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05.早朝から巨大獣襲来?

 ベッドは家の主人であるブレンダに使ってもらった。当然の権利だし、そもそも彼女にソファーは狭いと思う。普通に動物園の熊と同じサイズだから。寝返り打ったら落ちるよね。


 アイカはソファーでも問題なかった。以前読んだ小説の主人公みたいに、子ども姿になったわけじゃない。単純に、ソファーが大きかったのだ。考えてみたら当然かもしれない。熊のブレンダが使うんだよ? 人間サイズじゃ絶対に真ん中で折れるし、座ったらハマって立てなくなりそう。


 ソファーベッドと呼んでも差し支えない、幅広の大きめソファーでゆったり寝た。寝返りも打てたし、落ちることもない。愛猫達がそれぞれに場所を見つけて、あちことへ潜り込んだ。やや臆病なノワールはキャリーケースの中、ブランはアイカの頭の左側、ボスのオレンジは胸に香箱座りだった。


 息苦しいけど、アイカにとってはいつものこと。ここで怒る人は猫との生活に向いていないよね。起きて毛布を畳みながら、大きな欠伸をする。そこへノックの音が響いた。


 この家は平屋造りだが、意外にも広い。アイカ自身が子どもになったように、周囲がすべて大きかった。巨人の家って感じかな。そんな家の作りは、立派な玄関がある。ここが土間になっており、汚れた足を拭いたり収穫した野菜や捕らえた獲物を処理するらしい。


 玄関の正面にある扉を開くと、このリビングになる。ソファーや暖炉、ふかふかのラグが敷かれた木の床があった。壁の抽象画はピカソみたいで、意味不明だけど。なんであれがいいんだろう。アイカは首を傾げながら、玄関へ繋がる扉を少し開く。


「誰も、いない?」


「お邪魔するよ」


 あらよっと私を跨いだのは、大きな獣だった。蹴られなくて良かった、じゃなくて!


「ど、どちらさん?」


「ああ、君がトム爺さんの言ってた別世界の落下物か」


 落下物……間違っていないのに、非常に不愉快な呼び方だ。アイカの眉間に皺が寄る。それを察したように、愛猫達が威嚇を始めた。飼い主に忠実ないい子ばかりだ。ノアールだけは、すっごい遠くで膨らんでるけど。あの子は臆病だからね。


「うわぁ、本物の猫じゃないか! すげぇ! 感動した」


 どっかの政治家みたいな口調で、大袈裟に騒ぐ。私を跨いだ巨大獣は、馬? サラブレッドみたいにほっそい脚の、馬……いや、鹿かも。


 確かカナダだっけ、北米の方にでっかい鹿いたよね。遠近感バグった感じの……あれに似ている。名前が出てこないけど。


 猫達が本気で毛を逆立てても、可愛い可愛いと楽しそうだ。それはいいが、手を伸ばすと猫が怯えるから。アイカは愛猫のために止めに入った。それ以上近づくと、本気の猫パンチが飛んでくる。


「あの……猫が怯えるんで、一度下がってもらっていい?」


「身長差とか? 本物の猫って小さいよね、見られてよかった」


 にこにこと悪びれない様子から、ブレンダの知り合いだろうと位置付けた。さっきもトム爺さんの話をしていた。彼は狼だったはず。肉食系と草食系でも、友情って成り立つんだろうか。どこかの絵本の題材になりそう。


「ああ゛? うるさいね、こんな朝早くから誰だい!」


 リビング奥の扉を開けて、どかどかとブレンダが現れる。今日はエプロン姿なんだ。というか、服着るの? 首を傾げるアイカをよそに、ブレンダはかっと目を見開いた。


「カーティス? あんた、戻ってたんかい」


 この巨大鹿はカーティス、大変に失礼な雄、とレッテルを貼ってアイカは記憶した。

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