214. 総括と展望(中)
地図の件について多数のメッセージをお寄せ下さり、ありがとうございました!
有難くこれからメッセージを拝読させて頂き、返信させて頂きます。
(これ以上メッセージを頂戴しても申し訳ないので、昨日投稿分の「後書き」は削除させて頂きます。重ねて、ありがとうございました)
「休暇が明けた後に、『桔梗』の皆にやって欲しいことが2つあるわ。
1つは以前に、百合帝国が防衛戦を手伝った時の謝礼として、レイピア王国から海沿いに『百合帝国の都市を1つ建造する権利』を貰っているので、その権利の行使先を―――つまり、海洋都市の建造を考えてみて欲しいのよ」
「海沿いの都市、ですか? もちろん異存はありませんが……海産物は『蓬莱』の湖で採れるようになりましたから、重要性が少し下がったような気はしますね」
「いいえ、そんなことは無いでしょう」
メテオラの言葉を受けて、ユリは頭を振る。
「『蓬莱』の都市内外にある塩水湖は、スサノオを始めとした海神達が作ってくれた場所なので、彼らが知る海の生物しか生息していないのよ。
―――つまり、あの都市で採れるのは『リーンガルド』の海産物だけなの。
この世界ならではの海産物を得る為には、やっぱりこの世界に元から在る海で、漁を行う必要があるわ」
「なるほど……。レイピア王国に造る都市が、その漁業の拠点となるわけですね。そして採れる海産物が全く異なるから、あまり『蓬莱』と競合もしない」
「理解が早くて助かるわ」
百合帝国の領土は随分広いものになったけれど、それでもまだメキア大陸の外洋に接している土地は無い。
だからレイピア王国の海沿いに新しい都市を造れば、そこが現状では唯一、この世界の海産物を得られる拠点となる。その重要性は語るまでもないだろう。
しかもレイピア王国の海沿いに造らせて貰う都市の位置は、百合帝国側で自由に決定できることになっており、更には周辺の土地も百合帝国に幾らか割譲して貰える話になっている。
また、この世界では『海』は国家に帰属しない場所らしいから。船着き場のある拠点さえ用意できれば、漁自体は自国沿岸や外洋だけに限らず、他国の海沿いでも問題無く行うことが可能なのだ。
「都市の建造位置は『桔梗』に選定を任せるわ。土地の調査に関しては諜報能力に長ける『撫子』に助力を求めるのも良いでしょう。
―――パルティータ、協力してあげて頂戴ね」
「もちろんです、ご主人様」
ユリの言葉を受けて『撫子』隊長のパルティータが深々と頭を下げた。
「承知致しました。差し当たり、頂いた『休暇』の最中にでも、何度か現地を視察してみたいと思います。レイピア王国の海岸付近を騎獣に乗って飛行しようと思いますが、大丈夫でしょうか?」
「レイヴン王には『都市建造予定地の調査・選定のために、百合帝国の者が現地を飛行視察すると思う』という旨を既に話してあるから、大丈夫でしょう。一応念のために、この後にもう一度レイヴン王へ手紙で連絡もしておくわ」
「ありがとうございます、姐様!」
『桔梗』の子達は『巌魔鳥』という巨鳥を騎獣にしているのだけれど。この魔物は巨鳥に区別されるだけのことはあって体躯が大変に大きく、遠目からでもその存在が非常に判りやすい。
『竜』程ではないにしても、見る者に強い威圧感を与える風貌をしているので、この魔物が国土を何体も飛行している姿を見れば、レイピア王国の住民達は都市がいつ襲われるかと、強い不安を抱くことだろう。
だから『巌魔鳥』が敵性の魔物で無いということを、事前に通達しておく必要がある。
レイヴン王へ事前に連絡しておくのは当然ながら。それだけでなく、『放送』も利用してレイピア王国の人達へ直接周知しておく方が良さそうだ。
「それで、姐様。私達にさせたいもう1つのこととは、何でしょう?」
「ああ、そちらはちょっと面倒なことで申し訳無いのだけれどね……。国に属する工作部隊を新たに1つ造ろうと思うから、その指導を頼みたいのよ」
「え……? わ、私達とは別にですか!! な、何か、私達にご不満が!?」
ユリの話を聞いたメテオラが、忽ち酷く狼狽した様子をみせる。
おそらく『新しく工作部隊を組織する』ということから想像し、既存の工作部隊である『桔梗をお払い箱にする』という結論に至ったのだろう。
やや早合点しがちな所があるのは、メテオラの短所だと言えるだろう。
―――まあ、そういう部分も含め、ユリには可愛らしく思えてならないのだが。
「違うわメテオラ。私は『桔梗』の働きには常に満足している。でも―――だからこそ『桔梗』の皆に、つまらない仕事を延々と押しつけたくはないのよ」
「……つまらない仕事、ですか?」
「例えば、私は予てより百合帝国の国内にある全ての既存都市にも『上下水道』を敷設したいと思っているのだけれど。この作業を『桔梗』にやらせるのは、流石に勿体ないと思うのよね」
先に『上下水道』を用意した場所に都市を新造するのとは異なり、既にある都市に後から『上下水道』を追加するとなれば、当然その作業にはかなりの手間と時間が掛かってしまう。
『桔梗』に任せるのであれば、むしろ既存都市のすぐ近くに新規の都市を作り、住民を移住させた後に既存都市を処分する方が手っ取り早い―――のだけれど。
それをやってしまうと、『桔梗』の子達は新しく作った都市にユリの名を冠したがるところがあるので、いずれは国内にある全ての都市が『ユリ』から始まる名前の都市ばかりになりかねない。
『百合帝国』の中にはそれを喜ぶ子もいそうな気がするけれど。
正直……ユリとしては、少々勘弁して欲しいという気持ちが強い。自分の名前の都市ばかりというのは単純にちょっと嫌でもあるし、何より判別がしづら過ぎる。
なので、出来れば既存都市には、そのままの形で改善だけを加えたかった。
「幸いと言うべきか、ヴォルミシア帝国から『蓬莱』へ連れてきた兵士達の中に、元々『工作兵』に所属していたという者が600余名ほど居たのよ。
折角だから、この600余名を百合帝国にて改めて『工作兵』として雇用して、既存都市の改善はその者達にやらせようと考えているのよね」
「なるほど……。良きお考えだと思います、姐様」
「『桔梗』にはその者達が、既存都市に問題無く『上下水道』を追加できる程度の技術を、指導して上げて欲しいのよ。―――出来るかしら?」
ユリがそう問いかけると。メテオラは暫くの間、思案顔を続けた後に。
やがて、少し困ったような顔をしながら「そうですね……」と語り始めた。
「申し訳ありませんが、こればかりは正直、実際にやってみないことには判りかねます。私達には『人に教える』という経験が、不足していますので」
「では、一度挑戦してみて貰っても構わないかしら? 失敗したらそれはそれで、全く構わないから」
「それを姐様が望まれますなら、喜んで」
「ありがとう、メテオラ。一応『レイピア王国の海沿いに新しい都市の建造』する件と、『新しく組織した工作部隊への指導』の件。休暇が明けた後に、あなた達がどちらの件から先に着手するかは任せるから」
「承知致しました。後で部下達と話し合おうと思います」
「ええ、そうして頂戴」
『桔梗』の子達に関しては、これで良いだろう。
今年は少々『桔梗』の子達を酷使しすぎてしまったことを、ユリは内心で少なからず後悔していた。過去の経験から会社員の苦労は理解しているのだから、もっとホワイトな職場を目指すべきだろう。
できれば今年は『桔梗』の子達を大事に扱い、労ってあげたい。
「では次に―――『紅薔薇』、『黄薔薇』、『青薔薇』の子達にも、私からひとつ頼みたいことがあるわ」
「はい、姫。何なりと命じて下さい」
「ユリ様! 我々『黄薔薇』に何でもお任せ下さい!」
「どのようなことでも、お力にならせて頂きます」
ユリの言葉を受け、『紅薔薇』隊長のプリムラと『黄薔薇』隊長のヘンルーダ、『青薔薇』隊長のミザールが、それぞれに応じる。
その言葉を頼もしく想いながら、ユリは彼女達に助力を要請した。
「あなた達に―――可能であれば『交易路の敷設』を任せたいと思うのだけれど、どうかしら?」
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お読み下さりありがとうございました。




