第11話 悪魔っているんだね
セントラルからの応援が到着した。アスコットから、一通り説明を受けた一団は、素早く状況を把握し、重要性の低い下っ端からセントラルに輸送を開始した
騎士団総帥なる人が、全責任を与えられて出てきたようで、国としても本気で検挙、断罪する姿勢を強く見せていた
「貴殿がケズリ殿ですかな…私は、アレクサンド・ロドリゲス…騎士団の総帥をしております。アスコットから、貴殿がご尽力頂いた事は聞き及んでおります。時間も無き故、後日またきっちりと…今は挨拶だけさせてもらいます」
「ケズリ・サメハダです。私のような者に礼を尽くしていただき、こちらこそ感謝申し上げます」
騎士団の厳しい取り調べが始まった
「委員長…騎士団総帥って偉い人だよなあ…」
「そうですね…トップだと思いますよ」
「俺にも騎士らしく礼を尽くして…良い人も悪い人も居ると言う事か!」
「当たり前ですよ!梳李様」
「いや…はじめの印象が悪ぃよ。俺さっきは少しこの世界に来た事を後悔しそうになったよ」
「私は…ますます梳李様を、この星に連れて来た、ヘカテー様の気持ちがわかるような気がしましたよ」
「なんか?はめられた気になるなあ」
「詳しくは開拓地に戻った時に、神殿に行って、ヘカテー様から直接聞けば良いと思いますけど…梳李様は自由でいいのですよ」
「ところで悪魔はどういう存在なんだ」
「それも直接お聞きになるのが、良いと思いますが…簡単に言えばヘカテー様のような女神と、存在自体は同じですね。天使に対する堕天使のように、神が落ちた先と認識して頂けば問題は無いかと…」
「と言う事はさ…神同士の不可侵協定を破って悪魔が干渉してるって事か…魔物が騒がしいのもそれが原因だという事か?」
「恐らく…先ほどからオリバーなる者を解析鑑定していますが…悪魔の関与は間違い無さそうです。悪魔は嫉妬や欲望に呑まれた者たちです。神と同等の力を持つ点ではやっかいですが、ヘカテー様の監視をかいくぐって、悪魔自体が直接この星に降りて来る事はまずありません」
「レッサーデーモンや、アークデーモンと呼ばれる悪魔が、ごく稀に襲撃に来る事はありますが…それも悪魔を崇拝する事で恩恵を与えられた者なのです。わかりやすい言葉で言えば、悪魔憑きとお考え頂いて大丈夫です。美しい精神に神の恩恵が宿るように、邪悪な精神に悪魔の恩恵が宿るのです」
「んで?オリバーには?憑いているわけか」
「はい…かなり高い割合で」
「対処方法は?」
「オリバーの悪魔憑きは自らの欲望に始まった微弱な物です。その程度、梳李様が引けを取ることはありません。しかし…お気を付けください。逃げ足は早く空を飛びます。対抗手段として移動魔法テレポートを覚えてください」
「オリバーが微弱な者って事はさ…強くなる者はどんな感じなんだ?」
「神の恩恵の強弱は…例えば、平和な社会を作ろう。万人を幸せにしよう。そういう深き慈愛に始まる崇高な心…自己犠牲の精神が強い者を神が寵愛するように」
「悪魔の場合は…例えば、こんな世界ならば滅ぼしてしまえ。万人で落ちる所に落ちてしまえば悩みも苦労もない。そういう深い憎しみや醜い妬みからなる邪悪な心で…その方向に自己犠牲の精神が強ければ強いほど、悪魔に寵愛されるのです」
「自己犠牲とは…使命感と考えて頂いても良いとおもいます。そのように、向かう方向やいろどりは、真逆になりますが…神と悪魔が同等の立場で、同じように恩恵を与える事ができる。と言う事は理解して頂けましたでしょうか」
「なるほど…それで私利私欲を貪る程度のオリバーなら憑かれても弱いって事か」
「その通りでございます。梳李様がオリバーに、どす黒い感情を見たのは、ヘカテー様の恩恵も関係してると思います」
「んで…悪魔とやらは出てきそうかい?」
「先程からの総帥による厳しい取り調べが続いています。いつ現れてもおかしくないですね」
「斬れるのか?」
「魔法攻撃はほとんど効果がありません。ブラックホールのように、亜空間に飛ばして永遠の時をさまようようにするか…物理攻撃で原子レベルに粉砕するしかありません」
「弱いやつでも…それなりに骨が折れるのね」
「もちろん!」
「もちろん!じゃねぇよ!備えるか…」
ロドリゲス総帥は主犯のオリバーを攻めていた
「オリバー!騎士団員までを買収した罪は許さぬぞ!」
「買収される方も悪いんじゃないですか?騎士団も大した事ありませんな」
顔色が変わってきた…来るのか…
「何件やった!何人襲った!」
「ここの所の被害届は全部だろ…皆殺しにして被害届が出てないのが10倍あるだろうがなあ」
「お前…ロドリゲス総帥と言ったなあ!家族がどうなるか、見ているんだなぁ…」
来たか!
オリバーの異変に気がついた総帥が斬りかかる。一刀両断にするが…黒いモヤに包まれ効いていない!オリバーは一蹴りして総帥がひるんだ隙に素早く逃げる
「貴様!待て!」
「また来るぞ」
委員長の話通り撤退が早く、言葉を残して飛び上がった
「甘い!」
テレポートで背後を取った梳李が、背中を蹴り地面に叩きつける!
「なんだ?お前…何者なんだ!」
「それはこっちのセリフだが…お前と話す理由はない!超加速!一刀両断!狂喜乱舞!木の葉舞い!」
所持した剣術スキルを一瞬の隙もなく行使する
「狂喜乱舞!木の葉舞い!」
「貴様ー!なにをするー!」
「心配するな…お前はもう塵となった。しばらくの間、精神をさまよわせ消えるまでの時間で後悔しろ!」
「なんとか討伐できたな」
「梳李殿…いまのは…なんですかな…オリバーが…悪魔のように…」
「いや総帥…申し訳ないが俺にはわからない。むしろ総帥の方が知ってるんじゃないのか?」
「そうであるな…わしとした事が…すまぬ梳李殿。合わせて助太刀に感謝する」
「いやあ…なんか?本能的に、逃がしてはいけない者と認識したから、頑張っただけですよ。頭をあげてください」
「梳李さん…何度も何度も助けて頂きありがとうございました」
「スキル超加速を覚えました」
「スキル悪魔センサーを覚えました」
「移動魔法テレポートを覚えました」
総帥…怪我したんだな…こっそりヒールをかけておいた。傷が勝手に治った総帥が不思議そうにしてるけど、いいよな
「梳李殿…事態の報告もあるし…今日はこれで失礼する。主犯は梳李殿が滅ぼしたし…他の者はセントラルで責任を持って処罰します。またあいましょう!」
「梳李さん!私も行きます!申し訳ないのですが…今日はこの後対応に追われると…」
「いいよいいよ。城門の近くで野営するから、門番にだけ不審者じゃないって、ちゃんと伝えてくれ!明日でも明後日でも、落ち着いたら迎えに来てくれよな」
そうしてセントラルを目前に野営する事になった
隕石の事が忘れられる程、オリバーの悪魔化はセントラルの最重要案件となった。中には原因を隕石にしたい者もいたようだが、アスコットの報告により繋がりは無いという見解になった
目の前まで来てお預けかあ…梳李には、近くて遠い、セントラル…詠んでる場合か!
第12話に続く




