第107話 神殿にて
母さんに最後の別れを告げた事で深い悲しみに包まれてしまって、しばらくぼーっと過ごしていた。マザコンではなかったし、ちゃんと親離れも子離れもしていたのだが、母さんに悲しい思いをさせたからと言いながら書いた手紙だったが、母さんからの返事を読んだ事で、会えなくなった事が、俺自身が悲しくてたまらないと気がついたからだ
「大丈夫?」ヘッカ
「うんうん、大丈夫なんだよ、だけど脳天気で後悔する事もない性格の俺が、たまには終わった事にくよくよするのも良いかなあと思ってさ、心配かけてごめんね」
「私達は直接悲しみを味わったわけじゃないから、心配する事しかできないから」ヘッカ
「少しだけこういう時間を過ごしたかっただけだから大丈夫だよ、転生してから目まぐるしい毎日も過ごしていたし、母さんとの思い出もゆっくり考えたけど、ここまでの出来事を振り返る事もしたかったから」
「そうですね…この2年あまり、休む暇もなくとてもたくさんの事をしてきましたね」フェアリー
「もう2年以上経っていたのか、早いもんだな」
「世界の事も神界の事もとてもたくさんの事をしてこられました、たまにはおやすみしなきゃいけませんよ」ピーシス
「おやすみと言えば、みんなの家族も呼んでサメハダの街に、のんびり温泉でも入りに行こうか、視察も兼ねて一度行きたかったし、ライオネルやルシフェルも暇そうにしてたから参加するだろ、ピーシスにだけそういう人が居ないのは申し訳ないな」
「ヘカテー族の歴史はまだ2年ですから仕方ありません、私は寂しいと思った事はありませんし、梳李が旦那であり創造主である事は誇りに思っていますよ」ピーシス
「サメハダの街にもたくさんの舞踊部隊が行ってると思うから仲間には会えると思うけどな」
「はい!それで充分です!」ピーシス
「家族ってどこまで連れていくの?」アスコット
「両親でも親戚でも連れて行きたいと思う人を連れて行けばいいんじゃないか?逆に何人になるか聞いてから準備するよ」
「ファミリーの慰安旅行を兼ねても良いけど、そっちの確認はフェアリーに頼んでいいか?俺は神殿のやつらがどうするか確認しとくよ」
「お任せ下さい」フェアリー
神殿広場
「ヘッカひとりだけとは珍しいな」
「みんな温泉に誰を連れていくかを確認する為に、手紙を書いたり実家に行ったりエンジェルや漆黒も総出で忙しくしてるから」ヘッカ
「そうかヴィーナスが居ないのもそういう事か、順番に散歩と寝る日があるけど、2人になる時間はあまりないからたまには良いな、ピーシスは何をしているのかな」
「ピーシスはみんなに言われて人数をまとめたり、色々手伝ってるよ」ヘッカ
「それなら心配ないな」
「そんな事より柱の彫刻が始まってるね、世界大会の本戦だね」ヘッカ
「梳李様!世界大会運営委員のアビーです!お目にかかれて光栄です!」
「任せっきりで申し訳ないですね、スタジアムの表彰や審査日程を教えてもらっても良いですか?」
「今月いっぱいが作成日になっていまして、月が変わってから1週間が審査の日程になっています、次の日がスタジアムで発表となります」アビー
「ちょうど聞けて良かったよ、しばらく旅行に行く予定だったから…ありがとう」
「とんでもないです!」アビー
「あと作業をする彫刻家や芸術家が危険のないように、足場やステージの提供は惜しみなくしてあげてください、予算が足りなければ俺も協力しますので」
「その辺はご安心ください、ワールドがスポンサーになっていますし、梳李様がそのように言う事は各国王からうるさく言われています」アビー
「はははっ!みんな暇そうだったから運営委員会の役員も大変だね」
「世界のトップが暇で居られるなんて、梳李様が平和と景気をもたらしたからですよ。口を出してくるのは確かに大変なのですが…とても素敵な事です」アビー
「そうだアビーさん!役員は累計で何人いるの?縁の下の力持ち賞を俺から全員に渡すから人数を教えてください」
「大至急調べてから後ほど報告します」アビー
「よろしくね、俺達は通路の桜の木の下にいると思うから」
「梳李はそういうの絶対に欠かさないよね」ヘッカ
「みんな頑張ってくれてるんだから、お小遣いくらい出してあげないとさ」
「喜んでいるだろうけどね」ヘッカ
「ところで温泉旅行が終わったら、大きな戦闘はしばらくないだろうから、各国の王都をお忍びで探索しようと思っているんだよ」
「なにかあるの?」ヘッカ
「わからないから探索するんだよ、出来たら王都だけじゃなくて、本当は全部の街や村を回りたいけど、虐げられている民や貧困に喘ぐ子供達が居ないか?パトロールのようなもんだ」
「確かに世界中が平和で好景気に沸いているけれど、裏には何が隠れているかわからないものね」ヘッカ
「戦争はないから戦争孤児は居ないと思うけど、王都とダンジョンの街は最低限見ておかないと、両親が冒険者でダンジョンから戻って来ないケースはあると思うんだよ。そういう子供達が居るなら手を差し伸べないとさ」
「それは各国の王も意識してるんじゃないの?」ヘッカ
「通達は出しているだろうし、そういう事に予算も割り振ってあるだろうけど、世の中はそんな簡単じゃないだろ」
「確かにそうだね、セントラルの警備隊ですら、国民に横柄な態度の人はみかけるもんね」ヘッカ
「そうなんだよな、温泉旅行の誘いと共に、パトロールの手助けをしてもらえないかとガイヤとゼウス、ポセとアンピに会いに来たんだよ」
「ポセは頼りにならないけど、確かにガイヤとゼウスなら今の小さい世界なら隅々まで見渡せるかもしれないね。私は人の社会を干渉しない事が前提だからわからないもんね」ヘッカ
「この星の女神はそれで良いんだよ、いちいち干渉していたら星の大事を見失う、星という大きな事の為に小さい出来事には干渉しない事の方がいいさ、そのかわりに俺はそういう小さい方に取り組まないとさ」
「ほっほっほっ!相変わらず元気そうじゃな」ゼウス
「わしもおるぞ!」ガイヤ
「最近ガーディアンズから離れている事が多く申し訳ありません」ポセ
「みんなも元気そうだな、まだ日が高いからこっそりだけど、花見の誘いで来たよ」
「刺身はあるかの?」ガイヤ
「はははっ!あるある」
「日本酒もか?」ゼウス
「当然だな」
「すぐに行きます!」ポセ
「かんぱーい!」ヘッカ
「ヘッカも最近はめっきり日本酒派だな」
「刺身とお寿司に冷たい日本酒が良く合うからさ」ヘッカ
「めちゃくちゃ渋い好みの女神だな」
「ほっほっほっ!わしも目がないぞ」ゼウス
「とうぜんわしもじゃ」ガイヤ
「ポセとアンピはしばらくガーディアンズに来なくてもいいぞ、思いあたる戦闘もないし、もしもあればその時に駆けつけてくれたら良い。ツキジの街でのんびりしてたらいいぞ」
「助かります!わしも梳李を真似て街の事をしているのだけど、人の感情がわからないから苦戦しているのですよ」ポセ
「はははっ!神様も成長するか!いいな!」
「ところで梳李や、温泉旅行には参加するぞ」ガイヤ
「各種族の街の闇のパトロールも引き受けよう、実際に対処はできないが報告はちゃんとする、どのような事がしりたい?孤児の事だけで良いのか?」ガイヤ
「さすがに大地の母だな、俺の心もお見通しか」
「わしもゼウスもなんでも知っておるぞ」ガイヤ
「それなら知っていると思うけど、母さんに会ってきたよ、ありがとうな」
「ああ…あの光景はわしに1リットルの涙をもたらした」ガイヤ
「ヘッカをはじめゴルゴもだったけど、神界は地球の文化がそんなに興味深いのか?」
「ほっほっほっ!神界の流行じゃ」ガイヤ
「そういえば温泉旅行にはゴルゴも誘うか」
「お待たせしました!いのち!」ゴルゴ
「はやっ!それはやめなさいって」
「私も刺身とお寿司と日本酒を頂いても良いですか」ゴルゴ
「スルーかよ!ゴルゴも元気そうだな、温泉旅行には3人が俺の仲のいい家族と言う事にしてガイヤとゼウスとゴルゴとセットで参加するか、気に入ったらギガースの街に3人用に巨大な温泉を作りに行くよ」
「ところでこのセントラルという国は素晴らしい所ですね、様々な文化が行き交い種族間の区別もなく、大勢の人が生き生きと暮らしている」ゴルゴ
「ギガースがあんなに大きくなかったらギガース族として、こっちの文化にも合流出来たんだけどな」
「そのうちに姿を変化させられる術を見つけたら相談します、いまは梳李が作ってくれた街で自給自足しながら幸せに暮らしています」ゴルゴ
「ギガースも幸せに暮らせているなら良かったよ」
「梳李はほんとに敵に対しても優しいのお」ガイヤ
「敵と味方ってのはさ、その時その時の情勢みたいなもんでさ、たまたまそういう場面があるだけで、話をすれば巨人でも神様でも人間でもみんなわかり合えると思ってな」
「その上絶対神の神託は使わないと宣言しよる、お前は神以上に神じゃな」ガイヤ
「ばば様!わしも常々そう思っておったのですよ、こやつの柔軟な思考回路は宇宙よりも無限に広がっているように思えてならんのです」ゼウス
「梳李は素敵です♡」ゴルゴ
「ダメー!梳李は神界では私だけのものなんだから!」ヘッカ
「はっはっはっ!」神様達
こっそりのつもりが大きな笑い声が何度も響いた、俺もここにいると実家に帰ったような安堵感もある、居心地がいいのでついつい調子にのって飲んでしまうが、人数を報告に来たアビーはぶっ飛んでいた
運営委員の皆様ご苦労さまです( ̄^ ̄ゞ
第108話に続く




