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百合帝国  作者: 旅籠文楽
1章 -

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197/370

195. 電撃戦

 


     [3]



 百合帝国は既に、メキア大陸の詳細な地図を有している。

 これは〈地図把握〉という自動地図記録(オートマッピング)スキルを持つ『撫子(なでしこ)』の子達が、聖狼(フェンリル)の騎獣に乗り、大陸中を飛び回ることで作成してくれたものだ。

 スキルを元に製作された地図なので、作りも非常に精緻で。ルベッタとアドスの2人が初めてこの地図を目にした時には、驚きのあまり暫く茫然自失になった程の高い完成度を誇る逸品だ。


 この地図によると、ヴォルミシア帝国には都市が全部で『16』ある。

 但し『撫子』が密偵活動で入手した情報によると、その数は現在『12』にまで減っているようだ。

 ―――言うまでもなく、その原因は『泥土狼』にある。

 『泥土狼』は跳躍力が低いため、防壁を越えてくることは殆ど無いのだけれど。戦闘能力がレベルの割にかなり高い水準にあるため、耐久力が充分で無い防壁なら体当たりで破壊出来てしまう。

 そのせいで4つの都市が魔物達に侵入され、陥落してしまったようだ。


 国土内には村落も『44』存在していたが、こちらも全て失われている。

 殆どの村落は防壁を持たないか、あったとしても木の杭を並べて立てた程度のものでしかない。その程度の防備で『泥土狼』を防ぎきれるわけもなく、村落に居住していた人達が迎えた末路は、もはや言うまでもないことだった。


 沢山の命が無駄に散らされたかと思うと、ユリは残念な気持ちになる。

 新しい都市を連続建造し続けている百合帝国では、人的資源が常に不足した状態にある。彼らが自身の国に居てくれたなら、貴重な労働力としてきっちり守護してあげることも出来ただろうに。


 ユリは『百合帝国』の子達の大半を率いて空を飛行し、ヴォルミシア帝国の国土にある12の都市へ侵攻を開始する。

 都市を制圧するなら、ヴォルミシア帝国が百合帝国の悪評を民に流布してしまう前の方が望ましい。『泥土狼』が居るせいで先方は帝都から容易には出られない筈なので、今のうちに周辺都市から占領してしまおうというわけだ。


 侵攻の手順は、以前に要衝都市ニルデアを陥落させた時と殆ど変わらない。

 まずは騎獣や召喚獣に乗ったまま、空から都市を俯瞰して【空間把握】の魔法を行使し、その都市の全体を効果範囲内に収める。

 発動した【空間把握】の効果により都市内のあらゆる情報を掌握できたら、都市に住む全ての人達と『(リンク)』を確立して、念話を実行。

 これから侵攻戦を行うことを宣言した上で、攻撃対象がヴォルミシア帝国の軍に所属する騎士や兵士のみであること、一般市民に危害を加えるつもりは無いので、家屋内などに避難しておいて欲しいことなどを市民に通達した。


 都市に居る全ての人達にマーキングを行い、一般市民は『白』、騎士は『赤』、兵士の人達は『緑』で印を付けて、その情報を『百合帝国』の子達に共有。

 あとは侵攻を命じて待機していれば、10分と掛からない内に片が付いた。


 都市を護る騎士や兵士は、あまり戦意も高く無かったようだ。

 それはユリ達が騎乗している多数の竜を目の当たりにして、戦意を喪失した人が多く居たというのもあるだろうし、あるいは兵士の中にも空腹に苦しんでいる者達が少なくなかったというのもあるだろう。


 騎士は相応の地位を持つ責任者なので、全員の命を奪ったけれど。兵士は携行している武器を破壊するなどした上で投降を呼びかけ、その大半を捕縛する。

 人的資源が不足している今、無駄に散らす命は最小限に留めたい。兵士の大半は男性なので『黒百合』の子達による調教は行えないが、家族と共に『神域都市』へ移住させることで活用しようと思っている。

 『神域都市』は多数の力有る神々が暮らす土地だ。ヴォルミシア帝国の元兵士達を多数住まわせたとしても、彼の都市なら治安が乱されることも無いだろう。


 占領を終えた後は『紅梅』の子達にお願いして、【障壁結界】と【調温結界】の2つを展開して貰う。また同時進行で『桔梗』の子達に頼んで、都市中央の広場に仮設店舗を6軒建てて貰い、またユリ自身も作業を行って広場の中に『転移門』を作成する。

 およそ10分の作業時間を経て『転移門』が開通した後は、それを利用して予めユリシスの都市に待機させておいたロスティネ商会やトルマーク商会、ヘイズ商会やテオドール商会に所属する従業員の人達を連れてくる。

 『撫子』の子達に〈侍女の鞄〉から充分な量の食料を出して貰い、これを各商会の人達に分配。早くも『桔梗』が完成させた6軒の仮設店舗へそれぞれ運び込み、すぐに営業開始の準備を行わせた。


 結界を張り終えた『紅梅』の子達が戻って来た後に、ユリは再び念話を実行。

 この都市が百合帝国の支配下に置かれたことや、魔物の侵入を防ぐものと都市内の気温を常に快適に保つもの、2つの結界を都市に展開したことを市民に通達。

 更にこれから、都市中央の広場で一般的な価格(・・・・・・)で食料の販売を行う旨も通達すると、都市内の各所から歓喜の声が上がった。


 『撫子』を3名と、戦闘部隊の従者を20名ほど都市に残して。後のことはその子達と各商会の人達に任せる。

 『撫子』が商品を適宜補充しつつ、商売に手慣れている商会が6軒の仮設店舗で市民に向けて販売すれば、食料は充分に行き渡ることだろう。

 戦闘部隊の従者の子達には、食料を求めるあまりに市民が暴動を起こさないよう広場の警備を行わせる。また、もし必要以上に食料を買い占めようとする者が出た場合には、独自裁量でその処断も行わせる手筈になっている。


 ユリ達は再び騎獣に乗り込み、速やかに別の都市へと移動。

 ヴォルミシア帝国の都市をテンポよく、次々と自国に塗り替えていく。


 騎獣で空を飛んで移動できるユリ達は『泥土狼』の影響を全く受けないものの、一方でヴォルミシア帝国の軍隊は、出陣すれば間違いなく魔物の攻撃対象となる。

 なので敵国だけが全く軍事活動を行えないというのが、非常に都合が良かった。

 一度制圧した都市を取り返される可能性がゼロなので、防備兵もあまり置かず、駆け足気味に占領していっても何ひとつ問題が起きることも無い。


 その結果―――朝から陽が落ちるまでの時間を掛けて。

 僅か1日で百合帝国は『12』ある都市の内、帝都を除く『11』を占領した。



 

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お読み下さりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] Civとかで時々やるやつ
[一言] 仮に何の制限もなく相手が軍隊派兵しようが、ユリ印の結界を破れるはずもないので泥土狼いてもいなくても関係なさそう
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