137. 3国君主と商人の会合(3)
ブレーカーが落ちて結構な記述量が飛びまして、やる気が減退しましたため今日の投稿量は少ないです。ごめんなさい。
その結果、今回で纏めるつもりでしたが終わりませんでした。
明日も似たようなのをもう1話やります……。すみません。
「ユリ陛下、質問をよろしいでしょうか」
挙手してそう告げたのは『ロスティネ商会』の会頭であるルベッタだ。
ユリは即座に頷き、ルベッタに「どうぞ」と声を掛けた。
「話を聞く限りですと、新都市ユリーカの坑道迷宮地には『鉱床』を利用できるという大きなメリットが有り、探索者達は容易に金を稼ぐことができるようですが。既存のユリシスの迷宮地とは、どのように差別化を図るのでしょうか?」
「ああ、ルベッタ。それはとても良い質問ね。そうね……色々とメリットばかりを語ってしまったけれど、ユリーカに造る坑道迷宮地は、ユリシスの迷宮地に較べて劣る点や問題点も多いのよ。
まず第一に、商人の方々は知っているかもしれないけれど、鉱石の中には毒性を有するものが幾つかあってね。レベルが低い探索者―――少なくともレベルが20よりも低い探索者が触れると、健康を毀損する可能性がある。
だからユリーカの坑道迷宮地は、最も難易度が低い『浅層』でも、推奨レベルが『30以上』になっているわ。だから初心者は必ず、まずユリシスの方の迷宮地で経験を積み、身体を鍛えて貰うことになるわね」
ダカートの住人を移住させる予定なので、ユリーカの都市は最初からある程度の人口が見込めるけれど。それでもユリーカの都市内に、ちゃんとした武具店などが幾つも商われ始めるには、多少の時間が掛かることだろう。
現状ではユリシスの都市の方が、武具店や道具店などが幾つもあって探索者には利便性が高いこともあり、まずはあちらの都市で慣れて貰うことが必要だ。
「第二に、ユリーカの坑道迷宮地に配置される魔物は、『コボルト』と『妖精』、『精霊』と『魔法生物』、そして『アンデッド』だけに限られるわ。
これらの魔物は討伐しても、ユリシスの迷宮地に出現する魔物のように『肉』や『皮革』、『鱗』や『骨』などの素材を残してはくれないの。まあ、魔石や宝石を落とすことがあるから、一概にドロップが不味いとも言えないけれど……。武器や防具の材料としての利用が殆どできないという点では、デメリットも多いわ」
「なるほど……。肉を落とさないというのは少し困りますね。折角公国でも屋台が大変な賑わいを見せているというのに、その供給量が減るのは困ります」
「探索者の中には、肉を買い取る業者や商会と懇意にしている者も多いでしょう。そういう人達は多分、今後もユリシスの迷宮地を主に利用するのではないかしら」
もしユリシスの迷宮地に潜る人が減少して、素材の供給量が減少した場合には。商会などから『探索者ギルド』の掲示板に、肉や皮革などの確保を要請する依頼が貼り出されることになるだろう。
探索者は基本的に、自分の収入の為に『狩り』を行うわけだけれど。それが誰か他の人の為にもなるなら、率先して依頼の達成を目指す人も少なくない筈だ。
「第三に、ユリーカの坑道迷宮地には『宝箱』が配置されていないわ。生命霊薬や魔力霊薬が一切手に入らなくなるのはもちろん、宝箱から武器や防具が得られることも無くなるから、それを『大きな魅力減』だと捉える人も多いでしょうね。
一方でユリーカの坑道迷宮地には『鉱床』があり、きっちり30分毎に採掘を行うことで、現金収入自体は確保し易いというメリットもある。どちらを良いと思うかは結構好みが別れそうだから、個人的には利用者は『ユリシス6:ユリーカ4』ぐらいで分かれるのでは無いかと思うのよね」
「えっ。ユリシスを選ぶ者が多いと思われるのは、どうしてなのでしょう?」
ユリの言葉を受け、ソフィアが驚いたようにそう口にしてみせた。
口振りから察するに、彼女はユリシスよりもユリーカの都市の方が賑わうと、そう考えていたのだろうか。
「一番の理由は『肉』ね。探索者の中には、その日『迷宮地』で討伐した魔物から得られた肉などの食材を、妻にお土産として持ち帰ったり、あるいは自分で料理の材料として利用している人も多いと聞いているから。
そういう人達にとっては、鉱石や現金収入ばかりしか得られないユリーカの坑道迷宮地は、少し物足りなく感じるのではないかしら」
「確かに……有り得そうですね」
「ま、それはそれとして。最初の1ヶ月ぐらいはどうしても、ユリーカの坑道迷宮地の方が賑わうでしょうけれどね。みんな目新しいものが好きだから」
最初の1ヶ月だけに限れば、それこそ『ユリシス2:ユリーカ8』ぐらいの割合で、利用する探索者は偏るのではないだろうか。
これは仕方の無いことだと思うしかない。新しく用意されたもののほうが、人は魅力を感じやすい生き物なのだ。
「ルベッタ、これで回答になったかしら」
「はい、とても良く判りました。ありがとうございます」
「結構。ではここからは、また私の方から話をさせて貰おうと思うのだけれど。
先程も申し上げた通り、ユリーカの坑道迷宮地は探索者が多額の『現金収入』を得られやすい場所になるわ。だから―――これを期に百合帝国では、国内に流通している『貨幣』を刷新しようと考えているわ」
ルベッタとオーレンス、アドスとエリン夫妻の商人4人が、即座に目を見開く。
一瞬だけ遅れて、アルトリウスとカダインの国主2人もまた、大きく驚きを露わにした表情を浮かべてみせた。
「それはつまり、王国の貨幣鋳造施設が確保できたから『Beth貨幣』を百合帝国に準じた意匠の物に造り替える、ということでしょうか?」
アドスが問い返したその言葉に、ユリは頭を振る。
「―――いいえ。どうやら先程の私の言い方だと、少し語弊があったようだから、改めて言い直させて貰うわね。私は現在の百合帝国に流通している『Beth』という通貨を今年の末までに廃止することを前提として、新たに『gita』という魔法貨幣を流通させるつもりで居るわ」
「魔法貨幣、ですか……。それは一体、どのような?」
「そうね、現物を見て貰ったほうが早いでしょう」
ユリは〈インベントリ〉の中から『アトロス・オンライン』のゲーム内で使われていた『gita貨幣』の各種を取り出し、それを【物質転移】の魔法で全員のテーブルの上に送る。
その貨幣を目の当たりにして、まずアドスが感嘆の溜息を漏らした。
芸術品などを扱う『トルマーク商会』会頭のアドスからすれば、精緻な意匠が彫り込まれた美しい『gita貨幣』には、充分な芸術性が認められたのだろう。
「皆のテーブルに送った貨幣のうち、左側にあるものから順に額面が『1ギータ』、『5ギータ』、『10ギータ』、『50ギータ』―――と増えていき、最も右側にあるものが最高額面の『100000ギータ』貨幣ね。
ちなみに1から50ギータまでの4種が『銀貨』で、100から5000ギータまでの4種が『金貨』、10000ギータよりも上の3種が『白金貨』になるわ」




