第104話 大地の底タルタロス
暗い、どこまでも暗い…
こんな所に幽閉されて平常でいられるのだろうか、果てしなく暗い闇の中をさまよっていた
「明かりを付けてもいいのか?」
「かまわんよ」ゼウス
「シャンデリア!」
辺りは眩い光に照らされた
「フェアリーとヴィーナスで気配を追ってくれるか」
「あれが神の子なのですか、この先に目が1つの巨人と百手の巨人がいるようですが」ヴィーナス
「テューポーンといい、神が生み出すにしては悪趣味では無いですか」フェアリー
「そうじゃ目がひとつなのがキュクロプス、百手なのがヘカトンケイルだ」ゼウス
「明かりを灯してくれたのか、遠い所からすまんな」ガイヤ
「ガイヤばば様!まもなく合流できそうです」ゼウス
「それだけ明かりがあるのならわしも今そちらへ行く」ガイヤ
「梳李とはお前か、この度はやっかい事を引き受けてくれてありがとう礼を言う」ガイヤ
「ばば様と聞いていたが神は歳を取らないんだね」
「はははっ!そらそうじゃ神は人のように、歳を重ねる事で外見の変化はない。わしが無から有を生む時に初めてできた存在、大地のガイヤじゃ」ガイヤ
「他の神もガイヤ様が作り出したから、母親と子供の間に子供がいたり、相関図がややこしい事になるのか」
「人からするとそうなるだろうな、しかし世界を創造すると言う事はそういう事なのじゃ、できる事をできるようにする事しか、他の可能性がなかったのじゃ」ガイヤ
「納得しただけで、その関係を攻めている訳でも、おかしいと言っている訳でもないよ、元より神を批判する権利もなければ、とやかく言える立場にもないですよ」
「お前のそばに来るだけで温かいなあ、テューポーンが強くお前と敵対する事だけはやめて欲しいと言ってくる訳じゃな、わしも神ではあるが人間の理の中に存在するわけではない、わしのことも仲間のようにガイヤと呼んでくれ」ガイヤ
「まもなく合流します!どうされますか?」フェアリー
「あのでっかいのがそうか、ガイヤが生み出す子供は戦闘力重視なのか?」
「ふふふっ!そう思われても仕方がないな、なんせ神界は争いの絶えない所でな」ガイヤ
「人間の世界も本来そうだよ、利益の為に他者を迫害する、その構図は何もかわらない、精神世界の神界では尚の事だろうさ」
「キュクロプス!ヘカトンケイル!生きているか?」ガイヤ
「母上ではありませんか!お久しぶりでございます」キュクロプス
「一つ目のキュクロプスさんと、百手のヘカトンケイルさん!お元気ですか?助けに参りましたよ」
「おお!これはありがたい、人間でありながらそのような力を持つ者もいたのですね」ヘカトンケイル
「ところでこの後どうすればいいんだ、長い虚無の生活から早く出してあげよう」
「私の加護を授けるから、ありったけの魔力で地上まで大地を割ってくれないか」ガイヤ
「そんな魔法があるのかな、フェアリーはわかるか」
「今いる場所がどの程度の深さなのかわかりませんが、クラックザアースという魔法で地割れは起こせますが、この闇の世界もろとも破壊しかねませんね」フェアリー
「魔法クラックザアースを覚えました」
「あ!覚えちゃったな、ヴィーナスのケラウノスから放たれる雷霆に乗って、きりもみしながら二刀流で地上を目指すなら世界に傷を付けずに済むんじゃないか?」
「どのくらいの時間を要するのか想像もつきませんが」フェアリー
「ゼウス達の力は使えないし、早く助け出してあげたいし、世界を破壊する事は出来ないから、めんどうでもそうするしかないだろ、大地のガイヤの加護もあるから何とかなるんじゃないか」
「聞いていた通り面白いやつじゃな」ガイヤ
「環境にも生命にも優しく、労を苦にもせず、1点の迷いもない、梳李は何者なんだ」ガイヤ
「何者でもないさ!俺は俺だ!ただやるべき事が目の前にあるなら全力で挑むだけだ、単純にできているだけだよ」
「ヴィーナスは俺がきりもみしだしたら全力で発射しろ、進める所まで進んだら空中にステージを作るからそこまで飛んで来てくれ」
「わかりましたよあなた!とても楽しいひと時になりそうだね」ヴィーナス
「楽しい時間かはわからないけど、ヴィーナスは頼られる事がそんなに嬉しいのか」
「はい!とても」ヴィーナス
俺とヴィーナスの共同作業は24時間に及んだ途中魔力回復する為に休んだせいもあるが、発射される事2万回、さすがに目も回ったし腕も疲れた、いやむしろこれまでのどんな戦いよりも困難な仕事だった気がする
さかのぼる事24時間前
「やつらの作業が始まったな、キュクロプスもヘカトンケイルも良く見ておくのだよ、お前達を救おうと小さな人間が頑張っている」ガイヤ
「しかし梳李はいつも迷いがないのお」ゼウス
「梳李には私達のような計算がありません、いつでも何者に対しても何事に対しても、ただひたすらにまっすぐなのです」ヘッカ
「ヘカテーも良い者を見つけたものじゃな」ガイヤ
「大地の母にそう言って頂けるのは光栄ですが、私が利用する為に見つけたと言うよりは、梳李の輝きに魅了されたのです」ヘッカ
「その輝きに魅了されたと言う事も、そなたの才能じゃ、よきよき」ガイヤ
「ばば様も今度夜空の下で桜のそよ風と満月を眺めながら一献やりませぬか、わしも梳李から教わったのですが、その光景と美味い酒の前に自身の無力さを味わい、争いに明け暮れている自分を反省したのです」ゼウス
「良いな…是非参加しよう」ガイヤ
そして現在…
「夜の花見は良いけど明日な、魔力を使いすぎて眠いよ、ヴィーナスは最後の一発を撃ったあと寝てしまった」
「ありがとうな梳李、本当にありがとう」ガイヤ
「なんにしても子供が大地に戻れて良かったじゃないか、利用する事を考えないで母親の愛情で包んでやってくれ」
「それではまた明日な!ゼウス帰るぞ!」
「ほっほっほっ!ばば様!それではまた明日!桜の下で!」ゼウス
魔力の尽きた俺はとても深い眠りについていた、魔力回復の為に妻が入れ替わり立ち替わり肌を寄せてくれた事は夢見心地に感じたが、回復するまでは眠りから覚める事はなかった
ガイヤをこの世界に招待するにあたり、とてもいい事を思いついた
「フェアリー!夜までに少し仕事をするぞ!みんなも来い!」
「何をするのですか?」フェアリー
「神殿の入口に設置した巨大な円柱を50mに伸ばして、柱の上に大きなステージを作る、その中を展望台にして人が入れるようにする、行き来は魔法で上下するエレベーターを柱の中に作り、ステージの上にこの世界を見渡せるように大地の母ガイヤ像を建てる」
「いいと思わないか!」
「そうだねとてもいいね」ヘッカ
「随分神々の厄介事に巻き込まれてしまったが、未来永劫に渡ってガイヤやゼウスもこの星を守護してくれるなら安い物だったしな」
「また神殿や神殿広場が人々の訪れで賑わい、素敵な場所になりそうですね」ファニー
「地球の神殿と言うのは格式ばっていて、簡単に足を踏み入れられる場所ではなかったのだが、俺は宗教理念というものは誰もが理解できる開かれた物でなくてはいけないと常々思っていたんだよ。興味を持とうにも触れる所からしか始まらないのだから、神殿は誰もが気楽に訪れる場所である方がいいよな」
「私も賛成!途中で魔力が尽きそうになったらまた抱きしめてあげるからね」アリアナ
「そうだよな、俺が寝てる時みんな順番に寄り添ってくれたよね、ごめんな夢見心地に感じたけど、起きる事も抱きしめて返す事も出来なかったんだ」
「妻の努めです!それにとても幸せな時間です!」サラ
「幸せだよねー」ピーシス
「私は梳李に触れるだけで感じてしまいます」ミーティア
とりあえずスルーしておこう
「みんなありがとうな!その時は頼むよ!さて!やるぞー」
ガイヤの来訪を前にぎりぎりガイヤ像と展望台は完成した、エレベーターにはオペレーターを組み込み、登りと下りを同時制御する事に成功した、柱の耐久性を考慮すると一度に運べる人数は50人が限界だが、エレベーターでそれだけ大型の物はそれ自体がとても荘厳だった
みんなで展望台から眺めた夕日もとても美しく思い出に残る景色だった、高い建物がないこの世界では、オペラグラスを使えば各国の王都を眺める事が出来た
我ながら大満足である!
第105話に続く




