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百合帝国  作者: 旅籠文楽
1章 -

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136. 3国君主と商人の会合(2)

※本話は過去の記述内容との矛盾点が指摘されているため、あとで内容を修正する場合があります。申し訳ありませんが、何卒ご容赦ください。(指摘くださりました方、ありがとうございます)

 



「ユリーカの坑道『迷宮地(ダンジョン)』に挑戦する探索者には2つのアイテムを貸与するわ。ひとつは『坑夫の片眼鏡(モノクル)』というもので、これは鉱床の岩盤に埋まっている有価値な鉱石を透視して、判別する能力が備わっている。もうひとつは『魔衝ピッケル』というもので、これを用いると採掘の経験が全く無い素人にでも、岩盤を容易に掘ることができるの。

 これによりユリーカの『迷宮地』では、未経験の者でも鉱床から鉱石を『採掘』することが可能となっているわ。銅や鉄のような有り触れた金属鉱石はもちろん、貴金属の鉱石も採れるから、探索者にとっては良い副収入になるでしょうね。

 但し、貸与する魔衝ピッケルは大体30分に1回ぐらいしか使用できないから、これだけを用いて採掘だけを行うのは難しいでしょう。通常のピッケルを別途持ち込んで貰うのは構わないから、本職の坑夫になら可能かもしれないけれどね」

「………? お待ち下さい、ユリ陛下。我が国が百合帝国に割譲したあの鉱山は、確か『銅』と『銀』は産出しますが、『鉄』は殆ど出なかった筈では?」

「ああ、まずその話からするべきだったわね、ごめんなさい。結論から先に言ってしまうけれど……現在あの鉱山から産出しない金属は『ほぼ無い』と考えて貰った方が良いでしょうね」

「は……? ほぼ無い、ですか……?」


 カダインが訝しげな声で、そう問い返す。

 信じられない、という感情がありありとその声に籠められていた。


「ソフィア、いま持っているようであれば出してくれるかしら?」

「はい、ご主人様」


 ユリの言葉に応えて、ソフィアが〈侍女の鞄〉から2つの鉱石を取り出す。

 先日、ソフィアの他にカナヤマヒコも交えて、ユリーカの鉱山で『試験採掘』を行った際に、彼女が『魔衝ピッケル』を用いて実際に鉱床から採掘したものだ。


「これは数日前にソフィアが、ユリーカの坑道『迷宮地』で実際に掘ったものよ。テオドール公には、これが何の鉱石か判るかしら?」

「……片方は鉄鉱石ですね。もう片方は……もしや『金鉱石』なのでしょうか? 私の知る物とは、全くの別物なのですが」

「その推察で合っているわ。別物に見えるのは、金の含有割合が高すぎるせいね」


 通常の『金鉱石』は、重量当たりの含有量が『数万分の1』なら『良質』と言われるぐらいで、低ければ『十数万分の1』の含有割合ということもザラにある。

 つまり1トンの金鉱石から、10グラムさえ採れないことも珍しくは無いのだ。

 一方でユリーカの鉱山から採れる『金鉱石』は、1キロ当たり50グラム前後の『金』が含まれている。呼称こそ同じ『金鉱石』ではあっても見た目からして全く異なっており、もはや別種の鉱石だと考える方が良いぐらいだ。


「……ユリ陛下には、鉱山を変化させることさえ可能なのですか?」

「そう問われれば『否』という回答になるわね。

 別に隠すつもりもないから、正直に答えてしまうけれど。―――簡単に説明するなら『こことは別の世界』から『鉱山の神様』をお迎えして、ユリーカの鉱山がある一帯を治めて貰うことにしたのよ。その神様によって齎される恩恵により、鉱山に埋蔵されている鉱物資源が増加したと考えて頂戴」


 なるべく判りやすく伝えようと思い、ユリがそう説明すると。カダインは驚愕の表情で大口を開けたまま、固まってしまった。

 その驚き方は、先日ソフィアが見せたものとよく似ているように思えた。

 やはり血の繋がっている親子だと、驚き方まで似るのだろうか。


「ふむ……。鉱山の神様、ですか。是非一度お会いしてみたいですね」


 カダインが硬直する隣で、アルトリウスが朗らかに笑みながらそう告げる。

 信仰厚き国家の(おびと)である彼からすると、鉱山自体の変容よりも、そこに据えられた神様のほうが気になるらしい。


「良かったら、近いうちに紹介するわよ」

「是非とも宜しくお願いします」

「覚えておくわ。話を戻すけれど―――ユリーカの鉱山からは、実に様々な金属鉱石が産出する。一部の特殊な鉱石に関しては、市場に流通されると困ることになるかもしれないから、強制的に国側で買い上げさせて貰う予定だけれど。それ以外の鉱石に関しては、採掘量の一定割合を『鉱山利用料』として徴収するだけに留め、それ以上の制限は国から課さないつもりでいるわ。

 だから、例えばニムン聖国の探索者が『転移門』を利用してユリーカの迷宮地へ潜り、採掘した鉱石を自国に持ち帰った場合などには。当然ながら聖国内での鉱物資源の供給量が増えることになるから、そのつもりでいて頂戴ね」

「それは、非常に有難いですね。聖国では鉄や銀が常に不足していますから……」

「それなら、自国の探索者に『採掘した鉄や銀は是非自国へ持ち帰るように』と、通達を出しておくと良いかもしれないわね。

 ああ―――但し『銀』に関しては、ユリーカの迷宮地では『魔銀』の状態で産出することもよくあるから、その点だけは気をつけて頂戴」

「……は? 『魔銀』の状態で産出、ですと?」


 ユリとアルトリウスの会話を聞いて、カダインが再びそう驚きの声を上げる。

 まあ、鉱山から産出した銀を『魔銀』に加工するのであればともかく。最初から『魔銀』の状態で採れると言われれば、そういう表情にもなるだろう。


「テオドール公は、当然『魔銀』の製法は存じているわよね?」

「え、ええ。娘が開発したものですから、無論把握しておりますが」

「私はユリーカの鉱山に幾つかの結界を展開することで、坑道の『迷宮地』の全域を、ある『特殊な環境下』に置いています。

 その結果、彼の鉱山で産出される『銀鉱石』は、ものによっては最初から『魔銀鉱石』の状態で採掘されることもある―――と申し上げれば、テオドール公になら私が何をやったのかかは、想像が付くのでは無いかしら?」


 ユリの言葉を受けて、カダインは再び驚きに目を見開く。

 魔銀の製法を知っているなら、これ自体はとても簡単な問いかけだろう。


「結界とは、そのようなことまで可能なのですか……?」

「うちの子達は、とても優秀でね」


 にこりと微笑んで、ユリはそう回答する。

 『紅梅』の子達の手に掛かれば、別に難しいことではない。


「ああ、そうそう。あとは金属鉱石以外に『石炭』も産出するわ。これも国にそのまま持ち帰って貰っても構わないけれど、必要であれば百合帝国(うち)でコークスに加工した上で、それを販売するというのでも構わないわよ?」


 石炭をコークスに加工するためには『乾留』と呼ばれる作業が必要となるわけだけれど。この作業は錬金術で代用することが可能で、しかもその方がより質の高いコークスを生産することができる。

 〈錬星術師〉の職業(クラス)を有する『竜胆』のルピアになら、大量の石炭を短時間で纏めてコークスに加工できるため、大した手間も掛からない。多少の手間賃だけ頂戴した上で、最初からコークスの状態で譲るのも良いだろう。


「コークスとは、何でしょうか?」

「私にも判りかねますが」

「……失礼。今の私の発言は、忘れて貰えると有難いわ」


 よく考えてみれば―――既にこの世界で『コークス』が使われていると無意識に考えていた、ユリのほうがおかしいのは当然のことで。

 慌ててユリは、自身の発言を撤回する。

 別に売っても構わなくはあるけれど……流石に時代を先取りしすぎだろうか。


「他には『魔石』と『宝石』も産出するから、これも必要なのであれば、探索者に国に持ち帰る様に通達しておくと良いでしょうね」


 話を逸らすように、ユリがそう告げると。

 アルトリウスとカダインの国主2人は、揃って興味深そうに「ほう」と呟いた。


「……鉱山に神様をお迎えすると、そんなものまで採れるようになるのですか?」

「ああ―――いえ、そうじゃないわ。『魔石』と『宝石』に関しては、私が坑道の迷宮地に配置する魔物が落とすだけで、別に鉱床から産出するわけではない。

 まあ、倒した魔物から得られる確率自体は高くないから、さほど供給量も多くはならないと思うけれどね。一応現時点での取引相場から、ある程度は変動することになるでしょうから、予め承知して置いて頂戴」

「ふむ……。国庫にある宝石類は、今のうち換金しておく方が良いでしょうか」

「処分しても良い品であれば、その方が賢明かもしれないわね」


 特に深層に配置される、高レベルのアンデッド系の魔物が落とす宝石は、品質もかなり優れたものばかりだ。

 それが一般市場に流通するのは、当分後の事になるだろうけれど。何にしても、今のうちに有価宝石を換金しておくという判断自体は、間違いでは無いだろう。




 

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[一言] もう戦争しなくても資源経済だけで大陸支配出来そう
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