257. 第二側室(2)
熱がありました為、本日は大変な手抜きです。すみません。
(※現在は既に回復しております。多分睡眠時に冷房効かせ過ぎたのが原因)
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ユリシスの都市にある『探索者ギルド』の施設。
案内してくれた男性と別れた後に、1階の受付窓口でユリ陛下の『第二側室』の女性と会う約束をしている旨を伝えると。すぐにメルファルーデは、ギルド職員に案内され、8階にある『ギルドマスター』の部屋へと通された。
「―――メルファルーデさんですね、お話は伺っております。
私はソフィア・テオドール。ご主人様の『第二側室』であり、このユリシスの都市の管理と運営を任されております。よろしくお願い致します」
「あ、はい……。こちらこそ、よろしくお願いします」
その部屋の中で待っていた青いドレスの少女から、先手を打って深々と頭を下げられてしまい、慌ててメルファルーデもまた頭を下げる。
何と言うか―――ひと目見ただけで『貴族』だと判る少女だった。
まだ幼さが残る容貌をしており、おそらく歳は30にも満たないだろうけれど。ソフィアと名乗った、この女性の所作は洗練され過ぎていて、一分の隙も無い。
昨日会ったエシュトアも、かなり若い女性だったけれど―――ユリ陛下は、幼い女性を手籠めにするのが好きな方なのだろうか。
だとするなら、500歳を超えてしまっているメルファルーデには、ユリ陛下もあまり興味を抱かなさそうに思えた。
「ふふ、なるほど……。これはまた、ご主人様の好きそうな女性ですね」
「………? 私が、ですか?」
そんな心裡を見透かすように告げた、ソフィアの言葉に。
少なからず驚かされながら、メルファルーデはそう問い返す。
「はい、あの方は女性なら誰でもこよなく愛される方ではありますが。一応多少の好みのようなものはありまして―――聡い女性が好きなお方なのです」
「聡い? 学者とか、そういう人が好みってこと?」
「いいえ。知識が豊富という意味では無く、知恵が回る女性が好みなのです。常に頭の回転を絶やさず、思慮を放棄しない人が好きなわけですね」
「……私はそんな、立派なものではないわよ?」
「ふふ、それは嘘ですね。メルファルーデさんの視線は私の外見から始まり、身に付けている衣服、椅子に座ったりお辞儀をする所作に至るまで―――様々なものを素速く確認しておられました。浅慮な人間がする視線ではありませんね」
そう回答して、ソフィアはくすりと笑ってみせた。
自身が向けていた視線の全てが監視されていた事実に、思わずメルファルーデはぞっとする。他者が向ける視線の先を読み取るというのは、熟練の斥候でも容易に行えることではない。
(ユリ陛下程ではないにしても、『側室』の人達も侮れない……!)
今更ながらに、メルファルーデは内心で強くそう思う。
昨日会ったエシュトアにしても、いま目の前に居るソフィアにしても、容貌こそ上品な女性にしか見えないのに、まるで底が知れなかった。
「メルファルーデさん」
「ひ、ひゃいっ」
思わず、返答する声が裏返ってしまった。
そんなメルファルーデの反応に、ソフィアはどこか楽しげに微笑む。
「あなたにお渡ししたいものがあります。これを受け取って頂けますか?」
そう告げながら、ソフィアはひとつの指輪をテーブルの上に置いた。
それは何の変哲もない銀色の指輪だった。宝石が付いているわけでもなければ、装飾が施されているわけでもない、至ってシンプルな指輪だ。
「……これは?」
「探索者ギルドに登録した全員に与えられる『探索者の指輪』という装身具です。面倒かと思いまして、勝手ながらメルファルーデさんのギルド登録手続きは、私の方で済ませておきましたので。登録証代わりに指輪だけ、どうぞお持ち下さい」
「この指輪……魔力があるようだけれど?」
多少なりにも精霊魔法の心得があるメルファルーデは、その指輪に少量の魔力が籠められていることを、鋭敏に察知する。
そのことを問うと、ソフィアはすぐに首肯してみせた。
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