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第128話 ガブリエルとアスコット


「マシュー様!お喜びください!元気な女の子です!」メイド


「ふん!病弱な長男の次は女の子だと!」マシュー


「わしは仕事に戻る!」マシュー


アスコットが生まれた日、マシューの吐き捨てるような言葉がアンダーソン家の廊下にこだました、母親のスカーレットにもその声は重く響いていた


病弱だったガブリエルはとてもアスコットに優しかった、まるで外に出て走り回る事も剣を振り回す事もできない自分のかわりに、アスコットが体験してくれているような感覚でいつも見守っていた


「こほっ!こほっ!」ガブリエル


「兄上ー!大丈夫ですか?部屋で休んでくれたら今日は私が兄上に本を読んで差し上げます!一冊だけ読めるようになったのです」


ガブリエルは病弱だったのもあり、ベッドに横たわる時間も多く、暇つぶしに本は嫌になるほど読んでいたが、屈託なく言ってくるアスコットの気持ちは嬉しかった


「ほんとか?アスコット!ちゃんと読めるのか?」ガブリエル


「おまかせください兄上!とても上手に読んで差し上げますよ」アスコット


「母上ー!兄上が咳が出るので薬とお水をください、私が持っていきます」アスコット


「アスコットはガブリエルの事が大好きなのね、マシュー様は話もなさらないのに」スカーレット


「父上がおかしいのです!上手くいかない事があると母上や兄上のせいにして、怒鳴り散らして…私は大嫌いです」アスコット


「これ!父親の事をそんな風に言うもんじゃありませんよ、私達にはわからない苦労もあるのでしょうから、それにローガンは元気に育っているから最近は少し機嫌の良い日も多くなったし、アスコットもたまには相談事でもしてみなさい」スカーレット


「いやです!私は剣術学校へ入り強くなります!そして私の剣で母上も兄上も守ります」アスコット


正義感も強く真面目な性格のアスコットは、良く怒られている母の姿を見ていた為に、マシューの事が嫌いだった、ある程度の歳になれば貴族家の女子の役割もわかっていた為、その事も加勢して剣で身を立てると、頑なに決意していたのである


剣術学校


「あんたがアスコット!首席入学らしいわね!私と勝負しなさい!」イザベラ


「そんなあなたは次席のイザベラじゃない、私と勝負とは100年早いと思うよ」アスコット


「やるの!やらないの!」イザベラ


「やる理由がないもの、やるわけないじゃん」アスコット


次席だったイザベラをアスコットは相手にしなかった、アスコットにすれば取り巻きを多く連れているイザベラに、恥をかかさぬように配慮していたのだろうけど、当のイザベラはそんなアスコットの態度が鼻についた


「それなら次の魔物討伐研修の時に討伐数で勝負しましょう」イザベラ


「はい、はい」アスコット


「約束よ!」イザベラ


討伐研修当日、この日は剣に自信のある者は単独行動も良し、不安な者はパーティを組むも良し、比較的自由に行動できる研修だった、先生達もそれほど危険がない事も熟知していて、入学できていれば問題なく倒せる魔物しかいない場所のはずだった


「きゃー!」イザベラの取り巻き達


「なにがあったの?」アスコット


「強くて大きいオークが出て…」その中の1人


「イザベラは?」アスコット


「私達を逃がす為に戦っています!」1人


「先生に早く伝えて!」アスコット


そう言い残してアスコットは走った、同級生が研修で事故にあったなんて事は気分がいいものじゃない、自分で倒せる自信はなかったが、放置して逃げるくらいなら一緒にやられてあげようと思ったようだ


到着した、一応剣で攻撃を弾いているが、力では対抗できず、かわすのがやっとである


アスコットは自分に注意が向くように、剣を持ったまま脇に差した護身用の短剣を投げナイフのように飛ばした


「弱い者いじめしてないでかかってきなさい!」アスコット


強がってはいるが声も足も震えている


「なんで来たのよ!ほっとけばいいじゃない!」イザベラ


「私は強くなるって決めたのよ、あなたの事は好きじゃない、めんどくさいし取り巻きに偉そうだし、だけどそれとこれは別なのよ」アスコット


オークがアスコットに襲いかかる、幸い相手の武器は丸太だったので、落ち着いてかわして、急所にだけ攻撃を受けなければ、時間稼ぎくらいはできると思った


振り下ろされる丸太を昨日教わったように剣で受け止めいなしていく、力をそらされた丸太が地面を叩く、学生の頃から一閃の速さと動きの速さには定評があり、自分でも自信があった


地面を叩いた丸太を確認した瞬間オークの右腕を切った、悲鳴のような咆哮をあげ暴れるオーク、左腕から繰り出されたフックに吹き飛ぶアスコット


「ぐっ!」アスコット


とっさに腕でガードしたものの肋骨がボキッと音を立てて折れた


「こんな所で終われない…母上も兄上も私が守るんだ、この程度の雑魚にやられる訳には…」


「いかないのよー!」アスコット


痛みを堪えて繰り出した剣技、アスコットの意地が会得させたスラッシュとダブルスラッシュ


初めのスラッシュで左手首を飛ばし、続け様のダブルスラッシュで腹と胸を斬った


「ぶぉぉーーーー!」オーク


「はあ、はあ、はあ」アスコット


「大丈夫かー!」先生


「先生!早く!こっちです!」取り巻き


アスコットの登場に安堵し泣きながら腰を抜かしているイザベラにアスコットは手を差し伸べた


「アスコットー!ありがとうー!」イザベラ


「汚いから抱きつかないでよ」アスコット


「だって!だってー!」イザベラ


「仕方ないなー、よし、よし」アスコット


後日イザベラが正式にアスコットに謝罪と感謝を述べに来た


「アスコット!あの時は本当にありがとう!そしてそれまで勝負、勝負と追いかけてごめんなさい、私があなたに剣技で超える日が来たとしても、あなたには勝てないとわかった、首席と次席というか、あなたと私の違いは内に秘めた強さの違いだもの、私も人と比べる事をやめて自分自身を磨こうと思う」イザベラ


「そ!わかったなら命がけでオークに立ちはだかった甲斐があったよ、お互い頑張ろうね」アスコット


そして卒業してアスコットは警備隊員となりさらに剣に磨きをかけ頭角を現して行った、イザベラはデイビスの領主の娘として花嫁修業に勤しんだ


「アスコットは居るかい?」


「なあに?梳李」アスコット


「少しガブリエルの家に行くぞ」


「何かあったの?」アスコット


「この前マシューの治療に行ったんだよ、多分大丈夫だと思うけど経過を見たくてな」


「あの忙しい最中に兄上と少し居なくなったから、どこに行ったのかと思ったら父上を治療してたのね」アスコット


セントラルサメハダ邸


「マシュー!体調はどうだ!」


「これはこれは梳李様、わざわざ様子を見に来てくれたのですか」マシュー


「アスコットも元気そうだな、なによりも顔が幸せそうだ」マシュー


「アスコット!元気にしてた!」スカーレット


「母上ー!私よりも先に梳李も来てるんだから…」アスコット


「これは失礼しました梳李様」スカーレット


「いいんですよ、私はこの前会ったばかりですし、アスコットの相手をしてやってください」


「胸は平気か?マシュー」


「すっかり良くなりました」マシュー


「一応、エリクサーをもう一本渡しておくから、胸がごろごろ言った時は我慢せずに飲むんだよ、それに遠慮なく相談してくれ、俺の父さんでもあるんだからな」


「もったいない言葉ですよ」マシュー


「泣くなよー、父さん!」


「あらあら最近歳かしらね、マシューも涙もろくなっちゃって」スカーレット


「引退してからそれまでは感じる事が出来なかった事を感じられるようになったんだよ、スカーレットにも感謝しているし、俺はこんなにも妻を愛していたという事も最近ようやく気がついたんだ」マシュー


「娘と梳李様の前ではずかしいですわ、ちなみに私は私が居ないとあなたが生きていけない事くらいは、何十年も前から知っていましたけどね」スカーレット


「そうだ!お父さんとお母さんにお土産です!これは結婚指輪といってお互いの左手の薬指にはめるのです、オリハルコンというとても珍しい金属で出来ていますから記念にどうぞ」


「今日はなんかの記念日じゃったか?」マシュー


「記念なんてのはなんでもいいのよ!」スカーレット


「どうか末永く仲良く過ごしてください、ガブリエルやアスコットの為にも元気に長生きしてくださいね」


「いつもありがとうございます」マシュー、スカーレット


「またゆっくり来ますね」


「それでは父上母上!また来ます」アスコット


「アスコット、少し寄り道しようか」


「ヴィーナスは大森林北の大草原に来てくれ!」


「すぐ行きますね」ヴィーナス


月明かりの差す大草原


「はじめて会った日と同じだな、あの時は色々嘘をついてごめんな、説明のしようがなくてさ」


「わかってるよ、それにあの時説明されたとしても信じられなかったと思うよ」アスコット


「はははっ!それもそうか」


「あれくらいでちょうど良かったんだよ」アスコット


「今日は突然だったけど、仲良く暮らしてる父さんと母さんを見せてあげたくてさ、長い時間が培った絆みたいな深い愛情を見ていたら、ここに寄りたくなったよ」


「とても母上も幸せそうだった」アスコット


「私達も30年経ったらあんな風にしてるかな」アスコット


「俺達はもっとラブラブなんじゃないか?」


「変態♡」アスコット


「月明かりも夜空を埋め尽くす様な星もあの夜と同じだな」


「あの時ほど緊張はしないけど、いまでも梳李の腕に抱かれるのは素敵だよ」アスコット


「緊張してたのか?」


「そらするよ!男の人にくっついたのなんてはじめてだったんだから」アスコット


「一生の思い出にします!とか、可愛い事を言ってたな、はははっ」


「もう!すぐ茶化すんだから…だけどそのまま死んでも良いと思うくらい素敵だった、追いかけようと決意した」アスコット


「そうだったのか、俺は尊敬してたからな」


「女の子として可愛いと思ってよ」アスコット


「あの時はアリゲーターの前に立ち塞がった姿が美しいと思ったよ、そして凄いなあって思ってさ」


「ロマンチックだね」アスコット


「うん!良い夜だ!夫婦でもこんなプラトニックな夜があっても良いな」


「ねえ、プラトニックにえっちしよ♡」アスコット


「変態♡」



第129話に続く


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