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獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言うが……生まれたその日にダンジョンに落とされました。


 だんだん意識が覚醒していく。

 目を開けると見知らぬ少女が俺の顔を覗き込んでいた。


 ……えーと、誰?


「目が覚めたか、(わが)(しもべ)よ。おまえは今日から我配下に加わり(われ)を大陸の覇者とすべく……」


 ……ちょっと目の前の少女が何を言っているのか分からない。後半部分は聞き流した。この子、頭の痛い子なのかとも思ったが、そうではないらしい。


 気持ち悪い感覚と共に頭の中にこの世界の情報が流れ込んでくる。何この機能?と思ったが知識は必要だ。おかげで助かった。少しだがこの世界の事がわかった。


 ここは剣と魔法のファンタジー溢れる世界だ。どうやら俺は異世界転生を果たしたらしい。

 先程までなぜ忘れていたのかと思うほど今は地球の日本で過ごした時の記憶がある。

 向こうの世界で死んだ記憶がないので転生までに至る経緯はわからないが、この世界で生きていくしかないというのはなんとなくわかった。


 となれば、まずは情報収集を……っと、その前に何か忘れている気が……


「……おいっ、聞いておるのか! と、とにかくおまえは高貴な魔族である(われ)が生み出した魔物第一号なのだからな?死ぬまで我のために働くのだぞ、良いな?」


 そう言えば、こいつがいたんだった。

 こいつの発言を信じるなら、こいつは魔族で俺はこの魔族の少女から生まれたらしい。


「ということは、あんたは俺の母親って事で合ってるか?」

「あんたではない、我の名は『ナツミ』じゃ。ナッツと呼ぶが良い」


 ……呼ばんけど。


「……で、まぁそうだな。母親という事になるのか?というより上司と部下の関係といったほうが正しいのか……うーむ。そうだ!おまえに名をつけてやろう。おまえは今日から『一平(いっぺい)』と名乗るが良い。というか、おまえ、なんか変なやつだな」


 意外とまともな名前だった。死ぬまで働けとかブラック臭を感じたが、案外、母性と言うか我が子に対する愛情の様な物があるのかもしれない。


「おまえではない、『一平(いっぺい)』だ。それから、変って何だっ!俺は魔物第一号なんだろっ?他に比較対象がいないんじゃ変かどうかわからない……だろ」


 そう言いながら横を向くと、骸骨と目が合った。


「そいつらは、『二平(にへい)』『三平(さんぺい)』『四平(しんぺい)』『五平(ごへい)』じゃ。」


 ……って、名前適当過ぎんだろっ!!


「よ、よろしくなっ!」


 とりあえず挨拶してみた。こいつらは俺の弟って事で良いんだよな?


「……ギィ」

「……ギギ」

「……ギィギィ」

「……ギギィ」


 弟達、返事返してくれたけど……えっ?魔物ってまともに喋れんの?

 だとしたら、俺が変なのか。まぁ、あまり深く考えるのはやめておこう。

 それと、俺だけ骸骨じゃないのな。緑の肌からしてゴブリン種かなんかか。


「では、その箱から武器を選んだ者からこの円の中に入るが良い」


 さっそく戦闘訓練とか……スパルタと思いがちだが、こういう剣と魔法の世界ではあるし。魔物とは戦うために生み出される者だというし。きっと、少しでも戦闘技術を身に着けて生きて帰ってきてほしいという母親の愛なのだろう。


 骸骨たちは粗末な武器の入った箱から剣を手に取り、俺だけ弓を選んで円の中に入る。

 平和な日本で暮らした記憶のある俺としては、安全な遠距離から攻撃できる武器を選ぶのは仕方ないと思う。


「皆、円の中に入ったな。今からお前達にはダンジョンに入り魔石集めをしてもらう。良いか、魔石を手に入れるまで戻ることは許さんぞっ!では、行け!」


 そう言い終わった直後、足元の床にぱっくりと穴が開き俺たちは暗闇の中に落ちて行った。


 ……えっ!?訓練じゃねぇの。いきなりダンジョンとか、むりむりむりむり。



「やっぱり、ブラックじゃねぇかよぉおおおおおおおっ!!!」




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