第129話 アリアナとオリビア
「お嬢様!そんなに走っては転んでしまいますよ!」オリビア
「オリビア!早く!早く!」アリアナ
この日は年に一度のお祭りだった、デイビスは小さなダンジョン街なので大した催しは無いのだが、それでも子供達にとっては他の街から来る出店はとても珍しく、唯一夜遊びができる恒例の行事だったのだ
「ズザザー!痛たー!」アリアナ
「ほら!転んだじゃないですか!」オリビア
「せっかくのお洋服もどろどろですよ」オリビア
「ぎゃはははっ!馬鹿じゃねえの!アリアナのやつ転んでやがるぜ!」塾の男の子
この街に学校はない、だが王都から来て教育を生業にしてる者は居て、裕福な家では家庭教師を雇うのだが、アリアナは家庭教師を呼ぶとオリビアと一緒に勉強できないと思い、それを断って2人で塾に通っていたのだ
「うるさいわねー!あんたらに関係ないでしょ!向こうに行ってよ!」アリアナ
「なんだよ!今日もオリビアはアリアナの腰巾着かよ!よくやるなお前らも」塾の男の子
「ほっといてくれる!」アリアナ
「アリアナがこの前喧嘩してやっつけた子ですよ、よっぽど悔しかったんでしょ」オリビア
「人に余計なちょっかい出してくるからよ!」アリアナ
「だけどうちの父の話では、子供のうちは気になる女の子にはちょっかいを出す物らしいですよ、あの子はアリアナの事が好きなのですよ」オリビア
「そんな事しらないよ、私は男の子に興味無いし、私が好きになる人はある日突然現れると思うもの」アリアナ
「アリアナは可愛いし活発だしモテると思うよ」オリビア
「そうかもしれないけど、いまはとにかくお祭りだよ!いくよ!オリビア!」アリアナ
どうやらオリビアはいつもアリアナお嬢様に振り回されながらも、姉妹のような信頼関係があったようだ、アリアナはオリビアの引っ込み思案な所を補うように、オリビアはアリアナの少し粗雑な所を補うように、子供の時からいいコンビだったようだ
アリアナが熱を出した為にひとりで塾に行ったオリビアが泣きながら帰ってきた
びっくりしたアリアナがオリビアにどうしたのか訪ねると、いつもアリアナに守られていたオリビアが1人だった為に、いつもアリアナにやられているガキ大将のグループが、チャンスとばかりにオリビアをからかったらしいのだが、それが度を超えてしまいオリビアを傷付けてしまったのだ
激怒したアリアナはリビングの剣を持ち出し、仕返しに行こうとしたのだが執事のイライジャに見つかってしまい、抵抗虚しく抑えられたのだ
その一部始終を見ていたオリビアは、そんなにアリアナが我慢出来ないことなら、自分で仕返ししてくると言って、さすがに武器は持たなかったがガキ大将が一人になるのを待って、待ち伏せをして自身の恨みを自らの手で取ったのである
「アリアナ!やってきた!あいつ泣きながら走って帰ったよ!」オリビア
「気分爽快だね!オリビア!頑張ったね!」アリアナ
盛り上がる2人とは裏腹に、引っ込みが付かないガキ大将は家に帰り親に告げ口をしていた、聞いた母親が激怒し塾を巻き込んで大騒ぎになった
「オリビアさんは本日から来ないようにしてください、これは塾としての決定です」先生
「なんの権利があってそのような事を言うのですか」アリアナ
「アリアナさんには関係ありません、昨日の夜モアイ君の母親から連絡があり、オリビアさんから暴力を受けたと報告が入っています」先生
「先にオリビアを傷付けたのはモアイ君じゃないですか!それに男のクセに負けたからと親に言いつけるなんて情けない!先生!モアイ君の事も処分するなら私は口出しをしませんけど、オリビアだけに来るなと言うのなら、断固抗議します!」アリアナ
「子供のあなたはわからないだろうけど、暴力を振るったほうが負けです」先生
「言葉の暴力は暴力じゃないと先生が言うのなら、そんな塾から学ぶ物はありません!私はオリビアと共に塾と戦います!」アリアナ
アリアナの行動は早かった、アイザックの仕事をよく見ていた事もあってか、なんとなくだが大人の社会の裏まで理解していた、執事の娘に過ぎないオリビアと街の役員の息子のモアイ君と秤にかけられたのである
家に帰ったアリアナはまずはアイザックに迷惑がかかるといけないと思い報告に行った、アイザックは前日にイライジャから報告を受けていて、話を理解するのは早かった
そこにたまたま領主と遊びに来ていたイザベラが居て、話を聞いてしまった
「そんな塾つぶしてあげるわよ!許せない!父上ー!戦争よ!戦争!これは子供の未来と誇りをかけた、教育者という傲慢な敵との戦争よ!」イザベラ
少しわがままに育ったイザベラは血気盛んだった、アスコットに出会う前の話である
娘に逆らえない領主ジョナサンと、バランス感覚の良いアイザックは話し合っては見たものの、ハチマキを巻いてタスキで袖をまくった少女3人に圧倒され、塾と話し合いに行かざるを得なかった、それに塾としての決定を誰が下したものなのか今後の街の為に、領主としてもデイビスの役員としても確認する必要があった
とにかく任せて欲しいとジョナサン、アイザック、イライジャで3人をなだめて、塾へ向かった、塾の責任者は担任から何も聞いておらず、寝耳に水だった、どうやら鼻薬を嗅がされて担任がバレないだろうと勝手にやっていたのだ
塾には再発防止の為に管理体制を充実させるように厳重注意をし、当事者の担任は解雇になった、モアイ君側にはジョナサンが話をしに行くと事が大袈裟になるからと、買収行為の厳重注意と、モアイ君からオリビアに対する謝罪をするように塾から通達をした
モアイ君の家は街の役員といえども木っ端役人だった事もあり白旗を上げた
気合いの入った少女3人の完全勝利である
「って事があったのよ」アリアナ
「めちゃくちゃ可愛い話だな」
「だけど子供の私達は本気だった、今思い出すから懐かしく可愛い思い出だけど、イライジャに止められなければ本当に斬ったかもしれないし、お父様が動かなければ塾と一戦まじえたかもしれない、なんにしてもその時にオリビアと私は本当の姉妹になり、イザベラとは仲良しになったのよ」アリアナ
「うちに来る時はオリビアが着いてくると行ったのか?」
「そうよ私達は一蓮托生よ!って、はははっ!」アリアナ
「いま思うとなぜうちにメイドとして来ようと思ったのかはわからないけど、とても縁があったんだろうな」
「サメハダ商会という新しい感覚に興味があって就職したけど、梳李を見ていてこの人だ!って直感したんだよ」アリアナ
「あの時はまだいまほど俺も有名でもなかったけど」
「漸進的な商会運営も扱う品物も他の商会とは全然違っていたし、冒険者はパーティ内で色恋の話が多くてめんどくさくなってたから、ちょうどタイミングも良かったよ、王都からの帰りにメイド長って気がついてくれた時には、一生この人の傍に居ようと思ったよ」アリアナ
「やぱオリビアは一蓮托生と思って妻に立候補したのかな」
「あれは私もびっくりしたよ、オリビアの性格からいって私と同じ立場になろうとするとは思わなかったし、余程梳李が良かったんだよ」アリアナ
「なんかありがとうな」
「なにが?」アリアナ
「全部だよ、好きになってくれた事も傍にいてくれる事も全部」
「ふふっ、私は幸せだよ、妻はたくさんいるけどとても大切にしてくれるもの、それになによりも私は梳李とこうしてくっついて話をしているだけで満たされるもん」アリアナ
「愛してるよ」
「ね…して♡」アリアナ
第130話に続く




