122. 私が増えます
リモート飲み会で余暇時間が潰れるため、本日投稿分は短いです。ごめんなさい。。
(打ち上げなので断れませんでした……)
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―――神霊は無限にその存在を分けることができる。
というのは、日本で古来より信仰されている『神道』に於いては、ごく一般的な観念だと言えるだろう。
こうして改めて一文に示されることはあまり無いかもしれないけれど、日本中に『同じ名前の神社』が幾つもあり、『同じ神様』を祀っている神社が同時に沢山存在していることに、日本人が疑問を抱くことは少ない筈だ。
いわゆる『分霊』と呼ばれるもので、これが可能であるからこそ、ユリ達が計画している『八百万の神々が住まう温泉都市を作る』という案も成立する。
既にその神様が在る場所―――つまり『リーンガルド』の世界へと接続した上で勧請すれば、異世界にさえ神様を招くことができてしまうわけだ。
この事実を改めて考えて、ユリが心の中で思ったことがひとつあった。
もしかしたら―――同じことが私にも可能なのでは? と。
「可能ですよ」
結論から言えば、ユリのその疑問はごくあっさりと肯定された。
それを教えてくれたのはもちろん、例の神域の庭園で会ったリュディナだ。
「というか、以前もユリに『分体』について話したことがあるでしょう?」
「ああ―――そういえば、そうだったわね」
リュディナとアルカナの2人は基本的に、神様としてこの『神域』の中で暮らしているわけだけれど。一方で彼女達は、自身の『分体』をユリタニアの邸宅内にも住まわせている。
そうすることで、必要に応じて『分体』の側を操作して、ユリタニアの都市内に沢山設置されている屋台での食事などを謳歌しているわけだ。
「なるほど、あれと同じことが私にもできるわけね?」
「その通りです。但し『分体』の作成には、注意点が3つあります」
「教えて頂戴」
重要な部分は、初めにちゃんと教わっておくに越したことは無い。
きっちり頭の中に記録を取るつもりで、ユリはリュディナに向き合う。
「ひとつは『分体』を作る為に消費した力は、本体から失われるということです。簡単に言えば、今のユリの力が『100』あるとした場合、『30』の力を持った分体を作成すれば、本体の力は『70』に落ちるわけですね」
「判りやすいわね。それは『レベルが下がる』という意味かしら?」
「概ねそう考えて頂いて問題ありませんが、レベルと言うよりも『分けたぶんだけ本体側の経験値が減る』と考えて頂いた方が正確でしょう」
「なるほど」
レベルを『1』から『2』に上げる際に必要な経験値と、レベルを『199』から『200』に上げる際に必要な経験値とでは、圧倒的な開きがある。
おそらくユリ本体のレベルを『199』に下げる場合には、それだけで分体側のレベルが『150』から『160』ぐらいまでは上がることだろう。
ゲームの終盤では、たった1レベルを上げるために、それぐらい途方も無い量の経験値が必要になる―――というのは、MMO-RPGではよくある話だ。
「逆に言えば、経験値を一切割譲しないで―――経験値が『0』のままの分体でも良いのでしたら、無償で幾らでも作ることが出来てしまいます。
私とアルカナがユリタニアの邸宅内に住まわせている分体は、経験値が『0』のままの、つまりレベルが『1』の分体ですが。私もアルカナも、これを作るために本体側の力は一切消費していません」
「それは嬉しいわね」
無消費で分体が作れるというのは、とても有難い。
失うものが無ければ、ちょっと気軽に試してみようか―――という気分で分体を作ることさえ出来てしまうわけだ。
「注意点の2つ目は、作成された分体は『神格を持たない』ということです。有り体に申し上げれば、普通の人間となんら変わらない個体となります」
「ふむ……。現在私は〔女神〕の天職を有しているようだけれど、これも分体には付与されないと考えて良いということかしら?」
「はい、その通りです。天職が継がれない代わりに、分体側では別の天職を得ることが可能になりますから、これはメリットにもなり得るかもしれませんね」
天職は無作為の抽選によって得られるものなので、自分で選べないのが難点ではあるけれど。それが却って、面白い部分であるようにもちょっと思う。
分体が偶然得た天職のレベルを、頑張って上げてみるというのも楽しそうだ。
「……レベルを成長させることは可能なのよね?」
「先程も申し上げた通り、基本的には『普通の人間と同じ』個体となりますから、もちろん可能です。『職業』を得れば、そちらも一緒に育てられますよ」
「ああ、そうか。別の個体だから、本体の職業とも別のものが選べるのね」
「はい。もちろん同じものを選ぶことも可能ではありますが」
どうせなら、現在とは別の職業を育てるほうが面白いだろう。
というか―――こういうことを色々と考えていると、新キャラを作りたいという欲がふつふつと湧き出してきてしまうから困る。
『アトロス・オンライン』のゲームを遊んでいた頃には、『百合帝国』の子達のレベルを成長させることだけで手一杯で、ユリ自身が操作する別キャラを作ってみようなどとは一度も考える余裕が無かっただけに、尚更だ。
「最後に、最も重要な3つ目の注意点についてですが。分体はあくまでも『身体』をもうひとつ作るだけであって、ユリという『心』が増えるわけではありません。
意識が1つしかありませんから、身体が2つあっても、それを同時に動かすのはとても難しいです。基本的には片方ずつ動かす方が良いでしょう」
「リュディナとアルカナも、ユリタニアに置いている分体を動かしている時には、神域側の本体は眠らせていると言っていたものね」
「はい。同時に2つ以上の身体を操作するのは、絶対に不可能とは申しませんが、本当に難しいことですから……」
それは間違いなく、その通りだろう。
視界が2つに増えるだけでも、パニックに陥る自信がユリにはあった。
「あ、それと―――注意点という程ではありませんが。分体の見た目は、作成時にある程度自由に操作することが可能ですから、ユリの場合は本体とは違う見た目にするほうが賢明だと思います」
「……それは、どうして?」
「特に意識しなければ、現在の自分と『完全に一致』した身体の個体が、もう1人出来上がることになりますからね。
ほくろの位置から髪の毛の本数まで、あらゆる部分が全く同じドッペルゲンガーが存在するというのは、気持ち悪くありませんか?」
「ああ……。それはちょっと、気持ち悪いかも……」
リュディナやアルカナの場合は片方を『神域』の庭園に、片方をユリタニアに置いているから、問題無いのだろうけれど。ユリの場合は本体も分体も、どちらとも近しい場所に存在することになる。
全く同じ身体で分体を作成するのは、何かとトラブルの元にもなりそうだ。
「ところで、ユリにひとつお願いがあるのですが」
「あら、何かしら? 私に出来ることなら、何でもするわよ?」
大恩あるリュディナに対しては、基本的にユリは否と応えるつもりがない。
どれだけ彼女の為に尽くそうとも、この異世界に『百合帝国』の皆と共に招いてくれた恩義を返すには、足りないと常々思っているからだ。
「分体を作成したら、何度か私やアルカナと一緒に『迷宮地』に潜っては頂けないでしょうか? いつも『放送』を楽しみに視聴しているアルカナから、どうせなら『探索者』の側も体験してみたいと、ここの所ずっとせっつかれておりまして」
「何だ、そんなこと? もちろん構わないわよ」
アルカナは『娯楽の神』なので、楽しそうなことには何でも興味を持つ。
彼女が視聴者の側だけで満足できなくなるのは、ある意味当然のことだろう。
ユリもどうせ分体を作るなら、レベルも成長させてみたいと思っていた所だ。
共に『迷宮地』に潜ってくれる仲間は、ユリにとっては大歓迎でしか無かった。
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お読み下さりありがとうございました。
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