第101話 和平
ゼウスやヘラと我が家のみんなが花見で盛り上がっている時、とても小さく今にも消えてしまいそうな星の片隅で、その光景を眺めている者がいたゴルゴーンである
「ヘカテーめ!とうとうゼウスまでも引き込んだのか…それにわれが干渉しやすいようにわざわざ手薄になっている場所を作るとは、舐められたものだな!しかしゼウスとガイヤばば様が和平の道を探しているとは、そんな事が有り得るのか…」
「梳李!相談があるのだけど」ヘッカ
「珍しいな、女神からの相談とは」
「それがさ、ゼウスとガイヤ同様に私もゴルゴーンとの事をなんとか平和に解決できないかと思ってさ、それほどまでに梳李がテューポーンに見せた優しさは神々に何かを感じさせてしまったんだよ」ヘッカ
「会いに行くか?いまなら俺も強くなったし、体長100mもあるテューポーンを一応は倒したんだから、ギガースの大軍がいてもなんとかなるだろ」
「かるっ!梳李はいつも単純でいいよね」ヘッカ
「俺にはお前達のように、真理だの理だのと難しく考える事の方がわからないよ。思う事があるなら誠実に話し合えば良いし、まっすぐである方がいいぞ!日本でもさ、仕事場には裏に手を回して人事を画策する者や、権力者に取り入っては利益を貪る輩はたくさんいたけど、そういう者は最後は自滅するんだよ、嫌われても嫌がられても、自分を貫く事の方が結局は信頼を得て近道だった気がするよ。貫く自分というのが透明で無欲である必要があるけどな」
「うんうん、それはわかる気がする、それに神の私達は自分達の争いを棚の上にあげて、人間には美しく生きるように説いて来た、矛盾しているよね」ヘッカ
「そんなに落ち込む事はないんじゃないか?その争いそのものも、人々に法を説く為に必要だという観点だったのだから、それに神々が生命を慈しみ、星を守護してきた事も事実なのだから、何を悔いる必要がある」
「そうなんだけどさ、梳李の傍にいるともっといい方法があるのじゃないか、もっとアルカーヌムを駆使すれば、他にもできた事があったんじゃないかと考えさせられるんだよ」ヘッカ
「それなら終わった事やいままでの事は最善だったと結論しようよ、この先に進むために通る必要があった道という事でさ、その上でこれからをどうするか考えようか」
「そうだね確かにその方が早いね」ヘッカ
「ゴルゴーンが住処にしている星の場所はフェアリーが特定したんだろ?聞いた話ではとても小さく寂しい星らしいぞ、ヘッカが望むならここに呼んで来てもいいんじゃないか?」
「テューポーンがそうだったように、戦闘は避けられないと思う、問題はその後だよね、ギガースを全滅しなければ話をする土俵は作れないし、全滅させたら聞く耳を持たなくなる。どうしても矛盾するんだよ」ヘッカ
「俺がゴルゴーンを抱きしめてみようか?リュウグウノツカイの時もそうだったけど、触れると何か感じるんじゃないか?」
「確かに梳李に触れると温かい物が流れ込んで来るというか、心地よいというか、不思議な感じはあるけれど、私達は梳李の事が好きだと言う前提があるからさ」ヘッカ
「リュウグウノツカイは別に俺を好きとかなかったよ」
「それはアンデッドになった自分の為に涙を流した梳李を見て、その瞬間に好きになったんだよ、私も日本で亡くなった梳李の輝きに心を奪われたからわかるよ」ヘッカ
「そうなのか…それで俺の為にあんなに一生懸命に残念女神を演じたわけか…ほほう」
「残念いうなー!そ、それにあれは梳李に気に入られたくて全力でアピールしてたのに…泣いてもいいかなあ?」ヘッカ
「冗談だよ!ありがとうな」なでなで
「とりあえずゼウスにも相談してみるか?」
「梳李!その事じゃがな…」ゼウス
「聞いてたんかーい!」
「わしは全知全能じゃからな、ほっほっほっ!」ゼウス
「ところでその事じゃが、ガイヤとの和平交渉でゴルゴーンをペルセウスに討たせない事を約束していてな、アテナにも元の美しい女神の姿に戻してやって欲しいと頼んでいる所だ、ゴルゴーンの居場所はわしもわかっている、ガイヤも孫の事だから乗り気なんだよ」ゼウス
「広い神界も意外と狭いのな」
「ほっほっほっ!そうじゃな、ヘカテーのその話は少しわしに預けてくれないか」ゼウス
「俺はかまわないけど当事者じゃないからな…ヘッカはどうなんだ?ゼウスに異論を言えないという真理を少し横に置いて本音を言ってみろ」
「私もそれでいいよ、真正面から戦闘になる方がわかりあう事に時間がかかると思うから、私には親しく付き合う準備があると伝えてください」ヘッカ
「ゴルゴーンが少しこの星に干渉しやすいようにしてやったんじゃろ?それもわかっているよ」ゼウス
「ヘッカ!偉いなあ!」
「少しだけどね、もしかしたらこのやり取りも見ているかもしれないね」ヘッカ
「元々ゴルゴーンは女神の中でも特に美しいからの、ポセが心を奪われたのもわかる話じゃ」ゼウス
「そういう因縁も踏まえて上手くやってくれよ、俺は誰だろうとこの星を愛してくれるなら、美しい女神の姿でも怪物の姿でも受け入れる」
「ならばアテナに確認が取れ次第わしが行ってくるよ、もしゴルゴーンがこの星に住みたいと言ったらヘカテーの隣にでもギガースの街とゴルゴーンの神殿を作ってやって貰えるか」ゼウス
「私は許可する」ヘッカ
「そうだなヘカテーの東の川向うか、この前のテューポーンとの決戦のあった高原でもいいし、住みやすく最善の場所を整えような」
「それでは長い話し合いになるやもしれぬ、報告を待ってくれ」
こうして一旦はゼウスとガイヤは和平し、ヘカテーとゴルゴーンの友達付き合いもはじまるのだが、平和な時間は結局長く続かず、ヘカテーとゴルゴーンによる双方に対する説得も虚しく、後の第二次ギガントマキアが始まってしまうのである
豊かな資源と人々の幸福は宇宙の支配権を争う神々にはとても魅力があるようだ、無い者はある者を羨み嫉妬する、その原則は和平の約束程度では軽いらしい
ともあれゼウスはゴルゴーンの説得に成功し、アテナから許されたゴルゴーンはヴィーナスやフェアリー、ヘカテーと並ぶ絶世の女神としてこの星の住人となった
住まいはギガースが大きい為に、文明からは少し離れた場所にしようと言う事になり、東の大高原に街を作った。山からの川の流れを上手く利用して水場を作り、自給自足できるように土を肥やし、畜産場も建設した、水場には淡水の魚も生息し、魔物は入り込めないようにしておいた、ゴルゴーンの神殿はゼウスの神殿にも引けを取らないように建設し、お互いの隠し部屋には転移門を設置して交流をはかれるようにしておいた
「良かったなヘッカ…いきなり俺達と同じような付き合いはできないだろうけど、とりあえず街も神殿も気に入っているようだし、あれだけ環境を整えたらゼウスの顔も立つだろう」
「そうだね、とりあえず一段落したね、いつも梳李に頼ってばかりでごめんね」ヘッカ
「ヘッカ、俺達は夫婦なんだからこういう時はごめんねじゃなくて、ありがとうだよ」
「そっか!梳李♡ありがとうね」ヘッカ
「あとね今日は散歩と寝るのは私の番だよ♡」ヘッカ
「特訓の成果を試すとか言わないでいいからな」
特訓てなんやねん!
第102話に続く




