーい!」


「はーい!じゃねえよ」


「まあいいや…それなら1階の採取クエストに行ってみるか」


「梳李さんが臨むなら今日から未到達領域のアタックも可能ですよ」


「ランクアップしなきゃいけないんだろ」


「私は騎士団時代の実績があるのでAランクスタートしましたので…」


「え?お前…強いの?」


「はい!警備隊対抗戦も年に2回、セントラル主催で行われるのですが…それは完全な個人戦で剣士部門、魔法士部門、拳闘士部門、複合部門と4部門ありまして、私は複合部門に参加して、毎回4位以内にはいましたので…それなりに強いのですよ」


「剣士部門じゃないんだな」


「警備隊対抗戦も各種族が威信をかけた大会なので、人選はとてもシビアに行われ、役職や勤務年数は一切関係なく、強さだけが求められます。私は魔法に対抗できるスピードと、体術も多少できるので、複合部門で選ばれていました」


「そのわりにはワニに食べられそうになってたよなあ」


「あ、あれは、試合と実戦では緊張感も違うのと、アリゲーターが固くて剣が通らなくて」


「はははっ!まあ…戦力にはなるって事か」


「はい!梳李さんの足手まといにはなりません!」


「もう仲間なんだから、梳李でいいぞ。あとな冒険者組合から城門の近くまで、お前を見てるような人物が付いてきてたぞ」


「多分…弟です。私が騎士団を辞めたので、何をするつもりか偵察かと」


「姉弟なら、偵察しないで聞きに来たらいいんじゃないのか?」


「そこが我が家の歪な所で、兄上寄りの私の事を、父上に告げ口したいのでしょう」


「お家騒動か…アンダーソン家って、そんなに良い家柄なのか?人の国は王国なんだよな?」


「騎士爵からはじまったそうですが…現在は子爵家ですね。お爺様までの当主はかなり功績を残したそうです」


「子爵家のご令嬢が俺と遊んでて大丈夫なのか?」


「問題ありません!…多分」


「多分かよ!仲間として認めたのだから、そういう事も背負ってやらなきゃいけないだろうけど…無理はするなよ」


「心配ご無用です!」


「お兄さんはどこに暮らしてるんだ?セントラルに居るのか?」


「兄上は王国にあるアンダーソン領の、田舎の農村に住んでいます。病気療養と言う理由を付けて、本家を追い出されました。村長は叔父がしています」


「一度会いに行くか…お前の父親に会う気にはなれないが…お兄さんには冒険者仲間として、挨拶くらいさせてもらった方がいいだろう。それに辺境の農村なら、雷風が本気で走れば1日で着くだろうしな」


「いいのですか?」


「彼氏や結婚相手じゃないって事は、お兄さんにちゃんと理解してもらうけどな」


「なんでですかー!」


「そうじゃないからだよ、至ってシンプルな理由じゃないか」


「残念ですー。ですが本格的に、冒険者の生活が始まる前に、会いたいとは思っていましたので、申し出はとても嬉しいです」


「なら!そうと決まったら、今日は解散して明日の朝に南の城門に集合な!」


梳李は一度考えを整理したくなった。アスコットの同行、セントラルの現状、どう動くのが良いか…色んな方向に思考を巡らせたくなり、その一端で開拓地の確認が必須になった。バルバロッソを冒険者仲間に加えるのも良いかもしれない。色んな事が梳李の気持ちを開拓地に向けたのである



第15話に続く


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