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第10話 セントラルへ行こう!


次の日作戦本部を出発した俺たちは、セントラルを目指していた。調査団の帰還組はアスコット達3人。そこに同行させてもらった。早馬を飛ばしても、6日間の道のりだった


野営初日は、キャンプのような野外生活を楽しもうと、持っていた魔物の皮でテントを作り、鉄板や鍋といった調理器具も作成した


ボアの肉は美味いという話を聞いたので、早速調理してみた。アイテムボックスには、ビッグボアの肉も、ストロングボアの肉もある。それは今度の楽しみだな!


転生して以来、食事も取らずに開拓作業をして、魔力が空になるまで働いて、魔力が空になったら、回復の為にだけ寝る。そんな日々の連続だった。調査団と合流するまでも、仮眠をとる程度で、ずーっと大森林をさまよっていた。アスコット達と旅をして、野営地に就寝場所を作る事で、転生してから、初めて食事をする習慣を思い出した。食べ物が無くても何日も平気で生きているのだから、ステータス完ストは万能だな


久しぶりの食事に喜びを隠せなかった梳李は、初日は、隠れてひっそりと色々と料理について研究した。スキルには新たに料理人が加わり、筋のとり方、野菜の切り方、料理の基本を習得した。魔法にはクッキングとシーズニングという、2つの魔法が追加された。クッキングは発酵させたり、鍋の中の圧力をあげたり、パン生地等の時間経過を促してくれたり…なんでも調理方法をイメージすれば、調理器具の中で完成してくれる便利な魔法だ。シーズニングは生成方法を理解している調味料なら、なんでも出せる魔法で、醤油でも味噌でも出せた。少しだけ残念なのは、大量に生成して保存する事は出来ず、調理中にだけ、行使が可能な魔法だった


雷風にも美味しい物を、たべさせてあげたいと思い、聞いてみると、干し草が良いらしく、時間経過と乾燥を使って干し草を作った


そうして出来あがった、ご飯は、ボア肉とキャベツのオムレツ、ふかふかロールパン、オニオンスープの3点。久しぶりに食べた食事は、涙が出るほど感動的だった


「美味い…美味いよー」


「梳李様!梳李様は料理がお上手ですね」


「料理人スキルの、おかげだと思うけど…委員長も味わえるの?」


「はい!梳李様が食べた物は、私も味わえるのですよ」


「雷風の干し草はどうだ?」


「主!最高です!」


「美味しいご飯…幸せだなぁ…あいつらは何を食べてるのだろうか?」


「彼女達は保存食の干し肉と固いパンに野草のスープですね」


「野草と雑草の違いがわからんな(汗)野営なんて、それが普通なのだろうけど…それでは楽しめないよな」


「明日からはアスコットにも食わせてやるか」


「また…目がハートになりますよ!」


2日目の野営地では…サンドイッチを作った。柔らかく焼いた食パンに、ボアカツを挟んで、オーロラソースをかけた、スペシャルサンドイッチだ!コンソメスープとセットにして、アスコット達にも食べさせた


「梳李さん!これはなんですか?凄く凄ーく!美味しいです!しかも野営地でこんな美味しい物が食べられるなんて…」


「サンドイッチって言うんだよ。色々研究したらできたよ」


「梳李さんは…なんでも出来るんですね」


「料理人スキルを持ってるからな!それより…アスコット…一生忘れませんって言ってた、夜空を眺めて星や月を見た時よりも、何倍も幸せな顔をしているな」


「そんな事…もぐもぐ、ありませんよ…もぐもぐ」


「いや…食べるか?しゃべるか?どっちかにしろよ!」


そんな大騒ぎの野営地体験だったが、残りの3日間は、作るのも少しめんどうになって、刻んだ野菜とボア肉の鉄板焼きで済ませたが、料理人スキルと、シーズニングのおかげで、とても美味しくて、みんなが喜んだ


野営最終日には、商人の馬車と一緒になり、せっかくなので、鉄板焼きを振る舞ったら、セントラルまで、同行して欲しいと頼まれた


「梳李さん!こちらの商会の方が、明日はご同行したいとおっしゃってるのですが…」


「俺の事は気にしなくていいよ」


「はじめましてオスカー商会の代表をしています。オリバー・オスカーと申します。快諾頂き感謝します」


「ケズリ・サメハダです。いえ…俺がセントラルまで案内してもらってる途中なので、アスコットさんが良いと言えば良いのですよ」


「ところで梳李殿…この食事…商人としては、興味深く…ひとつ聞いてもよろしいですか…」


「いいですよ」


「ボア肉はどうされたのですか…」


「ドロップアイテムですけど…」


「まだお持ちでしょうか?ボア肉は美味しく貴重な為、とても良い値段で流通されます。是非お取引をさせて頂けたらと…」


「たくさん使ったので、次に入手したらいいますよ」


「では、セントラルに到着したら、私どもの商会に、お立ち寄りください」


「何も無いのに、お邪魔するのは気が引けるので、ボアの肉が手に入ったら、伺いますよ」


商人も加わり移動最終日、馬車と荷馬車が増えた分、進行速度はかなりのんびりになったのだが、間もなくセントラルだ、5泊6日で移動するだけの旅…これはこれで楽しかったな


「主!前方に賊がいます」


「アスコット…前方で賊が待ち伏せしてるらしいが…心当たりあるか?」


「可能性としては…最近、よく暴れている盗賊でしょうか?かなり被害報告が出ています」


「数は20人か…」


「スキル索敵を覚えました!」


「私の警戒感知でも同様です」


「近いな…俺が先に行くから、お前達はここで待機!商人の安全はしっかり確保しろよ」


雷風は速度をあげた。馬車から顔を出した商人がアスコットに話しかける


「梳李殿はどうされたのかな…」


「馬車を止めてください…賊です」


「雷風…迎え打とう」


賊はぞろぞろとまとめて近づいて来た


「お前…面白い物を持っているそうじゃねぇか…この馬もなかなかいいじゃないか。素直に置いていけば命は助けてやるぞ!」


「主!この者に特大の雷を落として良いですか!」


「まてまてまてまて…気持ちはわかるが、生かして捕らえる方向でお願いします」


「わ、わかりました」


梳李は無言でオーバーロードを賊の首元に突き付けた


「誰に物を言っている。しかもお前の立っている場所は間合いの中だぞ」


「ひっ!ひぃー!」


しりもちをついて怯えているが…後ろから号令がかかる


「かまわねぇ!やっちまえ!」


「雷風!」


雷風の軽く放ったライジングだったが、賊20名は全員麻痺で行動不能。あっさり拘束した


「レストエイント」


「雷風!急いで戻れ!賊はまだいる!」


「梳李さん!大丈夫ですか?」


「レストエイント!」


「急にどうなされたのですか…私の部下とオリバー様まで…」


「すぐにわかると思うぞ」


捕まえた盗賊達と合流した


「おい!お前達の仲間はどいつだ」


アスコットの部下とオリバーを指して問う


「な、なんの事だかわからねぇよ!」


座らせた賊の右手を左手で持った


「少し痛いぞ!」


斬る


「ぎゃぁーーー!うぅー!」


「リプロダクション」


「あぁ…はぁ…はぁ…な、なんだ?今のは…腕を切られたと…」


「切ってから、つないだんだよ…誰が仲間か言え!次は首を切り離してみるか?心配しなくても、死の淵を見るくらいで戻してやるぞ!」


「ひぃー…わ、わかった話すよ…話すからやめてくれ…そこの騎士団の2人だよ…」


「もう一度聞くぞ…誰が仲間なんだ!」


オーバーロードを振りかぶった


「やめてください!オリバーに!オリバーに雇われたんだよ!そこの騎士の2人も同じだ。情報役と実行役だ!ほんとだ!」


「結局…俺とアスコット以外はグルか」


「荷馬車を襲わない事に、違和感があったんだよ」


商人の従業員も全員拘束した


「アスコット…これどうする?」


「セントラルに連れて帰って裁きを…」


「裁けるのか?騎士2人、有力者の商会長…このままセントラルに連れて行ったところで、アスコットと俺の狂言だと言われると、こちらの方が分が悪いのではないのか?」


「商会の従業員は無関係のやつもいるだろうが…結局は給料を貰わなきゃいけないから、オリバーに有利な証言をするだろうしな」


「梳李さんはどう思われますか」


「しっかり考えて、お前が決める事だ」


「しかし…どうすればいいのか…罪のない人を無差別に襲う賊はゆるせません!ですが…」


「アスコットはなぜ魔物を狩るのだ?」


「人を襲うからです」


「こいつらは」


「ですが…この者達は人です」


「俺が意見する事ではないが…食物連鎖の中にいる人間を、生きる為に襲う魔物と、私欲のために、無関係な人間を襲うこいつらと…どっちが醜いのか答えは簡単だと思うけどな」


「私の…私の馬を走らせます!手紙を持たせて…そして信頼のおける者をここに呼び出して、ここで取り調べをした上で連行します。どうか…もう少しお付き合いください!」


「わかったよ、アスコットが、それが最善と決めたのなら、最後まで付き合うよ」


「そうだ!別で頼みがある!アスコット!オリバー商会は恐らく取り壊しになって…国で財産を没収する事になるだろう…そしたらその、没収した商会の建物は、俺が買えるように手配してくれよ」


「そこまで重い刑罰が下るでしょうか?」


「多分な。オリバーが親玉で、常習性がある事と…襲ってきた手際の良さと…情報役、実行役、先導役、大した連携だ…かなり多くの人達を襲って、奪って、時には殺しや、売買もしてるんじゃないか?それでライバルの商会を潰した。なんてのもあるだろうな」


「なぜ、わかるのですか…」


「見えるだろ…この整えた身だしなみの、奥深くに眠る、悪魔のような、どす黒い感情が…状況も人物も、それを物語っている」


「何にしても俺はアスコットに従うよ」


アスコットに拘束した者を監視している。雷風の背中に寝て雲をながめていた


「拘束魔法レストエイントを覚えました」


「再生魔法リプロダクションを覚えました」


「回復魔法ヒールを覚えました」


「スキル威圧を覚えました」


「スキル脅迫を覚えました」


「雷風は美しいな…私欲がない」


「我の欲求は主と出会った事で満たされております!」


「委員長…この世界に悪魔はいるのか?」


「居るようになったのかもしれません…確かに梳李様がいうように、あの商会長にはどす黒いなにかを感じます」


騎士団が現れるのを待つ間、転生してきた事を少しだけ後悔した。寿命が伸びた事で、見たくないものを見なければならないのなら、あのまま終わって良かったのでは無いかと…



第11話に続く


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